夏目漱石「こころ」2-19

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」2-19
中)両親と私
こっちゃん様が(上)の方を上げて下さっていたものの続きでございます。
タイピングを投稿するのは初めてですので、誤字脱字等ありましたらご連絡何卒宜しくお願い致します。

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こっちゃん様による(上)
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少し長くなっちゃいました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7610 7.8 97.3% 286.7 2242 60 44 2024/09/22
2 なおきち 6818 S++ 7.0 97.1% 320.6 2253 67 44 2024/10/10
3 饅頭餅美 5027 B+ 5.4 93.3% 417.3 2259 161 44 2024/09/30
4 やまちゃん 4450 C+ 4.6 96.4% 486.7 2248 82 44 2024/09/27

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問題文

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(かんちょうをしたのはさくさんがきてからにさんにちあとのことであった。)

浣腸をしたのは作さんが来てから二三日あとの事であった。

(ちちはいしゃのおかげでたいへんらくになったといってよろこんだ。)

父は医者の御蔭で大変楽になったといって喜こんだ。

(すこしじぶんのじゅみょうにたいするどきょうができたというふうにきげんがなおった。)

少し自分の寿命に対する度胸が出来たという風に機嫌が直った。

(そばにいるははは、それにつりこまれたのか、びょうにんにきりょくをつけるためか、)

傍にいる母は、それに釣り込まれたのか、病人に気力を付けるためか、

(せんせいからでんぽうのきたことを、)

先生から電報のきた事を、

(あたかもわたくしのいちがちちのきぼうするとおりとうきょうにあったようにはなした。)

あたかも私の位置が父の希望する通り東京にあったように話した。

(そばにいるわたくしはむずがゆいこころもちがしたが、ははのことばをさえぎるわけにもいかないので、)

傍にいる私はむずがゆい心持がしたが、母の言葉を遮る訳にも行かないので、

(だまってきいていた。)

黙って聞いていた。

(びょうにんはうれしそうなかおをした。)

病人は嬉しそうな顔をした。

(「そりゃけっこうです」といもうとのおっともいった。)

「そりゃ結構です」と妹の夫も云った。

(「なんのくちだかまだわからないのか」とあにがきいた。)

「何の口だかまだ分らないのか」と兄が聞いた。

(わたくしはいまさらそれをひていするゆうきをうしなった。)

私は今更それを否定する勇気を失った。

(じぶんにもなんともわけのわからないあいまいなへんじをして、わざとせきをたった。)

自分にも何とも訳の分らない曖昧な返事をして、わざと席を立った。

(じゅうよん)

十四

(ちちのびょうきはさいごのいちげきをまつまぎわまですすんできて、)

父の病気は最後の一撃を待つ間際まで進んで来て、

(そこでしばらくちゅうちょするようにみえた。)

其所でしばらく躊躇するように見えた。

(いえのものはうんめいのせんこくが、きょうくだるか、きょうくだるかとおもって、)

家のものは運命の宣告が、今日下るか、今日下るかと思って、

(まいよとこにはいった。)

毎夜床に這入った。

(ちちははたのものをつらくするほどのくつうをどこにもかんじていなかった。)

父は傍のものを辛くする程の苦痛を何処にも感じていなかった。

(そのてんになるとかんびょうはむしろらくであった。)

その点になると看病は寧ろ楽であった。

など

(ようじんのために、だれかひとりくらいずつかわるがわるおきてはいたが、)

用心のために、誰か一人位ずつ代る代る起きてはいたが、

(あとのものはそうとうのじかんにめいめいのねどこへひきとってさしつかえなかった。)

あとのものは相当の時間に各自の寝床へ引き取って差支なかった。

(なにかのひょうしでねむれなかったとき、)

何かの拍子で眠れなかった時、

(びょうにんのうなるようなこえをかすかにきいたとおもいあやまったわたくしは、)

病人の唸るような声を微かに聞いたと思い誤った私は、

(いっぺんよなかにとこをぬけだして、)

一遍半夜に床を抜け出して、

(ねんのためちちのまくらもとまでいってみたことがあった。)

念のため父の枕元まで行って見た事があった。

(そのよるはははがおきているばんにあたっていた。)

その夜は母が起きている番にあたっていた。

(しかしそのはははちちのよこにひじをまげてまくらとしたなりねいっていた。)

然しその母は父の横に肱を曲げて枕としたなり寝入っていた。

(ちちもふかいねむりのうちにそっとおかれたひとのようにしずかにしていた。)

父も深い眠りの裏にそっと置かれた人のように静にしていた。

(わたくしはしのびあしでまたじぶんのねどこへかえった。)

私は忍び足で又自分の寝床へ帰った。

(わたくしはあにといっしょのかやのなかにねた。)

私は兄と一所の蚊帳の中に寝た。

(いもうとのおっとだけは、きゃくあつかいをうけているせいか、ひとりはなれたざしきにいってやすんだ。)

妹の夫だけは、客扱いを受けている所為か、独り離れた座敷に入って休んだ。

(「せきさんもきのどくだね。ああいくにちもひっぱられてかえれなくっちゃあ」)

「関さんも気の毒だね。ああ幾日も引っ張られて帰れなくっちゃあ」

(せきというのはそのひとのみょうじであった。)

関というのはその人の苗字であった。

(「しかしそんないそがしいからだでもないんだから、)

「然しそんな忙しい身体でもないんだから、

(ああしてとまっていってくれるんでしょう。)

ああして泊っていってくれるんでしょう。

(せきさんよりもにいさんのほうがこまるでしょう、こうながくなっちゃ」)

関さんよりも兄さんの方が困るでしょう、こう長くなっちゃ」

(「こまってもしかたがない。ほかのこととちがうからな」)

「困っても仕方がない。外の事と違うからな」

(あにととこをならべてねるわたくしは、こんなねものがたりをした。)

兄と床を並べて寝る私は、こんな寝物語りをした。

(あにのあたまにもわたくしのむねにも、ちちはどうせたすからないというかんがえがあった。)

兄の頭にも私の胸にも、父はどうせ助からないという考があった。

(どうせたすからないものならばというかんがえもあった。)

どうせ助からないものならばという考もあった。

(われわれはことしておやのしぬのをまっているようなものであった。)

我々は子として親の死ぬのを待っているようなものであった。

(しかしことしてのわれわれはそれをことばのうえにあらわすのをはばかった。)

然し子としての我々はそれを言葉の上に表わすのを憚かった。

(そうしておたがいにおたがいがどんなことをおもっているかをよくりかいしあっていた。)

そうして御互に御互がどんな事を思っているかをよく理解し合っていた。

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