夏目漱石「こころ」3-50

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夏目漱石「こころ」3-50
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4:不具(かたわ)
6:影像(いめじ)
14:初(はじめ)

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問題文

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(わたくしはあるいみからみてじっさいかれのけいべつにあたいしていたかもしれません。)

私はある意味から見て実際彼の軽蔑に価していたかもしれません。

(かれのめのつけどころはわたくしよりはるかにたかいところにあったともいわれるでしょう。)

彼の眼の着け所は私より遥かに高いところにあったとも云われるでしょう。

(わたくしもそれをいなみはしません。)

私もそれを否みはしません。

(しかしめだけたかくって、ほかがつりあわないのはてもなくかたわです。)

然し眼だけ高くって、外が釣り合わないのは手もなく不具です。

(わたくしはなにをおいても、このさいかれをにんげんらしくするのがせんいちだとかんがえたのです。)

私は何を措いても、この際彼を人間らしくするのが専一だと考えたのです。

(いくらかれのあたまがえらいひとのいめじでうずまっていても、)

いくら彼の頭が偉い人の影像で埋まっていても、

(かれじしんがえらくなっていかないいじょうは、)

彼自身が偉くなって行かない以上は、

(なんのやくにもたたないということをはっけんしたのです。)

何の役にも立たないという事を発見したのです。

(わたくしはかれをにんげんらしくするだいいちのしゅだんとして、)

私は彼を人間らしくする第一の手段として、

(まずいせいのそばにかれをすわらせるほうほうをこうじたのです。)

まず異性の傍に彼を坐らせる方法を講じたのです。

(そうしてそこからでるくうきにかれをさらしたうえ、)

そうして其所から出る空気に彼を曝した上、

(さびつきかかったかれのけつえきをあたらしくしようとこころみたのです。)

錆び付きかかった彼の血液を新らしくしようと試みたのです。

(このこころみはしだいにせいこうしました。)

この試みは次第に成功しました。

(はじめのうちゆうごうしにくいようにみえたものが、)

初のうち融合しにくいように見えたものが、

(だんだんひとつにまとまってらいしゅつしました。)

段々一つに纏まって来出しました。

(かれはじぶんいがいにせかいのあることをすこしずつさとっていくようでした。)

彼は自分以外に世界のある事を少しずつ悟って行くようでした。

(かれはあるひわたくしにむかって、)

彼はある日私に向って、

(おんなはそうけいべつすべきものでないというようなことをいいました。)

女はそう軽蔑すべきものでないと云うような事を云いました。

(けいははじめおんなからも、わたくしどうようのちしきとがくもんをようきゅうしていたらしいのです。)

Kははじめ女からも、私同様の知識と学問を要求していたらしいのです。

(そうしてそれがみつからないと、すぐけいべつのねんをしょうじたものとおもわれます。)

そうしてそれが見付からないと、すぐ軽蔑の念を生じたものと思われます。

など

(いままでのかれは、せいによってたちばをかえることをしらずに、)

今までの彼は、性によって立場を変える事を知らずに、

(おなじしせんですべてのなんにょをいちようにかんさつしていたのです。)

同じ視線で凡ての男女を一様に観察していたのです。

(わたくしはかれに、もしわれらふたりだけがおとこどうしでえいきゅうにはなしをこうかんしているならば、)

私は彼に、もし我等二人だけが男同志で永久に話を交換しているならば、

(ふたりはただちょくせんてきにさきへのびていくにすぎないだろうといいました。)

二人はただ直線的に先へ延びて行くに過ぎないだろうと云いました。

(かれはもっともだとこたえました。)

彼は尤もだと答えました。

(わたくしはそのときおじょうさんのことで、たしょうむちゅうになっているころでしたから、)

私はその時御嬢さんの事で、多少夢中になっている頃でしたから、

(しぜんそんなことばもつかうようになったのでしょう。)

自然そんな言葉も使うようになったのでしょう。

(しかしうらめんのしょうそくはかれにはひとくちもうちあけませんでした。)

然し裏面の消息は彼には一口も打ち明けませんでした。

(いままでしょもつでじょうへきをきずいてそのなかにたてこもっていたようなけいのこころが、)

今まで書物で城壁をきずいてその中に立て籠っていたようなKの心が、

(だんだんうちとけてくるのをみているのは、わたくしにとってなによりもゆかいでした。)

段々打ち解けて来るのを見ているのは、私に取って何よりも愉快でした。

(わたくしはさいしょからそうしたもくてきでことをやりだしたのですから、)

私は最初からそうした目的で事を遣り出したのですから、

(じぶんのせいこうにともなうきえつをかんぜずにはいられなかったのです。)

自分の成功に伴う喜悦を感ぜずにはいられなかったのです。

(わたくしはほんにんにいわないかわりに、)

私は本人に云わない代りに、

(おくさんとおじょうさんにじぶんのおもったとおりをはなしました。)

奥さんと御嬢さんに自分の思った通りを話しました。

(ふたりもまんぞくのようすでした。)

二人も満足の様子でした。

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