《旅館の求人》2
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問題文
(「おはようございます。まるまるりょかんのものですが、かみおさんでしょうか?」)
「おはようございます。○○旅館の者ですが、神尾さんでしょうか?」
(「はい。いまじゅんびしてでるところです。」)
「はい。今準備して出るところです。」
(「わかりましたー。たいちょうがわるいのですか?しつれいですがこえが・・・」)
「わかりましたー。体調が悪いのですか?失礼ですが声が・・・」
(「あ、すみません。ねおきなので」)
「あ、すみません。寝起きなので」
(「むりなさらずに。こちらについたらまずはおんせんなどにつかっていただいて)
「無理なさらずに。こちらについたらまずは温泉など浸かっていただいて
(かまいませんよ。しょにちはゆっくりとしててください。)
構いませんよ。初日はゆっくりとしててください。
(そこまでいそがしくはありませんので。」)
そこまで忙しくはありませんので。」
(「あ、だいじょうぶです。でも、ありがとうございます。」)
「あ、大丈夫です。でも、ありがとうございます。」
(でんわをきっていえをでる。あんなにしんせつでやさしいでんわ。ありがたかった。)
電話を切って家を出る。あんなに親切で優しい電話。ありがたかった。
(しかし、でんわをきってからこんどはさむけがしてきた。どあをあけるとめまいがした。)
しかし、電話を切ってから今度は寒気がしてきた。ドアを開けると眩暈がした。
(「と・・とりあえず、りょかんまでつけば・・・」)
「と・・とりあえず、旅館まで着けば・・・」
(わたしはとおるひとがふりかえるほどふらふらとえきへむかった。)
私は通る人が振り返るほどフラフラと駅へ向かった。
(やがてあめがふりだした。)
やがて雨が降り出した。
(かさをもってきてないわたしはえきまでかさなしでぬれながらいくことになった。)
傘を持ってきてない私は駅まで傘無しで濡れながら行くことになった。
(はげしいせきがでる。)
激しい咳が出る。
(「・・・りょかんでやすみたい」)
「・・・旅館で休みたい」
(わたしはびしょぬれでえきにたどりつき、、きっぷをかった。)
私はびしょぬれで駅に辿り着き、、切符を買った。
(そのときじぶんのてをみておどろいた。かさかさになっている。)
その時自分の手を見て驚いた。カサカサになっている。
(ぬれているがはだがひびわれている。まるでろうじんのように。)
濡れているが肌がひび割れている。まるで老人のように。
(「やばいびょうきか・・?りょかんまでぶじつければいいけど・・・」)
「やばい病気か・・?旅館まで無事つければいいけど・・・」
(わたしはてすりにすがるようにしてあしをささえてのぼった。なんどもやすみながら。)
私は手すりにすがるようにして足を支えて階段を上った。何度も休みながら。
(でんしゃがくるまでじかんがあり、わたしはべんちにたおれるようにすわりこみせきをした。)
電車が来るまで時間があり、私はベンチに倒れるように座り込み咳をした。
(ぜー、ぜー、こえがかれている。てあしがしびれている。)
ぜー、ぜー、声が枯れている。手足が痺れている。
(なみのようにずつうがおしよせる。ごほごほ!せきをするとあしもとにちがちらばった。)
波のように頭痛が押し寄せる。ごほごほ!咳をすると足元に血が散らばった。
(わたしははんかちでくちをぬぐった。ちがべっとり。わたしはかすむめでほーむをみていた。)
私はハンカチで口を拭った。血がベットリ。私は霞む目でホームを見ていた。
(「はやく・・・りょかんへ・・・」)
「はやく・・・旅館へ・・・」
(やがてでんしゃがごうおんをたててほーむにすべりこんでき、どあがひらいた。)
やがて電車が轟音をたててホームにすべりこんでき、ドアが開いた。
(のりおりするひとびとをみながら、わたしはよやくこしをあげた。ようつうがすごい。)
乗り降りする人々を見ながら、私はようやく腰を上げた。腰痛がすごい。
(ふらふらとじょうこぐちにむかう。からだじゅうがいたむ。あのでんしゃにのれば・・・)
フラフラと乗降口に向かう。体中が痛む。あの電車に乗れば・・・
(そしてじょうこうぐちにてをかけたとき、)
そして乗降口に手をかけたとき、
(しゃちゅうからおにのようなかおをしたろうばがとっしんしてきた。)
車中から鬼のような顔をした老婆が突進してきた。
(どしん!わたしはふっとばされほーむにころがった。)
どしん!私は吹っ飛ばされホームに転がった。
(ろうばもよろけたがさいどおそってきた。わたしはろうばととっくみあいのけんかをはじめた。)
老婆もよろけたが再度襲ってきた。私は老婆と取っ組み合いの喧嘩を始めた。
(かなしいかな、あいてはろうばなのにわたしのてにはちからがなかった。)
悲しいかな、相手は老婆なのに私の手には力がなかった。
(「やめろ!やめてくれ!おれはあのでんしゃにのらないといけないんだ!」)
「やめろ!やめてくれ!俺はあの電車に乗らないといけないんだ!」
(「なぜじゃ!?なぜじゃ!?」)
「なぜじゃ!?なぜじゃ!?」
(ろうばはわたしにまたがりかおをわしづかみにしてじめんにおさえつけながらきいた。)
老婆は私にまたがり顔を鷲掴みにして地面に抑えつけながら聞いた。
(「りょ、りょかんにいけなくなってしまう!」)
「りょ、旅館に行けなくなってしまう!」
(やがてえきいんたちがかけつけてわたしたちはひきはなされた。)
やがて駅員たちがかけつけて私たちは引き離された。
(でんしゃはいってしまった。)
電車は行ってしまった。
(わたしはたちあがることもできず、ひとだかりのちゅうしんですわりこんでいた。)
私は立ち上がることも出来ず、人だかりの中心で座り込んでいた。
(やがてひきはなされたろうばはいきをととのえながらいった。)
やがて引き離された老婆は息を整えながら言った。
(「おぬしがひかれておる。あぶなった。」そしてろうばはさっていった。)
「おぬしは引かれておる。危なかった。」そして老婆は去っていった。
(わたしはえきいんと2~3おうとうしたがすぐにかえされた。)
私は駅員と2~3応答したがすぐに帰された。
(えきをでてしかたなくいえにもどる。)
駅を出て仕方なく家に戻る。
(するとからだのちょうしがよくなってきた。こえももどってきた。)
すると体の調子が良くなってきた。声も戻ってきた。
(かがみをみるとけっしょくがいい。わたしはふしぎにおもいながらもいえにかえった。)
鏡を見ると血色がいい。私は不思議に思いながらも家に帰った。
(にもつをおろし、たばこをすう。)
荷物を下ろし、煙草を吸う。
(おちついてからやはりことわろうとりょかんのでんわばんごうをおした。)
落ち着いてからやはり断ろうと旅館の電話番号を押した。
(するとむかんじょうなかるいこえがかえってきた。)
すると無感情な軽い声が返ってきた。
(「このでんわばんごうはげんざいつかわれておりません。」)
「この電話番号は現在使われておりません。」
(おしなおす。「このでんわばんごうはげんざいつかわれておりません。」)
押しなおす。「この電話番号は現在使われておりません。」
(わたしはこんらんした。まさにこのばんごうでけさでんわがかかってきたのだ。)
私は混乱した。まさにこの番号で今朝電話が掛かってきたのだ。
(おかしいおかしいおかしい・・。わたしはつうわきろくをとっていたのをおもいだした。)
おかしいおかしいおかしい・・。私は通話記録をとっていたのを思い出した。
(さいしょまでまきもどす。・・・きゅるきゅるきゅる、がちゃ)
最初まで巻き戻す。・・・キュルキュルキュル、ガチャ
(さいせい)
再生
(「ざ・・ざざ・・・はい。ありがとうございます。まるまるりょかんです。」)
「ザ・・ザザ・・・はい。ありがとうございます。○○旅館です。」
(あれ?わたしはおかんをかんじた。わかいじょせいだったはずなのに、)
あれ?私は悪寒を感じた。若い女性だったはずなのに、
(こえがまるでひくいだんせいのようなこえになっている。)
声がまるで低い男性のような声になっている。
(「すみません。きゅうじんこうこくをみたものですが、まだぼしゅうしていますでしょうか?」)
「すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集していますでしょうか?」
(「え、しょうしょうおまちください。・・・ざ・・ざざ・・い・・そう・・だ・・」)
「え、少々お待ちください。・・・ザ・・ザザ・・い・・そう・・だ・・」
(まきもどす。)
巻き戻す。
(「・・・ざ・・ざざ・・むい・・こご・・そう・・だ」)
「・・・ザ・・ザザ・・むい・・こご・・そう・・だ」
(まきもどす。)
巻き戻す。
(「さむい・・・こごえそうだ」)
「さむい・・・こごえそうだ」
(こどものこえがはいっている。さらにそのうしろでおおぜいのにんげんがうなっているこえがきこえる。)
子供の声が入っている。更にその後ろで大勢の人間が唸っている声が聞こえる。
(うわぁ!わたしはあせがしたたった。でんわからはなれる。するとつうわきろくがそのままながれる。)
うわぁ!私は汗が滴った。電話から離れる。すると通話記録がそのまま流れる。
(「あー・・ありがとうございます。こちらこそおねがいしたいです。)
「あー・・ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。
(いつからこれますか?」「いつでもわたしはかまいません」)
いつからこれますか?」「いつでも私は構いません」
(きおくにあるかいわ。しかし、わたしはおじさんとはなしをしていたはずだ。)
記憶にある会話。しかし、私はおじさんと話をしていたはずだ。
(そこからながれるこえはじめんのしたからひびくようなろじんのこえだった。)
そこから流れる声は地面の下から響くような老人の声だった。
(「かみおくんね、はやくいらっしゃい。」)
「神尾くんね、はやくいらっしゃい。」
(そこでつうわがとぎれる。わたしのからだじゅうにひやあせがながれおちる。)
そこで通話が途切れる。私の体中に冷や汗が流れ落ちる。
(そとがどしゃぶりのあめである。)
外は土砂降りの雨である。
(かなしばりにあったようにうごけなかったがわたしがようやくおちついてきた。)
金縛りにあったように動けなかったが私はようやく落ち着いてきた。
(すると、そのままつうわきろくがながれた。けさ、かかってきたぶんだ。)
すると、そのまま通話記録が流れた。今朝、掛かってきた分だ。
(しかし、はなしごえはわたしのものだけだった。)
しかし、話し声は私のものだけだった。
(「しねしねしねしねしね」)
「死ね死ね死ね死ね死ね」
(「はい。いあmじゅんびしてでるところです。」)
「はい。今準備して出るところです。」
(「しねしねしねしねしね」)
「死ね死ね死ね死ね死ね」
(「あ、すみません、ねおきなので」)
「あ、すみません、寝起きなので」
(「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね」)
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
(「あ、だいじょうぶです。でも、ありがとうございます。」)
「あ、大丈夫です。でも、ありがとうございます。」
(わたしはでんわのでんげんごとひきぬいた。かわいたのどをならす。)
私は電話の電源ごと引き抜いた。乾いた喉を鳴らす。
(な、なんだ・・・なんだこれ、なんだよ!?どうなってんだ??)
な、なんだ・・・なんだこれ、なんだよ!?どうなってんだ??
(わたしはそのときてにきゅうじんがいどをにぎっていた。ふるえながらそのぺーじをさがす。)
私はそのとき手に求人ガイドを握っていた。震えながらそのページを探す。
(するとなにかおかしい。てがふるえる。そのぺーじはあった。)
すると何かおかしい。手が震える。そのページはあった。
(きれなはずなのにそのりょかんの1ぺーじだけしわしわで)
綺麗なはずなのにその旅館の1ページだけしわしわで
(なにかしみがおおきくひろがりすこしはしがこげている。)
なにかシミが大きく広がり少し端が焦げている。
(どうみてもそこだけふるいかみしつなのです。まるですうじゅうねんまえのふるざっしのようでした。)
どう見てもそこだけ古い紙質なのです。まるで数十年前の古雑誌のようでした。
(そしてそこにはぜんしょうしてもえおちたりょかんがうつっていました。)
そしてそこには全焼して燃え落ちた旅館が写っていました。
(そこにきじがかいてありました。ししゃ30すうめい。だいどころからしゅっかしたもよう。)
そこに記事が書いてありました。死者30数名。台所から出火した模様。
(りょかんのしゅじんとおもわれるしょうしたいがだいどころでみつかったことから、)
旅館の主人と思われる焼死体が台所で見つかったことから、
(りょうりのさいにほのおをだしたとおもわれる。)
料理の際に炎を出したと思われる。
(とまりにきていたしゅくはくきゃくたちがにげおくれてほのおにまかれてしょうし。)
泊まりに来ていた宿泊客たちが逃げ遅れて炎にまかれて焼死。
(これ・・・なんだ。きゅうじんじゃない。)
これ・・・なんだ。求人じゃない。
(わたしはこえもだせずにいた。きゅうじんざっしがかぜにめくれている。)
私は声も出せずにいた。求人雑誌が風に捲れている。
(わたしはしびれたあたまでいしのようにうごけなかった。)
私は痺れた頭で石のように動けなかった。
(そのときふいにあまあしがよわくなった。いっしゅんのせいじゃくがわたしをつつんだ。)
そのときふいに雨足が弱くなった。一瞬の静寂が私を包んだ。
(でんわがなっている。)
電話が鳴っている。