怖い話《監視小屋》

(はしゃぎすぎないようにいろいろとちゅういをうながされ、でんわをきろうとすると)

はしゃぎすぎないように色々と注意を促され、電話を切ろうとすると

(「あぁ、わすれていたけど・・・にしがわのまどのかーてんはかならずしめてねなさい」)

「あぁ、忘れていたけど・・・西側の窓のカーテンは必ず閉めて寝なさい」

(とのこと。そのときは「はぁい」となまへんじででんわをきったのですが、)

との事。その時は「はぁい」と生返事で電話を切ったのですが、

(よくよくかんがえるといみがよくわかりません。)

よくよく考えると意味がよく分かりません。

(がっこうのうらてにあたるぼちはそのほうこうではないのに、)

学校の裏手にあたる墓地はその方向ではないのに、

(おかしいねとはなしあいながらゆうじんはなんのきなしにそのかーてんをあけました。)

おかしいねと話し合いながら友人は何の気なしにそのカーテンを開けました。

(そこにはあさなわでまがまがしくまつられた、ふるびたいどがありました。)

そこには麻縄で禍々しく祭られた、古びた井戸がありました。

(ちょうどこのじがたになったこうしゃとこやにはばまれていて、)

丁度コの字型になった校舎と小屋に阻まれていて、

(いままでめにするきかいがなかったものだったのにいっしゅんぞくりとおかんがはしりました。)

今まで目にする機会がなかったものだったのに一瞬ゾクリと悪寒が走りました。

(「なんかきもちわるいね」などといいながら、わたしたちはひとつのふとんに)

「なんか気持ち悪いね」などと言いながら、私達は一つの布団に

(くっつくようにしてばんはねむりについたのです。)

くっつくようにして晩は眠りについたのです。

(どれくらいねむったのか・・わたしはかたぐちのさむさにからだをふるわせてめをさましました。)

どれくらい眠ったのか・・私は肩口の寒さに体を震わせて目を覚ましました。

(ふとみるとゆうじんのすがたがありません。)

ふと見ると友人の姿がありません。

(こやにはといれがなかったので、きょういんりょうのほうにかりにいったのかとおもい、)

小屋にはトイレがなかったので、教員寮の方に借りに行ったのかと思い、

(しばらくまってみましたがもどってきません。)

暫く待ってみましたが戻って来ません。

(どあをあけてそとのようすをうかがってみましたが、)

ドアを開けて外の様子を伺ってみましたが、

(こうしゃのほうからもきょういんりょうからももどってくるけはいはありません。)

校舎の方からも教員寮からも戻ってくる気配はありません。

(「どこいったんだろう・・・」とふあんにかられながらへやにもどったわたしは、)

「何処行ったんだろう・・・」と不安に駆られながら部屋に戻った私は、

(ほんとうになにげないきもちでまどのかーてんをあけてみました。)

本当に何気ない気持ちで窓のカーテンを開けてみました。

(したぎすがたのゆうじんは、いどのがわにいました。)

下着姿の友人は、井戸の側にいました。

(そしてこしのあたりにてをやってごそごそしています。)

そして腰のあたりに手をやってゴソゴソしています。

(「なぁんだ、うらでようをたすつもりなのか」)

「なぁんだ、裏で用を足すつもりなのか」

(とあきれながらかーてんをしめかけたわたしは、ふときみょうなかんかくにとらわれて)

と呆れながらカーテンを閉めかけた私は、ふと奇妙な感覚に囚われて

(もういちどいどのほうにめをむけてこえをあげそうになりました。)

もう一度井戸の方に目を向けて声を上げそうになりました。

(ごそごそしたとおもっていたのは、こしになわをまきつけていたのだときづきました。)

ゴソゴソしたと思っていたのは、腰に縄を巻き付けていたのだと気づきました。

(そしていまはしゃがみこんでなわのさきにおおきないしをくくりつけています。)

そして今はしゃがみこんで縄の先に大きな石を括り付けています。

(わたしはこえもでませんでした。)

私は声も出ませんでした。

(するとこんどはいどからぬるりとしろいてがのびてきたのです。)

すると今度は井戸からぬるりと白い手が伸びてきたのです。

(てはなにかをさぐるようにうごめいて、やがてちかくのあさなわをつかみました。)

手は何かを探るように蠢いて、やがて近くの麻縄を掴みました。

(ゆうじんはふかくあたまをたれて、もはやなんのはんのうもしめしません。)

友人は深く頭を垂れて、最早何の反応も示しません。

(なわをつかんだてはずるりずるりといしをたぐりよせていきます。)

縄を掴んだ手はずるりずるりと石を手繰り寄せて行きます。

(わたしはむちゅうでさけんだつもりでしたが、こえがでませんでした。)

私は夢中で叫んだつもりでしたが、声が出ませんでした。

(「あぁ・・・ａちゃんがつれていかれる・・！」)

「あぁ・・・Aちゃんが連れて行かれる・・！」

(そうおもったとき、けたたましくでんわのべるがなりました。)

そう思った時、けたたましく電話のベルが鳴りました。

(わたしはそのおととどうじに、しいてあったふとんにしりもちをつきました。)

私はその音と同時に、敷いてあった布団に尻餅をつきました。

(そのとたんにかなしばりのようだったからだがふとかるくなるのをかんじ、)

その途端に金縛りのようだった体がふと軽くなるのを感じ、

(きがつくとはだしでそとへとびだしていどのがわのゆうじんのところへかけよりました。)

気が付くと裸足で外へ飛び出して井戸の側の友人の所へ駆け寄りました。

(ほうしんじょうたいのかのじょをなんとかこやまではこびこみ、)

放心状態の彼女を何とか小屋まで運び込み、

(どれくらいよびかけていたでしょう。)

どれくらい呼びかけていたでしょう。

(しばらくするとゆうじんはわれにかえり、なきだしました。)

暫くすると友人は我に返り、泣き出しました。

(きょうふからときはなたれたわたしもいっしょになってなきだしながら、)

恐怖から解き放たれた私も一緒になって泣き出しながら、

(とりあえずだれかにたすけをもとめようとでんわをひっつかみました。)

とりあえず誰かに助けを求めようと電話を引っ掴みました。

(そのとたんわたしはしがみついていたゆうじんともども、またしてもふとんにしりもちをついたんです。)

その途端私はしがみついていた友人共々、又しても布団に尻餅をついたんです。

(じゅわきごとつかんだでんわきはがわだけで、)

受話器ごと掴んだ電話機はガワだけで、

(でんわせんがつながるどころかなかのきかいぶぶんがからっぽだったのです。)

電話線が繋がるどころか中の機械部分が空っぽだったのです。

(あとからきいたはなしによるとかいこうとうじ、なぜかこのいどにみをなげてじさつをはかる)

後から聞いた話によると開校当時、なぜかこの井戸に身を投げて自殺を図る

(せいとがあとをたたなかったため、うめたてようとこころみたのですがかんけいしゃが)

生徒が後を絶たなかった為、埋め立てようと試みたのですが関係者が

(あいついでなくなるなどのふこうがつづき、けっきょくはうめたてをだんねん。)

相次いで亡くなるなどの不幸が続き、結局は埋め立てを断念。

(かいちくをかさねていどがひとめにつかないようにしたそうです。)

改築を重ねて井戸が人目につかないようにしたそうです。

(それでもどこからともなくみなげをするひとがあらわれるので、)

それでも何処からともなく身投げをする人が現れるので、

(それをかんしするためにひとをおく「かんしごや」だせっちされたのですが、)

それを監視する為に人を置く「監視小屋」だ設置されたのですが、

(こやにざいちゅうしていたかんしやくのだんせいもいどにみなげをはかり、)

小屋に在駐していた監視役の男性も井戸に身投げを図り、

(こやといどがそのままほうちされるけっかになったのだということです。)

小屋と井戸がそのまま放置される結果になったのだという事です。

(「かーてんをあけるな」とちゅうこくしたでんわは、)

「カーテンを開けるな」と忠告した電話は、

(いったいどうやってかかってきたのでしょう？)

一体どうやって掛かってきたのでしょう？

(そしてかれは、はたしてそのかんしやくのだんせいそのひとだったのでしょうか。)

そして彼は、果たしてその監視役の男性その人だったのでしょうか。