夏目漱石「こころ」2-15

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」2-15
(中)両親と私
こっちゃん様が(上)の方を上げて下さっていたものの続きでございます。
タイピングを投稿するのは初めてですので、誤字脱字等ありましたらご連絡何卒宜しくお願い致します。

こっちゃん様による(上)
https://typing.twi1.me/profile/userId/86231

長くなっちゃいました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7689 7.9 97.3% 350.2 2769 76 55 2024/04/04
2 □「いいね」する 7609 7.9 96.1% 352.7 2795 111 55 2024/03/21
3 HAKU 7462 7.7 96.0% 360.6 2807 116 55 2024/03/20
4 subaru 7434 7.9 94.2% 353.2 2796 170 55 2024/03/25
5 ヤス 6763 S++ 7.2 94.1% 389.3 2806 173 55 2024/03/24

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問題文

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(じゅういち)

十一

(こうしたおちつきのないあいだにも、わたくしはまだしずかにすわるよゆうをもっていた。)

こうした落付のない間にも、私はまだ静かに坐る余裕を有っていた。

(たまにはしょもつをあけてじゅっぺーじもつづけざまによむじかんさえでてきた。)

偶には書物を開けて十頁もつづけざまに読む時間さえ出て来た。

(いったんかたくくくられたわたくしのこうりは、いつのまにかとかれてしまった。)

一旦堅く括られた私の行李は、何時の間にか解かれてしまった。

(わたくしはいるにまかせて、そのなかからいろいろなものをとりだした。)

私は要るに任せて、その中から色々なものを取り出した。

(わたくしはとうきょうをたつとき、こころのうちできめた、このなつちゅうのにっかをかえりみた。)

私は東京を立つ時、心のうちで極めた、この夏中の日課を顧みた。

(わたくしのやったことはこのにっかのさんがいちにもたらなかった。)

私の遣った事はこの日課の三ガ一にも足らなかった。

(わたくしはいままでもこういうふゆかいをなんどとなくかさねてきた。)

私は今までもこういう不愉快を何度となく重ねて来た。

(しかしこのなつほどおもったとおりしごとのはこばないためしもすくなかった。)

然しこの夏程思った通り仕事の運ばない例も少なかった。

(これがひとのよのつねだろうとおもいながらもわたくしはいやなきもちにおさえつけられた。)

これが人の世の常だろうと思いながらも私は厭な気持ちに抑え付けられた。

(わたくしはこのふかいのうらにすわりながら、いっぽうにちちのびょうきをかんがえた。)

私はこの不快の裏に坐りながら、一方に父の病気を考えた。

(ちちのしんだあとのことをそうぞうした。)

父の死んだ後の事を想像した。

(そうしてそれとどうじに、せんせいのことをいっぽうにおもいうかべた。)

そうしてそれと同時に、先生の事を一方に思い浮かべた。

(わたくしはこのふかいなこころもちのりょうたんに)

私はこの不快な心持の両端に

(ちい、きょういく、せいかくのぜんぜんことなったふたりのおもかげをながめた。)

地位、教育、性格の全然異なった二人の面影を眺めた。

(わたくしがちちのまくらもとをはなれて、)

私が父の枕元を離れて、

(ひとりとりみだしたしょもつのなかにうでぐみをしているところへははがかおをだした。)

独り取り乱した書物の中に腕組をしているところへ母が顔を出した。

(「すこしひるねでもおしよ。おまえもさぞくたびれるだろう」)

「少し午眠でもおしよ。御前もさぞ草臥れるだろう」

(はははわたくしのきぶんをりょうかいしていなかった。)

母は私の気分を了解していなかった。

(わたくしもははからそれをよきするほどのこどもでもなかった。)

私も母からそれを予期する程の子供でもなかった。

など

(わたくしはたんかんにれいをのべた。はははまだへやのいりぐちにたっていた。)

私は単簡に礼を述べた。母はまだ室の入口に立っていた。

(「おとうさんは?」とわたくしがきいた。)

「御父さんは?」と私が聞いた。

(「いまよくねておいでだよ」とははがこたえた。)

「今よく寝て御出だよ」と母が答えた。

(はははとつぜんはいってきてわたくしのそばにすわった。)

母は突然這入って来て私の傍に坐った。

(「せんせいからまだなんともいってこないかい」ときいた。)

「先生からまだ何とも云って来ないかい」と聞いた。

(はははそのときのわたくしのことばをしんじていた。)

母はその時の私の言葉を信じていた。

(そのときのわたくしはせんせいからきっとへんじがあるとははにほしょうした。)

その時の私は先生からきっと返事があると母に保証した。

(しかしちちやははのきぼうするようなへんじがくるとは、)

然し父や母の希望するような返事が来るとは、

(そのときのわたくしもまるできたいしなかった。)

その時の私もまるで期待しなかった。

(わたくしはこころえがあってははをあざむいたとおなじけっかにおちいった。)

私は心得があって母を欺むいたと同じ結果に陥った。

(「もういっぺんてがみをだしてごらんな」とははがいった。)

「もう一遍手紙を出して御覧な」と母が云った。

(やくにたたないてがみをなんつうかこうと、)

役に立たない手紙を何通書こうと、

(それがははのいあんになるなら、てすうをいとうようなわたくしではなかった。)

それが母の慰安になるなら、手数を厭うような私ではなかった。

(けれどもこういうようけんでせんせいにせまるのはわたくしのくつうであった。)

けれどもこういう用件で先生にせまるのは私の苦痛であった。

(わたくしはちちにしかられたり、ははのきげんをそんじたりするよりも、)

私は父に叱られたり、母の機嫌を損じたりするよりも、

(せんせいからみさげられるのをはるかにおそれていた。)

先生から見下げられるのを遥かに恐れていた。

(あのいらいにたいしていままでへんじのもらえないのも、)

あの依頼に対して今まで返事の貰えないのも、

(あるいはそうしたわけからじゃないかしらというじゃすいもあった。)

或はそうした訳からじゃないかしらという邪推もあった。

(「てがみをかくのはわけはないですが、)

「手紙を書くのは訳はないですが、

(こういうことはゆうびんじゃとてもらちはあきませんよ。)

こういう事は郵便じゃとても埒は明きませんよ。

(どうしてもじぶんでとうきょうへでて、じかにたのんでまわらなくっちゃ」)

どうしても自分で東京へ出て、じかに頼んで廻らなくっちゃ」

(「だっておとうさんがあのようすじゃ、おまえ、)

「だって御父さんがあの様子じゃ、御前、

(いつとうきょうへでられるかわからないじゃないか」)

何時東京へ出られるか分らないじゃないか」

(「だからでやしません。なおるともなおらないともかたづかないうちは、)

「だから出やしません。癒るとも癒らないとも片付かないうちは、

(ちゃんとこうしているつもりです」)

ちゃんとこうしている積りです」

(「そりゃわかりきったはなしだね。)

「そりゃ解り切った話だね。

(いまにもむずかしいというたいびょうにんをほうちらかしておいて、)

今にもむずかしいという大病人を放ちらかして置いて、

(だれがかってにとうきょうへなんかいけるものかね」)

誰が勝手に東京へなんか行けるものかね」

(わたくしははじめこころのなかで、なにもしらないははをあわれんだ。)

私は始め心のなかで、何も知らない母を憐れんだ。

(しかしははがなぜこんなもんだいを)

然し母が何故こんな問題を

(このざわざわしたきわにもちだしたのかりかいできなかった。)

このざわざわした際に持ち出したのか理解出来なかった。

(わたくしがちちのびょうきをよそに、しずかにすわったりしょけんしたりするよゆうのあるごとくに、)

私が父の病気を余所に、静かに坐ったり書見したりする余裕のある如くに、

(ははもめのまえのびょうにんをわすれて、ほかのことをかんがえるだけ、)

母も眼の前の病人を忘れて、外の事を考えるだけ、

(むねにすきまがあるのかしらとうたぐった。)

胸に空地があるのかしらと疑った。

(そのとき「じつはね」とははがいいだした。)

その時「実はね」と母が云い出した。

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