怖い話《後部座席のチョコレート》

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(2011ねん3がつ11にちのごご14じ46ぷん、)

2011年3月11日の午後14時46分、

(とうほくにわすれられないひがしにほんだいしんさいがおこりました。)

東北に忘れられない東日本大震災が起こりました。

(とうじ、みやぎにすんでいたおなじしょくばのどうきのaから、きいたはなしです。)

当時、宮城に住んでいた同じ職場の同期のAから、聞いた話です。

(ひさいされたかたがこれをよまれたらあのひのことをおもいださせてしまうかも)

被災された方がこれを読まれたらあの日の事を思い出させてしまうかも

(しれませんがよんでくださるとこうえいです。)

しれませんが読んでくださると光栄です。

(じしんがきたとき、aはかぞくとおそいひるめしをとっていて、)

自身が来た時、Aは家族と遅い昼飯を取っていて、

(ゆれがおちついたすうふんかんのあいまにいえをとびだしてしばらくそとにいましたが、)

揺れが落ち着いた数分間の合間に家を飛び出して暫く外にいましたが、

(つなみがくるというちょうないほうそうがながれたため、たかだいにひなんしたそうです。)

津波が来るという町内放送が流れた為、高台に避難したそうです。

(つなみからはしってにげるひとびと、つなみにながされていくたてものやくるま、)

津波から走って逃げる人々、津波に流されていく建物や車、

(みなれただいすきなまちがこわされていくという、)

見慣れた大好きな街が壊されていくという、

(しんじられないこうけいがめにうつったそうです。)

信じられない光景が目に映ったそうです。

(そして、ひなんじょのちかくからaがそつぎょうしたちゅうがくのそつぎょうあるばむが)

そして、避難所の近くからAが卒業した中学の卒業アルバムが

(どろにまみれたじょうたいででてきました。)

泥にまみれた状態で出てきました。

(そのそつぎょうあるばむがだれのものかわかりませんが、ひろってみていると、)

その卒業アルバムが誰のものか分かりませんが、拾って見ていると、

(とうじのどうきゅうせいたちがなつかしくかんじました。)

当時の同級生達が懐かしく感じました。

(このしんさいでなくなっているひともいるのではとおもったそうです。)

この震災で亡くなっている人もいるのではと思ったそうです。

(しんさいからにかげつがたってもこうこうのともだちだったbがみつかりませんでした。)

震災から二か月が経っても高校の友達だったBが見つかりませんでした。

(おもにともだちしかえつらんしていないかんじの、bのこうしんしていたちいさなぶろぐは)

主に友達しか閲覧していない感じの、Bの更新していた小さなブログは

(ぜんじつの3がつ10にちでとまっていました。)

前日の3月10日で止まっていました。

(どこかでひなんしていきてくれているだろう、けいたいがつかえないかんきょうにいるだけだ)

どこかで避難して生きてくれているだろう、携帯が使えない環境にいるだけだ

など

(とおもっていたのです。aはひなんじょでせいかつをしていましたが、)

と思っていたのです。Aは避難所で生活をしていましたが、

(あさになるとひなんじょをぬけ、bをさがすためにこわれたまちをまいにちあるいていました。)

朝になると避難所を抜け、Bを探す為に壊れた街を毎日歩いていました。

(けっきょくbはみつからず、しんさいから4ねんがたったころ、)

結局Bは見つからず、震災から4年が経った頃、

(aはしゅうしょくかつどうのじきにはいり、とうきょうのとあるきぎょうにしゅうしょくがきまりました。)

Aは就職活動の時期に入り、東京のとある企業に就職が決まりました。

(ひとりぐらしもかんがえたのですが、あのしんさいでかぞくをうしなうのはいやなため、)

一人暮らしも考えたのですが、あの震災で家族を失うのは嫌な為、

(かぞくぐるみでまんしょんにすむことにきめました。)

家族ぐるみでマンションに住む事に決めました。

(しゅうしょくさきのしごとにもなれてきたころ、くるまのめんきょをとり、)

就職先の仕事にも慣れてきた頃、車の免許を取り、

(やすみのひにいえのちかくをくるまではしっていました。)

休みの日に家の近くを車で走っていました。

(きせつごとにかわっていくまちなみやたちならぶおみせをみながら)

季節ごとに代わっていく街並みや立ち並ぶお店を見ながら

(はしるのがたのしかったそうです。)

走るのが楽しかったそうです。

(あおしんごうでとまったこうさてんのひとのなかでみおぼえのあるかおをみつけました。)

青信号で止まった交差点の人の中で見覚えのある顔を見つけました。

(みやぎのしんさいでさがしてもみつからなかったbでした。)

宮城の震災で探しても見つからなかったBでした。

(とうきょうでいきていてくれたのか。)

東京で生きていてくれたのか。

(あんしんしたaはうれしさからくるまのまどをひらけてbにこえをかけました。)

安心したAは嬉しさから車の窓を開けてBに声を掛けました。

(「bじゃないか!おまえ、いきてたのか!」)

「Bじゃないか!お前、生きてたのか!」

(「a!ひさしぶりだな、おれはあのしんさいごにとうきょうにきてたんだよ!」)

「A!久しぶりだな、俺はあの震災後に東京に来てたんだよ!」

(まちなかでくるまをとめてはなすのもなぁ、ということになり、)

街中で車を停めて話すのもなぁ、という事になり、

(bをこうぶざせきにのせてじぶんのいえにむかいました。)

Bを後部座席に乗せて自分の家に向かいました。

(こうこうのときのおもいでばなしなど、たわいもないかいわをたのしみました。)

高校の時の思い出話など、たわいもない会話を楽しみました。

(「a、ちょこれーとたべるか?」)

「A、チョコレート食べるか?」

(「おぅ、たべるー」)

「おぅ、食べるー」

(「ここおいとくなー」)

「ここ置いとくなー」

(「さんきゅー」)

「サンキュー」

(bがどこにすんでいるのか、けっこんはしているのかきいても)

Bがどこに住んでいるのか、結婚はしているのか聞いても

(おしえてくれなかったのでしごとのことだけでもきいてみようかとおもってたずねました。)

教えてくれなかったので仕事の事だけでも聞いてみようかと思って尋ねました。

(「おまえこっちでなにのしごとしてるの?」)

「お前こっちで何の仕事してるの?」

(bのへんじがありません。「b?」)

Bの返事がありません。「B?」

(こうぶざせきをふりむくとbのすがたはなかったのですが、)

後部座席を振り向くとBの姿はなかったのですが、

(aのすきなめーかーのちょこれーとがせきにおいてありました。)

Aの好きなメーカーのチョコレートが席に置いてありました。

(そのちょこれーとのしょうみきげんは2011ねん3がつ17にち。)

そのチョコレートの賞味期限は2011年3月17日。

(つぎのしゅうのきゅうじつ、aはみやぎにいちどだけもどり、)

次の週の休日、Aは宮城に一度だけ戻り、

(まちはどうなってるのか、bはほんとうにいきているのかをしるために。)

街はどうなってるのか、Bは本当に生きているのかを知る為に。

(ちいさなひなんじょのちかくでbのははおやをみつけました。)

小さな避難所の近くでBの母親を見つけました。

(「あら、aくんひさしぶりね!」)

「あら、Aくん久しぶりね!」

(「おひさしぶりです、あの・・・bは・・・」)

「お久しぶりです、あの・・・Bは・・・」

(「bね、なくなったのよ、つなみで・・・あのひ、たかだいにひなんしましょうって)

「Bね、亡くなったのよ、津波で・・・あの日、高台に避難しましょうって

(いったんだけど、aくんがどこにいるかさがすんだって・・・」)

言ったんだけど、Aくんがどこにいるか探すんだって・・・」

(あのしんさいのひ、bもaのことをさがしてあるいているあいだにつなみにのまれてしまい、)

あの震災の日、BもAの事を探して歩いている間に津波に飲まれてしまい、

(なくなっていたそうです。)

亡くなっていたそうです。

(「やっぱりあいつ、しんでたんだ。)

「やっぱりあいつ、死んでたんだ。

(しぬちょくぜんもなくなってからもおれのことをわすれずとうきょうまでさがしにきてくれたのが、)

死ぬ直前も亡くなってからも俺の事を忘れず東京まで探しに来てくれたのが、

(たとえゆうれいだとしてもうれしいんだよ」となみだながらにはなしてくれたa。)

例え幽霊だとしても嬉しいんだよ」と涙ながらに話してくれたA。

(せつないけれどこころがあたたまるすてきなゆうじょうのはなしでした。)

切ないけれど心が温まる素敵な友情の話でした。

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