記憶の器

(いきとってもしんどっても)

生きとっても死んどっても

(あえないひとやものがあって)

会えない人や物があって

(てでさわることができなくても)

手で触る事ができなくても

(きおくはきえない)

記憶は消えない

(しっとってもしらんでも)

知っとっても　知らんでも

(ゆるがないしんじつがあって)

揺るがない真実があって

(みみできくことができなくても)

耳で聞く事ができなくても

(こころはきこえる)

心は聞こえる

(もうあえないひとのりんかくを)

もう会えない人の輪郭を

(めをとじなぞっている)

目を閉じなぞっている

(もうあえないひとのわらいごえ)

もう会えない人の笑い声

(むねにだきつづけてる)

胸に抱き続けてる

(このせかいからこのせかいから)

この世界から　この世界から

(あなたをけしてしまわぬように)

あなたを消してしまわぬように

(このせかいでであったすべては)

この世界で出会った全ては

(わたしのわらうまなじりに)

私の笑うまなじりに

(なみだするはなのおくに)

涙する鼻の奥に

(よせるみけんに)

寄せる眉間に

(ふりあおぐくびに)

振り仰ぐ首に

(やどっているやどっている)

宿っている　宿っている

(そうじゃとええね)

そうじゃとええね

(はるみさんとは いっしょにわろうたきおくしかない)

晴美さんとは 一緒に笑うた記憶しかない

(じゃけえわらうたびにおもいだします)

じゃけえ笑うたびに思い出します

(たぶんずっとなんじゅうねんたっても)

多分ずっと何十年経っても

(うんほんまよ)

うん　ほんまよ

(だいいちないてばかりじゃもったいないわい)

第一　泣いてばかりじゃもったいないわい

(ほおじゃね)

ほおじゃね

(これがあのあおばかね)

これがあの青葉かね

(はるみさん あんときうみにうかんどったんはあおばじゃ)

晴美さん あん時海に浮かんどったんは青葉じゃ

(てつさんのふねじゃったんよ)

哲さんの船じゃったんよ

(いちわのしろいさぎがやまを こえてふるさとへ)

一羽の白いサギが山を 越えてふるさとへ

(きおくにしろくたつあらなみ)

記憶に白く立つ荒波

(うさぎとぶあのうみに)

ウサギ飛ぶあの海に

(やどるいとしいあなた)

宿る愛しいあなた

(もうあえないひととつないだて)

もう会えない人と繋いだ手

(ぬくもりはきえない)

温もりは消えない

(そのちいさなあなたのての)

その小さなあなたの手の

(そのきおくのうつわとしていま)

その記憶の器として今

(ありつづけるしかない)

在り続けるしかない

(いつまでもきえることはない)

いつまでも消える事はない

(このせかいから)

この世界から

(このせかいから)

この世界から

(あなたをけしてしまわぬように)

あなたを消してしまわぬように

(このせかいから)

この世界から

(このせかいから)

この世界から

(あなたをけしてしまわぬように)

あなたを消してしまわぬように

(あなたをけしてしまわぬように)

あなたを消してしまわぬように