それを言葉という

(ぼくらはいずれさびついてついにはうごかなくなる)

僕らはいずれ錆び付いて　ついには動かなくなる

(ゆるやかにおわりへのこうろをたゆたう)

緩やかに終わりへの航路をたゆたう

(はこぶねにのせられたあるいみしるべなきひょうりゅうしゃだ)

箱舟に乗せられたある意味　標なき漂流者だ

(かそくするひびはついにはげんそくするひびをむかえ)

加速する日々は　ついには減速する日々を迎え

(ひがしずんでくろずんだすいへいせんとたいじするあんやこうろにいたったのです)

陽が沈んで黒ずんだ水平線と対峙する　暗夜行路に至ったのです

(うちあげられたふなのりのくつみょうじょうとでねぼらのすきまかすかにひかるろくとうせい)

打ち上げられた船乗りの靴　明星とデネボラの隙間　微かに光る六等星

(すべてのひとにわすれさられることがおわることだとしたら)

全ての人に忘れ去られる事が　終わることだとしたら

(そのときぼくはすでにおわっていたしそれをさびしいとすらかんがえなかった)

その時僕は既に終わっていたし　それを寂しいとすら考えなかった

(ただしずかにうなるなみにゆさぶられてのどがちぎれるくらいにこうかいのうたをさけんだのです)

ただ静かに唸る波に揺さぶられて　喉が千切れる位に後悔の歌を叫んだのです

(くるしまぎれのこえくじゅうのうたごえいなずまとひびけ)

苦し紛れの声　苦渋の歌声　稲妻と響け

(むりだといわれたきょりをこえてみせろ)

無理だと言われた距離を越えてみせろ

(「ことばにすればたやすくて」ってことばにしなきゃわかんねぇよ)

「言葉にすればたやすくて」って言葉にしなきゃ分かんねぇよ

(きみはつたえることあきらめてはだめだそれをとどけて)

君は伝える事諦めてはだめだ　それを届けて

(しにそこなったあさがまぶしいでかけさせられてるまいにちに)

死に損なった朝が眩しい　出掛けさせられてる毎日に

(ちぎれたなみだをじゅうだんとしてこめろそれをことばという)

千切れた涙を銃弾としてこめろ　それを言葉という

(しょうねんしょうじょがうろつくざっとうにころがるのぞみなどもはやだれもひろわない)

少年少女がうろつく雑踏に転がる望みなど　もはや誰も拾わない

(きたいできないじだいにきたいされなかったぼくらは)

期待できない時代に　期待されなかった僕らは

(「あいつはもうおわりだ」といわれながら)

「あいつはもう終わりだ」と言われながら

(くっせつしたそんげんはまるであおくとがるないふだ)

屈折した尊厳はまるで青く尖るナイフだ

(こうふくをきそいあうのにあきてふこうくらべになったらもうまっきだ)

幸福を競い合うのに飽きて　不幸比べになったらもう末期だ

(ぼくがうたをうたってえるあんしんとあのこがじしょうこういしてえるあんしんの)

僕が歌を歌って得る安心と　あの娘が自傷行為して得る安心の

(そもそものちがいがわからない)

そもそもの違いが分からない

(どっちにしろりかいしがたいひとのあつまりのなかで)

どっちにしろ　理解しがたい人の集まりの中で

(じぶんさえりかいできないにんげんのなれのはてだ)

自分さえ理解出来ない人間の成れの果てだ

(やりとげることでえるまんぞくもこぜにとおなじであっというまにしょうひした)

やり遂げる事で得る満足も　小銭と同じであっという間に消費した

(ふぁすとふーどてんであたまをかかえながらくりかえす)

ファストフード店で頭を抱えながら繰り返す

(おわってたまるかおわってたまるか)

終わってたまるか　終わってたまるか

(くのうのはてのはてみじめなうめきごえ)

苦悩の果ての果て　惨めなうめき声

(ここでこそうたえぬけがらになったいのちこそならせ)

ここでこそ歌え　抜け殻になった命こそ鳴らせ

(「こころにもないこといって」ってこころにないならいえねぇよ)

「心にも無い事言って」って心にないなら言えねぇよ

(ぼくはつたえることさげすんだりしないそれをとどけて)

僕は伝える事さげすんだりしない　それを届けて

(しにそこなったあさがまぶしいでかけさせられてるまいにちに)

死に損なった朝が眩しい　出掛けさせられてる毎日に

(ちぎれたなみだをじゅうだんとしてこめろそれをことばという)

千切れた涙を銃弾としてこめろ　それを言葉という

(あすがあるいじょうおわりじゃないあさひがぐどんにさしこむしゃない)

明日がある以上終わりじゃない　朝日が愚鈍に射し込む車内

(おしつぶされたこころはくしゃくしゃでほーむにはきだされた)

押しつぶされた心はくしゃくしゃで　ホームに吐き出された

(もういっぽもうごけないびどうだにできないはかないあらがいをとむらい)

もう一歩も動けない　微動だにできない　儚い抗いを弔い

(りろんぶそうかいじょをまるはだかのこうどうげんりを)

理論武装解除を　丸裸の行動原理を

(くだらないにんげんくらいがちょうどいいくだらないにんげんくらいがちょうどいい)

下らない人間くらいが丁度いい　下らない人間くらいが丁度いい

(くだらないにんげんくらいがちょうどいいどうせくだらないせかいだ)

下らない人間くらいが丁度いい　どうせ下らない世界だ

(おわったといわれたまいにちをあのときたしかにおよぎきった)

終わったと言われた毎日を　あの時確かに泳ぎきった

(ぼくらのりょうてはなみだをぬぐうためのものではないさ)

僕らの両手は涙を拭う為の物ではないさ

(しにそこなったあさがまぶしいでかけさせられてるまいにちに)

死に損なった朝が眩しい　出掛けさせられてる毎日に

(ちぎれたなみだをじゅうだんとしてこめろそれをことばという)

千切れた涙を銃弾として込めろ　それを言葉という