原神　神の目ストーリー「放浪者」

(そのしゅんかん、ほうろうしゃはかぜのねをきいた。)

その瞬間、放浪者は風の音を聞いた。

(どこからきたものなのかはわからないが、)

どこから来たものなのかはわからないが、

(ふしぎとそのかざむきはかわってかれをむかえている。)

不思議とその風向きは変わって彼を迎えている。

(かれはかぜのなかからなつかしいにおいをかいだ。)

彼は風の中から懐かしいにおいを嗅いだ。

(かなづち、きんぞく、ろ、ほこり・・・)

金槌、金属、炉、埃…

(はるかかなたのゆめ、すぎさったしあわせ、)

遥か彼方の夢、過ぎ去った幸せ、

(いまおもうとじつにふしぎだ。)

今思うと実に不思議だ。

(かれのようなこたいが、)

彼のような個体が、

(まさかそれほどまでにたんじゅんなせいかつをおくっていたことがあるなんて。)

まさかそれほどまでに単純な生活を送っていたことがあるなんて。

(つかのま、ほうろうしゃはじぶんのかげをみた。)

束の間、放浪者は自分の影を見た。

(それぞれがすべてせんめいであり、そのどれもがほんとうのかれだった。)

それぞれがすべて鮮明であり、そのどれもが本当の彼だった。

(おくびょうでひきょうなものも、ろうばいしてくるしんでいるものも、)

臆病で卑怯なものも、狼狽して苦しんでいるものも、

(おもいあがったこっけいなものも・・・)

思いあがった滑稽なものも…

(さいごはすべてがひとつにつながった。)

最後は全てが一つに繋がった。

(かこをみとめることはしっぱいをみとめることになり、)

過去を認めることは失敗を認めることになり、

(じぶんはただなにもなしとげたことのない、)

自分はただ何も成し遂げたことのない、

(なにももっていないおくびょうものだとみとめることになる。)

何も持っていない臆病者だと認めることになる。

(だがかれにとってこれだけがそくばくをふりきり、)

だが彼にとってこれだけが束縛を振り切り、

(ほんとうにあわれなじぶんをとりもどすほうほうであった。)

本当に哀れな自分を取り戻す方法であった。

(かれはそのときになってりかいした)

彼はその時になって理解した