「心理試験」11 江戸川乱歩
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問題文
(よん)
四
(ふきやせいいちろうは、じけんのにさんにちごにだいいっかいめのしょうかんをうけたさい、かかりの)
蕗谷清一郎は、事件の二三日後に第一回目の召喚を受けた際、係りの
(よしんはんじがゆうめいなしろうとしんりがくしゃのかさはらしだということをしった。そして、)
予審判事が有名な素人心理学者の笠原氏だということを知った。そして、
(とうじすでにこのさいごのばあいをよそうしてすくなからずろうばいした。さすがのかれも、)
当時已にこの最後の場合を予想して少なからず狼狽した。流石の彼も、
(にほんのたといいちこじんのどうらくぎからとはいえ、しんりしけんなどというものが)
日本の仮令一個人の道楽気からとは云え、心理試験などというものが
(おこなわれていようとはそうぞうしていなかった。かれは、しゅじゅのしょもつによって、)
行われていようとは想像していなかった。彼は、種々の書物によって、
(しんりしけんのなにものであるかを、しりすぎるほどしっていたのだ。このだいだげきに、)
心理試験の何者であるかを、知り過ぎる程知っていたのだ。この大打撃に、
(もはやへいきをよそおってつうがくをつづけるよゆうをうしなったかれは、びょうきとしょうしてげしゅくの)
最早や平気を装って通学を続ける余裕を失った彼は、病気と称して下宿の
(いっしつにとじこもった。そして、ただ、いかにしてこのなんかんをきりぬけるべきかを)
一室にとじ籠った。そして、ただ、如何にしてこの難関を切抜けるべきかを
(かんがえた。ちょうど、さつじんをじっこうするいぜんにやったとおなじ、あるいはそれいじょうの、)
考えた。丁度、殺人を実行する以前にやったと同じ、或はそれ以上の、
(めんみつとねっしんをもってかんがえつづけた。かさもりはんじははたしてどのようなしんりしけんを)
綿密と熱心を以て考え続けた。笠森判事は果してどの様な心理試験を
(おこなうであろうか。それはとうていよちすることができない。で、ふきやはしっている)
行うであろうか。それは到底予知することが出来ない。で、蕗谷は知っている
(かぎりのほうほうをみいだして、そのひとつひとつについて、なんかとたいさくがないものかと)
限りの方法を見出して、その一つ一つについて、何とか対策がないものかと
(かんがえてみた。しかし、がんらいしんりしけんというものが、きょぎのもうしたてをあばくために)
考えて見た。併し、元来心理試験というものが、虚偽の申立をあばく為に
(できているのだから、それをさらにいつわるということは、りろんじょうふかのうらしくも)
出来ているのだから、それを更らに偽るということは、理論上不可能らしくも
(あった。ふきやのかんがえによれば、しんりしけんはそのせいしつによってふたつに)
あった。蕗谷の考によれば、心理試験はその性質によって二つに
(たいべつすることができた。ひとつはじゅんぜんたるせいりじょうのはんのうによるもの、)
大別することが出来た。一つは純然たる生理上の反応によるもの、
(いまひとつはことばをつうじておこなわれるものだ。ぜんしゃは、しけんしゃがはんざいにかんれんした)
今一つは言葉を通じて行われるものだ。前者は、試験者が犯罪に関聯した
(さまざまのしつもんをはっして、ひけんしゃのしんたいじょうのびさいなはんのうを、てきとうなそうちによって)
様々の質問を発して、被験者の身体上の微細な反応を、適当な装置によって
(きろくし、ふつうのじんもんによっては、とうていしることのできないしんじつをつかもうとする)
記録し、普通の訊問によっては、到底知ることの出来ない真実を掴もうとする
(ほうほうだ。それは、にんげんは、たといことばのうえで、またはがんめんひょうじょうのうえでうそを)
方法だ。それは、人間は、仮令言葉の上で、又は顔面表情の上で嘘を
(ついても、しんけいそのもののこうふんはかくすことができず、それがびさいなにくたいじょうの)
ついても、神経そのものの興奮は隠すことが出来ず、それが微細な肉体上の
(ちょうこうとしてあらわれるものだというりろんにもとづくので、そのほうほうとしては、たとえば、)
徴候として現れるものだという理論に基づくので、その方法としては、例えば、
(automatographなどのちからをかりて、てのびさいなうごきをはっけんするほうほう。)
Automatograph等の力を借りて、手の微細な動きを発見する方法。
(あるしゅだんによってがんきゅうのうごきかたをたしかめるほうほう。pneumographに)
ある手段によって眼球の動き方を確かめる方法。Pneumographに
(よってこきゅうのしんせんちそくをはかるほうほう。sphygmogpraphによって)
よって呼吸の深浅遅速を計る方法。Sphygmogpraphによって
(みゃくはくのこうていちそくをはかるほうほう。plethysmogpraphによって)
脈搏の高低遅速を計る方法。Plethysmogpraphによって
(ししのけつりょうをはかるほうほう。galvanometerによっててのひらの)
四肢の血量を計る方法。Galvanometerによって掌の
(びさいなるはっかんをはっけんするほうほう。ひざのかんせつをかるくうってしょうずるきんにくの)
微細なる発汗を発見する方法。膝の関節を軽く打って生ずる筋肉の
(しゅうしゅくのたしょうをみるほうほう、そのたこれらにるいしたしゅじゅさまさまのほうほうがある。)
収縮の多少を見る方法、其他これらに類した種々様々の方法がある。