蛍/秋山黄色

(このままこおっていようかと)

このまま凍っていようかと

(とじたひとえまぶたには)

閉じた一重瞼には

(すこしまぶしいうみべのひかり)

少し眩しい海辺の光

(もうよるになっていた)

もう夜になっていた

(ただしくいたいっておもうのが)

正しく居たいって思うのが

(もうこころにかげをおとす)

もう心に影を落とす

(じゅうぶんなほどのあかりになっていた)

十分なほどの灯りになっていた

(ひとつえらべばいくつかおとすのは)

一つ選べば幾つか落とすのは

(しっているかおだけしていた)

知っている顔だけしていた

(とうだいのしたでほのぐらくうずくまる)

灯台の下で仄暗く蹲る

(かじょうがきのいやさしさがぼくをながめていた)

箇条書きの嫌さしさが僕を眺めていた

(もうひかりがきっとはだにあっていない)

もう光がきっと肌に合っていない

(めをいためてようやくみんなにきづいた)

目を痛めてようやくみんなに気付いた

(ごめんね)

ごめんね

(いいひとでいたいのはどうして？)

いい人でいたいのはどうして？

(はっきりしないのはどうして？)

はっきりしないのはどうして？

(みみざわりのいいりゆうが)

耳触りのいい理由が

(みみざわりだからだろうか)

耳障りだからだろうか

(ぼくはかわれるだろうか)

僕は変われるだろうか

(こおりみたいですきょうは)

氷みたいです今日は

(でもねなんだかまえをむけそうだよ)

でもねなんだか前を向けそうだよ

(じぶんのちからじゃなさそうだよ)

自分の力じゃなさそうだよ

(めいめいとしたあなたたち)

明々としたあなたたち

(もしかしたらくるしいおもいは)

もしかしたら苦しい思いは

(やさしいひとをまきこむのか)

優しい人を巻き込むのか

(つみあげたえなじーどりんく)

積み上げたエナジードリンク

(まだあまいにおいがした)

まだ甘い匂いがした

(「りゆう」じゃなくこの「いみ」を)

「理由」じゃなくこの「意味」を

(すべておしえたいんだ)

全て教えたいんだ

(ぼくにできることはあとなにがある)

僕にできることはあと何がある

(てにのこったすこしのいままで)

手に残った少しの今迄

(そのまま)

そのまま

(じぶんをゆるすのはじかんがいりそうだけど)

自分を許すのは時間が要りそうだけど

(とけいをながめてもてにははいらないよ)

時計を眺めても手には入らないよ

(あたらしいひかりをさがしてよるにむかう)

新しい陽光を探して夜に向かう

(ほたるびのうつくしさをぼくはみつけたいんだ)

蛍火の美しさを僕は見つけたいんだ

(とうだいのしたにほんとうのうたういみがある)

灯台の下に本当の歌う意味がある

(きえたくなくてしにたいというひとのためだけに)

消えたくなくて死にたいという人の為だけに

(むいみじゃないいまを)

無意味じゃない今を

(りゆうなくいきるから)

理由なく生きるから

(「やりなおしたい」ことばかりだ)

「やり直したい」事ばかりだ

(これから)

これから