夏目漱石「こころ」2-18

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」2-18
中)両親と私
こっちゃん様が(上)の方を上げて下さっていたものの続きでございます。
タイピングを投稿するのは初めてですので、誤字脱字等ありましたらご連絡何卒宜しくお願い致します。

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こっちゃん様による(上)
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7374 7.6 96.8% 305.9 2333 77 44 2024/09/22
2 なおきち 6754 S++ 6.9 97.0% 336.2 2341 70 44 2024/10/09
3 饅頭餅美 5387 B++ 5.6 95.7% 418.6 2359 104 44 2024/09/30
4 やまちゃん 4948 B 5.0 97.6% 461.6 2340 56 44 2024/09/27

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問題文

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(じゅうさん)

十三

(わたくしのかいたてがみはかなりながいものであった。)

私の書いた手紙は可なり長いものであった。

(ははもわたくしもこんどこそせんせいからなんとかいってくるだろうとかんがえていた。)

母も私も今度こそ先生から何とか云って来るだろうと考えていた。

(するとてがみをだしてふつかめにまたでんぽうがわたくしあてでとどいた。)

すると手紙を出して二日目にまた電報が私宛で届いた。

(それにはこないでもよろしいというもんくだけしかなかった。)

それには来ないでもよろしいという文句だけしかなかった。

(わたくしはそれをははにみせた。)

私はそれを母に見せた。

(「おおかたてがみでなんとかいってきてくださるつもりだろうよ」)

「大方手紙で何とか云ってきて下さる積りだろうよ」

(はははどこまでもせんせいがわたくしのために)

母は何処までも先生が私のために

(いしょくのくちをしゅうせんしてくれるものとばかりかいしゃくしているらしかった。)

衣食の口を周旋してくれるものとばかり解釈しているらしかった。

(わたくしもあるいはそうかともかんがえたが、)

私も或はそうかとも考えたが、

(せんせいのへいぜいからおしてみると、どうもへんにおもわれた。)

先生の平生から推して見ると、どうも変に思われた。

(「せんせいがくちをさがしてくれる」。)

「先生が口を探してくれる」。

(これはありえべからざることのようにわたくしにはみえた。)

これは有り得べからざる事のように私には見えた。

(「とにかくわたくしのてがみはまだむこうへついていないはずだから、)

「とにかく私の手紙はまだ向へ着いていない筈だから、

(このでんぽうはそのまえにだしたものにちがいないですね」)

この電報はその前に出したものに違ないですね」

(わたくしはははにむかってこんなわかりきったことをいった。)

私は母に向ってこんな分り切った事を云った。

(はははまたもっともらしくしあんしながら「そうだね」とこたえた。)

母は又尤もらしく思案しながら「そうだね」と答えた。

(わたくしのてがみをよまないまえに、せんせいがこのでんぽうをうったということが、)

私の手紙を読まない前に、先生がこの電報を打ったという事が、

(せんせいをかいしゃくするうえにおいて、なんのやくにもたたないのはしれているのに。)

先生を解釈する上に於て、何の役にも立たないのは知れているのに。

(そのひはちょうどしゅじいがまちからいんちょうをつれてくるはずになっていたので、)

その日は丁度主治医が町から院長を連れて来る筈になっていたので、

など

(ははとわたくしはそれぎりこのじけんについてはなしをするきかいがなかった。)

母と私はそれぎりこの事件に就いて話をする機会がなかった。

(ふたりのいしゃはたちあいのうえ、びょうにんにかんちょうなどをしてかえっていった。)

二人の医者は立ち合の上、病人に浣腸などをして帰って行った。

(ちちはいしゃからあんがをめいぜられていらい、)

父は医者から安臥を命ぜられて以来、

(りょうべんともねたままひとのてでしまつしてもらっていた。)

両便とも寝たまま他の手で始末して貰っていた。

(けっぺきなちちは、さいしょのあいだこそはなはだしくそれをいみきらったが、)

潔癖な父は、最初の間こそ甚しくそれを忌み嫌ったが、

(からだがきかないので、やむをえずいやいやとこのうえでようをたした。)

身体が利かないので、已を得ずいやいや床の上で用を足した。

(それがびょうきのかげんであたまがだんだんにぶくなるのかなんだか、)

それが病気の加減で頭がだんだん鈍くなるのか何だか、

(ひをふるにしたがって、ぶしょうなはいせつをいとしないようになった。)

日を経るに従って、無精な排泄を意としないようになった。

(たまにはふとんやしきふをよごして、はたのものがまゆをよせるのに、)

たまには布団や敷布を汚して、傍のものが眉を寄せるのに、

(とうにんはかえってへいきでいたりした。)

当人は却って平気でいたりした。

(もっともにょうのりょうはびょうきのせいしつとして、きわめてすくなくなった。)

尤も尿の量は病気の性質として、極めて少なくなった。

(いしゃはそれをくにした。)

医者はそれを苦にした。

(しょくよくもしだいにおとろえた。たまになにかほしがっても、したがほしがるだけで、)

食慾も次第に衰えた。たまに何か欲しがっても、舌が欲しがるだけで、

(のどからしたへはごくわずかしかとおらなかった。すきなしんぶんもてにとるきりょくがなくなった。)

咽喉から下へは極僅しか通らなかった。好な新聞も手に取る気力がなくなった。

(まくらのそばにあるろうがんきょうは、いつまでもくろいさやにおさめられたままであった。)

枕の傍にある老眼鏡は、何時までも黒い鞘に納められたままであった。

(こどものじぶんからなかのよかったさくさんという)

子供の時分から仲の好かった作さんという

(いまではいちりばかりへだたったところにすんでいるひとがみまいにきたとき、)

今では一里ばかり隔たった所に住んでいる人が見舞に来た時、

(ちちは「ああさくさんか」といって、どんよりしためをさくさんのほうにむけた。)

父は「ああ作さんか」と云って、どんよりした眼を作さんの方に向けた。

(さくさんよくきてくれた。さくさんはじょうぶでうらやましいね。おれはもうだめだ」)

作さんよく来てくれた。作さんは丈夫で羨ましいね。己はもう駄目だ」

(「そんなことはないよ。おまえなんかこどもはふたりともだいがくをそつぎょうするし、)

「そんな事はないよ。御前なんか子供は二人とも大学を卒業するし、

(すこしくらいびょうきになったって、もうしぶんはないんだ。おれをごらんよ。)

少し位病気になったって、申し分はないんだ。おれを御覧よ。

(かかあにはしなれるしさ、こどもはなしさ。)

かかあには死なれるしさ、子供はなしさ。

(ただこうしていきているだけのことだよ。)

ただこうして生きているだけの事だよ。

(たっしゃだってなんのたのしみもないじゃないか」)

達者だって何の楽しみもないじゃないか」

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