夏目漱石「こころ」3-60

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-60
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
10:服装(なり)
31:翌る(あくる)
35:快よく(こころよく)
38:蟠まって(わだかまって)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ちょい長めです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヤス 7327 7.8 93.9% 278.0 2176 139 40 2024/10/29
2 mame 5501 A 5.8 94.9% 372.1 2163 116 40 2024/12/14
3 やまちゃん 4929 B 5.1 96.1% 420.1 2157 86 40 2024/11/22

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問題文

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(そのときわたくしはただいちずになみをみていました。)

その時私はただ一図に波を見ていました。

(そうしてそのなみのなかにうごくすこしむらさきがかったたいのいろを、)

そうしてその波の中に動く少し紫がかった鯛の色を、

(おもしろいげんしょうのひとつとしてあかずながめました。)

面白い現象の一つとして飽かず眺めました。

(しかしけいはわたくしほどそれにきょうみをもちえなかったものとみえます。)

然しKは私程それに興味を有ち得なかったものと見えます。

(かれはたいよりもかえってにちれんのほうをあたまのなかでそうぞうしていたらしいのです。)

彼は鯛よりも却って日蓮の方を頭の中で想像していたらしいのです。

(ちょうどそこにたんじょうじというてらがありました。)

丁度其所に誕生寺という寺がありました。

(にちれんのうまれたむらだからたんじょうじとでもなをつけたものでしょう。)

日蓮の生れた村だから誕生寺とでも名を付けたものでしょう。

(りっぱながらんでした。)

立派な伽藍でした。

(けいはそのてらにいってじゅうじにあってみるといいだしました。)

Kはその寺に行って住持に会って見るといい出しました。

(じつをいうと、われわれはずいぶんへんななりをしていたのです。)

実をいうと、我々は随分変な服装をしていたのです。

(ことにけいはかぜのためにぼうしをうみにふきとばされたけっか、)

ことにKは風のために帽子を海に吹き飛ばされた結果、

(すげがさをかってかぶっていました。)

菅笠を買って被っていました。

(きものはもとよりそうほうともあかじみたうえにあせでくさくなっていました。)

着物は固より双方とも垢じみた上に汗で臭くなっていました。

(わたくしはぼうさんなどにあうのはよそうといいました。)

私は坊さんなどに会うのは止そうと云いました。

(けいはごうじょうだからききません。)

Kは強情だから聞きません。

(いやならわたくしだけそとにまっていろというのです。)

厭なら私だけ外に待っていろというのです。

(わたくしはしかたがないからいっしょにげんかんにかかりましたが、)

私は仕方がないから一所に玄関にかかりましたが、

(こころのうちではきっとことわられるにちがいないとおもっていました。)

心のうちではきっと断られるに違ないと思っていました。

(ところがぼうさんというものはあんがいていねいなもので、)

ところが坊さんというものは案外丁寧なもので、

(ひろいりっぱなざしきへわたくしたちをとおして、すぐあってくれました。)

広い立派な座敷へ私達を通して、すぐ会ってくれました。

など

(そのじぶんのわたくしはけいとだいぶかんがえがちがっていましたから、)

その時分の私はKと大分考が違っていましたから、

(ぼうさんとけいのだんわにそれほどみみをかたむけるきもおこりませんでしたが、)

坊さんとKの談話にそれ程耳を傾ける気も起りませんでしたが、

(けいはしきりににちれんのことをきいていたようです。)

Kはしきりに日蓮の事を聞いていたようです。

(にちれんはそうにちれんといわれるくらいで、そうしょがたいへんじょうずであったとぼうさんがいったとき、)

日蓮は草日蓮と云われる位で、草書が大変上手であったと坊さんが云った時、

(じのまずいけいは、もっとふかいいみのにちれんがしりたかったのでしょう。)

字の拙いKは、もっと深い意味の日蓮が知りたかったのでしょう。

(ぼうさんがそのてんでけいをまんぞくさせたかどうかはぎもんですが、)

坊さんがその点でKを満足させたかどうかは疑問ですが、

(かれはてらのけいだいをでると、しきりにわたくしにむかってにちれんのことをうんぬんしだしました。)

彼は寺の境内を出ると、しきりに私に向って日蓮の事を云々し出しました。

(わたくしはあつくてくたびれて、それどころではありませんでしたから、)

私は暑くて草臥れて、それどころではありませんでしたから、

(ただくちのさきでいいかげんなあいさつをしていました。)

唯口の先で好い加減な挨拶をしていました。

(それもめんどうになってしまいにはまったくだまってしまったのです。)

それも面倒になってしまいには全く黙ってしまったのです。

(たしかそのあくるばんのことだとおもいますが、)

たしかその翌る晩の事だと思いますが、

(ふたりはやどへついてめしをくって、もうねようというすこしまえになってから、)

二人は宿へ着いて飯を食って、もう寐ようという少し前になってから、

(きゅうにむずかしいもんだいをろんじあいだしました。)

急にむずかしい問題を論じ合い出しました。

(けいはきのうじぶんのほうからはなしかけたにちれんのことについて、)

Kは昨日自分の方から話しかけた日蓮の事に就いて、

(わたくしがとりあわなかったのを、こころよくおもっていなかったのです。)

私が取り合わなかったのを、快よく思っていなかったのです。

(せいしんてきにこうじょうしんがないものはばかだといって、)

精神的に向上心がないものは馬鹿だと云って、

(なんだかわたくしをさもけいはくもののようにやりこめるのです。)

何だか私をさも軽薄もののように遣り込めるのです。

(ところがわたくしのむねにはおじょうさんのことがわだかまっていますから、)

ところが私の胸には御嬢さんの事が蟠まっていますから、

(かれのぶべつにちかいことばをただわらってうけとるわけにいきません。)

彼の侮蔑に近い言葉をただ笑って受け取る訳に行きません。

(わたくしはわたくしでべんかいをはじめたのです。)

私は私で弁解を始めたのです。

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