人でなしの恋4

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江戸川乱歩『人でなしの恋』

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(そうして、ごこんれいのごたごたがいちだんらくつきますと、あんじるよりはうむがやすいと)

そうして、御婚礼のごたごたが一段落つきますと、案じるよりは生むが易いと

(もうしますか、かどのはうわさほどのへんじんというでもなく、かえってせけんなみよりはものやわらかで、)

申しますか、門野は噂程の変人というでもなく、却て世間並よりは物柔かで、

(わたしなどにも、それはやさしくしてくれるのでございます。わたしはほっと)

私などにも、それは優しくしてくれるのでございます。私はほっと

(あんしんいたしますと、いままでのくつうにちかいきんちょうが、すっかりほぐれてしまいまして)

安心いたしますと、今までの苦痛に近い緊張が、すっかりほぐれてしまいまして

(じんせいというものは、こんなにもこうふくなものであったのかしら、なんておもうように)

人生というものは、こんなにも幸福なものであったのかしら、なんて思う様に

(なってまいったのでございます。それにしゅうとしゅうとめごふたりとも、およめいりまえにははおやが)

なって参ったのでございます。それに舅姑御二人とも、お嫁入前に母親が

(こころづけてくれましたことなど、まるでむだにおもわれたほど、よいおかたですし、)

心づけてくれましたことなど、まるで無駄に思われたほど、好い御方ですし、

(ほかには、かどのはひとりごだものですから、こじゅうとなどもなく、かえってきぬけのするくらい、)

外には、門野は一人子だものですから、小舅などもなく、却て気抜けのする位、

(およめさんなんてきぐろうのいらぬものだとおもわれたのでございました。)

御嫁さんなんて気苦労の入らぬものだと思われたのでございました。

(かどののおとこぶりは、いいえ、そうじゃございませんのよ。これがやっぱり、)

門野の男ぶりは、いいえ、そうじゃございませんのよ。これがやっぱり、

(おはなしのうちなのでございますわ。そうしていっしょにくらすようになってみますと、)

お話の内なのでございますわ。そうして一しょに暮す様になって見ますと、

(とおくから、かいまみていたのとちがって、わたしにとっては、うまれてはじめての、)

遠くから、垣間見ていたのと違って、私にとっては、生れてはじめての、

(このよにたったひとりのかたなのですもの、それはあたりまえでございましょうけれど、)

この世にたった一人の方なのですもの、それは当り前でございましょうけれど、

(ひがたつにつれて、だんだんたちまさってみえ、そのみずぎわだったおとこぶりが、)

日が経つにつれて、段々立まさって見え、その水際立った男ぶりが、

(たぐいなきものにおもわれはじめたのでございます。いいえ、おかおがきれいだとか、そんな)

類なきものに思われ初めたのでございます。いいえ、お顔が綺麗だとか、そんな

(ことばかりではありません。こいなんてなんとふしぎなものでございましょう、)

ことばかりではありません。恋なんて何と不思議なものでございましょう、

(かどののせけんなみをはずれたところが、へんじんというほどではなくても、なんとやらゆううつで、)

門野の世間並をはずれた所が、変人というほどではなくても、何とやら憂鬱で、

(しょっちゅういちずにものをおもいつづけているような、しんねりむっつりとした、)

しょっちゅう一途に物を思いつづけている様な、しんねりむっつりとした、

(それで、きりょうはともうせば、いまいうすきとおるようなびだんしなのでございますよ、)

それで、縹緻はと申せば、今いう透き通る様な美男子なのでございますよ、

(それがもう、いうにいわれぬみりょくとなって、じゅうくのこむすめを、さんざんに)

それがもう、いうにいわれぬ魅力となって、十九の小娘を、さんざんに

など

(せめさいなんだのでございます。)

責めさいなんだのでございます。

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