夏目漱石「こころ」3-18

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-18
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

次:https://typing.twi1.me/game/382160

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3:新らしく(あたらしく)
8:一寸(ちょいと)
11:真直(まっすぐ)
11:伝通院(でんずういん)
13:砲兵工廠(ほうへいこうしょう)
15:向(むこう)
20:草原(くさはら)
22:汚ならしい(きたならしい)
23:露次(ろじ)
26:少時(しばらく)
28:諦らめて(あきらめて)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回続きからです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7306 7.5 96.3% 242.8 1843 69 35 2024/09/23
2 なおきち 7262 7.4 97.0% 247.7 1855 56 35 2024/10/19
3 ヤス 7144 7.5 94.4% 244.8 1858 109 35 2024/10/27
4 饅頭餅美 5213 B+ 5.4 95.4% 340.3 1862 88 35 2024/10/09
5 やまちゃん 4797 B 4.9 97.0% 372.9 1846 57 35 2024/10/27

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問題文

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(じゅう)

(「かねにふじゆうのないわたくしは、そうぞうしいげしゅくをでて、)

「金に不自由のない私は、騒々しい下宿を出て、

(あたらしくいっこをかまえてみようかというきになったのです。)

新らしく一戸を構えて見ようかという気になったのです。

(しかしそれにはしょたいどうぐをかうめんどうもありますし、)

然しそれには世帯道具を買う面倒もありますし、

(せわをしてくれるばあさんのひつようもおこりますし、)

世話をしてくれる婆さんの必要も起りますし、

(そのばあさんがまたしょうじきでなければこまるし、)

その婆さんが又正直でなければ困るし、

(うちをるすにしてもだいじょうぶなものでなければしんぱいだし、)

宅を留守にしても大丈夫なものでなければ心配だし、

(といったわけで、ちょっくらちょいとじっこうすることはおぼつかなくみえたのです。)

と云った訳で、ちょっくら一寸実行する事は覚束なく見えたのです。

(あるひわたくしはまあうちだけでもさがしてみようかというそぞろごころから、)

ある日私はまあ宅だけでも探して見ようかというそぞろ心から、

(さんぽがてらにほんごうだいをにしへおりて)

散歩がてらに本郷台を西へ下りて

(こいしかわのさかをまっすぐにでんずういんのほうへあがりました。)

小石川の坂を真直に伝通院の方へ上がりました。

(でんしゃのつうろになってから、あそこいらのようすがまるでちがってしまいましたが、)

電車の通路になってから、あそこいらの様子がまるで違ってしまいましたが、

(そのころはひだりてがほうへいこうしょうのどべいで、)

その頃は左手が砲兵工廠の土塀で、

(みぎははらともおかともつかないあきちにくさがいちめんにはえていたものです。)

右は原とも丘ともつかない空地に草が一面に生えていたものです。

(わたくしはそのくさのなかにたって、なにごころなくむこうのがけをながめました。)

私はその草の中に立って、何心なく向の崖を眺めました。

(いまでもわるいけしきではありませんが、)

今でも悪い景色ではありませんが、

(そのころはまたずっとあのにしがわのおもむきがちがっていました。)

その頃は又ずっとあの西側の趣が違っていました。

(みわたすかぎりみどりがいちめんにふかくしげっているだけでも、しんけいがやすまります。)

見渡す限り緑が一面に深く茂っているだけでも、神経が休まります。

(わたくしはふとここいらにてきとうなうちはないだろうかとおもいました。)

私は不図ここいらに適当な宅はないだろうかと思いました。

(それですぐくさはらをよこぎって、ほそいとおりをきたのほうへすすんでいきました。)

それで直ぐ草原を横切って、細い通りを北の方へ進んで行きました。

など

(いまだにいいまちになりきれないで、がたびししているあのあたりのいえなみは、)

いまだに好い町になり切れないで、がたびししているあの辺の家並は、

(そのじぶんのことですからずいぶんきたならしいものでした。)

その時分の事ですから随分汚ならしいものでした。

(わたくしはろじをぬけたり、よこちょうをまがったり、ぐるぐるあるきまわりました。)

私は露次を抜けたり、横丁を曲ったり、ぐるぐる歩き廻りました。

(しまいにだがしやのかみさんに、)

仕舞に駄菓子屋の上さんに、

(ここいらにこぢんまりしたかしやはないかとたずねてみました。)

ここいらに小ぢんまりした貸家はないかと尋ねて見ました。

(かみさんは「そうですね」といって、しばらくくびをかしげていましたが、)

上さんは『そうですね』と云って、少時首をかしげていましたが、

(「かしやはちょいと・・・・・・」とまったくおもいあたらないふうでした。)

『かし家はちょいと……』と全く思い当らない風でした。

(わたくしはのぞみのないものとあきらめてかえりかけました。するとかみさんがまた、)

私は望のないものと諦らめて帰り掛けました。すると上さんが又、

(「しろうとげしゅくじゃいけませんか」ときくのです。)

『素人下宿じゃ不可ませんか』と聞くのです。

(わたくしはちょっときがかわりました。)

私は一寸気が変りました。

(しずかなしろうとやにひとりでげしゅくしているのは、)

静かな素人屋に一人で下宿しているのは、

(かえってうちをもつめんどうがなくってけっこうだろうとかんがえだしたのです。)

却って家を持つ面倒がなくって結構だろうと考え出したのです。

(それからそのだがしやのみせにこしをかけて、)

それからその駄菓子屋の店に腰を掛けて、

(かみさんにくわしいことをおしえてもらいました。)

上さんに詳しい事を教えてもらいました。

(それはあるぐんじんのかぞく、というよりもむしろいぞく、のすんでいるいえでした。)

それはある軍人の家族、というよりも寧ろ遺族、の住んでいる家でした。

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