夏目漱石「こころ」3-62

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-62
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4:路々(みちみち)
6:知らない振(ふり)
13:拵らえた(こしらえた)
14:原の(もとの)
18:自から(おのずから)
32:忙がしそうに(いそがしそうに)
39:賞めて(ほめて)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少し長めです。

全く関係ありませんが、Kとの旅行編(わたしが勝手によんでいます)に来るとよく晴れた日に舗装された海岸沿いの道を歩きたくなります。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヤス 7503 7.9 94.1% 264.8 2118 131 42 2024/10/30
2 mame 5446 B++ 5.7 94.8% 367.6 2117 115 42 2024/12/14
3 饅頭餅美 5237 B+ 5.5 94.5% 381.3 2119 122 42 2024/11/05
4 ぶす 4831 B 5.2 92.6% 400.7 2104 168 42 2024/10/31
5 やまちゃん 4789 B 5.0 95.0% 418.0 2111 109 42 2024/11/24

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問題文

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(けいとわたくしはそれぎりねてしまいました。)

Kと私はそれぎり寐てしまいました。

(そうしてそのあくるひからまたふつうのぎょうしょうのたいどにかえって、)

そうしてその翌る日から又普通の行商の態度に返って、

(うんうんあせをながしながらあるきだしたのです。)

うんうん汗を流しながら歩き出したのです。

(しかしわたくしはみちみちそのばんのことをひょいひょいとおもいだしました。)

然し私は路々その晩の事をひょいひょいと思い出しました。

(わたくしにはこのうえもないいいきかいがあたえられたのに、)

私にはこの上もない好い機会が与えられたのに、

(しらないふりをしてなぜそれをやりすごしたのだろうという)

知らない振をして何故それを遣り過ごしたのだろうという

(かいこんのねんがもえたのです。)

悔恨の念が燃えたのです。

(わたくしはにんげんらしいというちゅうしょうてきなことばをもちいるかわりに、)

私は人間らしいという抽象的な言葉を用いる代りに、

(もっとちょくせつでかんたんなはなしを)

もっと直截で簡単な話を

(けいにうちあけてしまえばよかったとおもいだしたのです。)

Kに打ち明けてしまえば好かったと思い出したのです。

(じつをいうと、わたくしがそんなことばをそうぞうしたのも、)

実を云うと、私がそんな言葉を創造したのも、

(おじょうさんにたいするわたくしのかんじょうがどだいになっていたのですから、)

御嬢さんに対する私の感情が土台になっていたのですから、

(じじつをじょうりゅうしてこしらえたりろんなどをけいのみみにふきこむよりも、)

事実を蒸留して拵らえた理論などをKの耳に吹き込むよりも、

(もとのかたちそのままをかれのめのまえにろしゅつしたほうが、)

原の形そのままを彼の眼の前に露出した方が、

(わたくしにはたしかにりえきだったでしょう。)

私にはたしかに利益だったでしょう。

(わたくしにそれができなかったのは、)

私にそれが出来なかったのは、

(がくもんのこうさいがきちょうをこうせいしているふたりのしたしみに、)

学問の交際が基調を構成している二人の親しみに、

(おのずからいっしゅのだせいがあったため、)

自から一種の惰性があったため、

(おもいきってそれをつきやぶるだけのゆうきが)

思い切ってそれを突き破るだけの勇気が

(わたくしにかけていたのだということをここにじはくします。)

私に欠けていたのだという事をここに自白します。

など

(きどりすぎたといっても、きょえいしんがたたったといってもおなじでしょうが、)

気取り過ぎたと云っても、虚栄心が祟ったと云っても同じでしょうが、

(わたくしのいうきどるとかきょえいとかいういみは、ふつうのとはすこしちがいます。)

私のいう気取るとか虚栄とかいう意味は、普通のとは少し違います。

(それがあなたにつうじさえすれば、わたくしはまんぞくなのです。)

それがあなたに通じさえすれば、私は満足なのです。

(われわれはまっくろになってとうきょうへかえりました。)

我々は真黒になって東京へ帰りました。

(かえったときはわたくしのきぶんがまたかわっていました。)

帰った時は私の気分が又変わっていました。

(にんげんらしいとか、にんげんらしくないとかいうこりくつは)

人間らしいとか、人間らしくないとかいう小理屈は

(ほとんどあたまのなかにのこっていませんでした。)

殆んど頭の中に残っていませんでした。

(けいにもしゅうきょうからしいようすがまったくみえなくなりました。)

Kにも宗教家らしい様子が全く見えなくなりました。

(おそらくかれのこころのどこにもれいがどうのにくがどうのというもんだいは、)

恐らく彼の心のどこにも霊がどうの肉がどうのという問題は、

(そのときやどっていなかったでしょう。)

その時宿っていなかったでしょう。

(ふたりはいじんしゅのようなかおをして、)

二人は異人種のような顔をして、

(いそがしそうにみえるとうきょうをぐるぐるながめました。)

忙がしそうに見える東京をぐるぐる眺めました。

(それからりょうごくへきて、あついのにしゃもをくいました。)

それから両国へ来て、暑いのに軍鶏を食いました。

(けいはそのいきおいでこいしがわまであるいてかえろうというのです。)

Kはその勢で小石川まで歩いて帰ろうと云うのです。

(たいりょくからいえばけいよりもわたくしのほうがつよいのですから、わたくしはすぐおうじました。)

体力から云えばKよりも私の方が強いのですから、私はすぐ応じました。

(うちへついたとき、おくさんはふたりのすがたをみておどろきました。)

宅へ着いた時、奥さんは二人の姿を見て驚ろきました。

(ふたりはただいろがくろくなったばかりでなく、)

二人はただ色が黒くなったばかりでなく、

(むやみにあるいていたうちにたいへんやせてしまったのです。)

無暗に歩いていたうちに大変瘠せてしまったのです。

(おくさんはそれでもじょうぶそうになったといってほめてくれるのです。)

奥さんはそれでも丈夫そうになったと云って賞めてくれるのです。

(おじょうさんはおくさんのむじゅんがおかしいといってまたわらいだしました。)

御嬢さんは奥さんの矛盾が可笑しいと云って又笑い出しました。

(りょこうまえときどきはらのたったわたくしも、そのときだけはゆかいなこころもちがしました。)

旅行前時々腹の立った私も、その時だけは愉快な心持がしました。

(ばあいがばあいなのと、ひさしぶりにきいたせいでしょう。)

場合が場合なのと、久し振に聞いた所為でしょう。

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