あの夏に咲け

(きみがふれたら)

君が触れたら、

(たたただのはなさえわらってちゅうにさけ)

た、た、ただの花さえ笑って宙に咲け

(きみにならってててれるまますわって)

君に倣って、て、照れるまま座って

(ばすのさいしゅうじこくおーばー)

バスの最終時刻オーバー

(いつものとおりばすていで)

いつもの通りバス亭で、

(きみはさいだーをもっていた)

君はサイダーを持っていた。

(それだってさまになってるなあ)

それだって様になってるなあ。

(しがないものかきであったぼくは)

しがない物書きであった僕は

(そのふうけいをかいていた)

その風景を描いていた。

(となりにすわるまもなくきえたばすがはしっていく)

隣に座る間も無く消えた。バスが走っていく。

(かいてかいてようやくえたものが)

書いて書いてようやく得たものが

(ねたみとかさげすみとか)

妬みとか蔑みとか！

(なんかもうわすれたい)

なんかもう忘れたい

(きみがふれたら)

君が触れたら、

(たたただのはなさえわらってちゅうにさけ)

た、た、ただの花さえ笑って宙に咲け

(きみがのぼってて)

君が登って、て、

(てれるくももあからんでとんでいく)

照れる雲も赤らんで飛んでいく

(きみがいるなら)

君がいるなら、

(たたたいくつなひびもなんてことはないけど)

た、た、退屈な日々も何てことはないけど

(きみがいたそうぞうしいなつもさよなら)

君がいた騒々しい夏もさよなら

(だれかおうとうねがうおーばー)

誰か応答願う　オーバー

(あめのがいろわききみはたっていた)

雨の街路脇、君は立っていた

(かたてにはあかい)

片手には赤い

(かとれあ)

カトレア

(きみのながしたすいてきがゆうだちみたくつたっていた)

君の流した水滴が夕立みたく伝っていた

(きみがないてるのにてはうごいた)

君が泣いてるのに手は動いた

(こえもかけないで)

声もかけないで

(そのかおをかいていた)

その顔を書いていた

(はいてはいてようやくわかるのが)

吐いて　吐いてようやくわかるのが

(いたみですむなしさです)

痛みです　虚しさです

(なんかもうばかみたい)

なんかもう馬鹿みたい

(みたされるから)

満たされるから、

(たたたりてたぶんをおとして)

た、た、足りてた分を落として

(いやになるんだよ)

嫌になるんだよ

(それでよかったってわらえるほど)

それで良かったって笑えるほど

(おとなじゃないのにさ)

大人じゃないのにさ

(きみがのりこむ)

君が乗り込む、

(ばばばすのすきまにぼくのばしょはないから)

バ、バ、バスの隙間に僕の場所はないから

(きみがいたそうぞうだけがかさんでいく)

君がいた想像だけが嵩んでいく

(きょうもじんせいふかんおーばー)

今日も人生俯瞰、オーバー

(きみがあるけばはながさく)

君が歩けば花が咲く

(きみがあるけばそらがなく)

君が歩けば空が泣く

(きみがわらえばとおいなつ)

君が笑えば遠い夏

(わらうかおがかいてみたい)

笑う顔が書いてみたい

(ゆうだちのなかなくきみに)

夕立の中泣く君に

(ぼくがいえるのなら)

僕が言えるのなら

(もういっかいあのなつにもどって)

もう一回あの夏に戻って

(きみがないてる)

君が泣いてる、

(とととまらないわけをぼくはしっていたい)

と、と、止まらないわけを僕は知っていたい

(きみにふれたら)

君に触れたら、

(てててきとうなことでもしゃべってみよう)

て、て、適当なことでも喋ってみよう

(きみがいたから)

君がいたから、

(たたたいくつなひびもなんてことはないのさ)

た、た、退屈な日々も何てことはないのさ

(きみにわらってててれるまますわって)

君に笑って、て、照れるまま座って

(ばすのさいしゅうじこくおーばー)

バスの最終時刻、オーバー