令和二年

(たびじたくおえだれかよぶこえ)

旅支度終え　誰か呼ぶ声

(じょうねつからおよそとおいじょうねつ)

情熱からおよそ遠い情熱

(きょうならばはれかぜはしわがれ)

今日ならば晴れ　風はしわがれ

(たびだつことないたびだちのひ)

旅立つことない旅立ちの日

(きみのはなうたきょうばかりはこのまちのｂｇｍみたい)

君の鼻歌　今日ばかりは　この町のＢＧＭみたい

(たよりなさげなますくごし)

頼りなさげなマスク越し

(とげられぬゆめやむをえぬゆえ)

とげられぬ夢　やむを得ぬ故

(うらめしくにらむそられいわにねん)

恨めしく睨む空　令和二年

(ふうきりのえいがしんぷのつあー)

封切りの映画　新譜のツアー

(ちゅうしのにゅうがくしきれいわにねん)

中止の入学式　令和二年

(あせりとひまをもてあそぶうた)

焦りと暇を持て遊ぶ歌

(ぶつりてきでないからこそいたむ)

物理的でないからこそ痛む

(かなしくないねたのしくないぜ)

悲しくないね　楽しくないぜ

(かんじょうはのきさきでいきだおれ)

感情は軒先で行き倒れ

(ほどうできゃっちぼーるこどもらのえがおとふきんこう)

歩道でキャッチボール　子供らの笑顔と不均衡

(こんなときでもおなかだってすくもんな)

こんな時でもお腹だってすくもんな

(かいだしにいくきみをみおくる)

買い出しに行く　君を見送る

(それだけでうれうれいわにねん)

それだけで憂う　令和二年

(かーてんをしめるのになぜとまどう)

カーテンを閉めるのに何故戸惑う

(ゆうひにきみのせなかれいわにねん)

夕日に君の背中　令和二年

(やさしくすることもできるきずつけることもできる)

優しくすることもできる　傷つけることもできる

(ぶきにもくすりにもなるならぼくはどちらをえらぶだろう)

武器にも薬にもなるなら　僕はどちらを選ぶだろう

(かわるせかいのすみっこでわかつここのしょううちゅう)

変わる　世界の隅っこで　分かつ　個々の小宇宙

(つながるすべをもつぼくらのこころおうとうせよ)

繋がる術を持つ僕らの　心　応答せよ

(ふうさのこうえんのさくらだれにみられずともさいた)

封鎖の公園の桜　誰に見られずとも咲いた

(ざんねんだなざんねんだなやくそくしたはずなのに)

残念だな　残念だな　約束したはずなのに

(しごとがなけりゃさきだつはかね)

仕事がなけりゃ　先立つは金

(みすてられたしせいれいわにねん)

見捨てられた市井　令和二年

(さきはみえない「けどだいじょうぶ」)

先は見えない　「けど大丈夫」

(ぼくにうそをつかせたれいわにねん)

僕に嘘をつかせた　令和二年