夏目漱石「こころ」3-72

夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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7:遮ぎって(さえぎって)
8:手落り(てぬかり)
17:不意撃(ふいうち)
19:失なった(うしなった)
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今回もそれなりに長めです。
近頃はこれぐらいの量が普通になっていますね。
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問題文
(さんじゅうなな)
三十七
(「ふたりはめいめいのへやにひきとったぎりかおをあわせませんでした。)
「二人は各自の室に引き取ったぎり顔を合わせませんでした。
(けいのしずかなことはあさとおなじでした。)
Kの静かな事は朝と同じでした。
(わたくしもじっとかんがえこんでいました。)
私も凝と考え込んでいました。
(わたくしはとうぜんじぶんのこころをけいにうちあけるべきはずだとおもいました。)
私は当然自分の心をKに打ち明けるべき筈だと思いました。
(しかしそれにはもうじきがおくれてしまったというきもおこりました。)
然しそれにはもう時機が後れてしまったという気も起りました。
(なぜさっきけいのことばをさえぎって、こっちからぎゃくしゅうしなかったのか、)
何故先刻Kの言葉を遮ぎって、此方から逆襲しなかったのか、
(そこがひじょうなてぬかりのようにみえてきました。)
其所が非常な手落りのように見えて来ました。
(せめてけいのあとにつづいて、じぶんはじぶんのおもうとおりをそのばではなしてしまったら、)
責めてKの後に続いて、自分は自分の思う通りをその場で話してしまったら、
(まだよかったろうにともかんがえました。)
まだ好かったろうにとも考えました。
(けいのじはくにひとだんらくがついたいまとなって、こっちからまたおなじことをきりだすのは、)
Kの自白に一段落が付いた今となって、此方から又同じ事を切り出すのは、
(どうしあんしてもへんでした。)
どう思案しても変でした。
(わたくしはこのふしぜんにうちかつほうほうをしらなかったのです。)
私はこの不自然に打ち勝つ方法を知らなかったのです。
(わたくしのあたまはかいこんにゆられてぐらぐらしました。)
私の頭は悔恨に揺られてぐらぐらしました。
(わたくしはけいがふたたびしきりのふすまをあけて)
私はKが再び仕切の襖を開けて
(むこうからとっしんしてきてくれればいいとおもいました。)
向うから突進して来てくれれば好いと思いました。
(わたくしにいわせれば、さっきはまるでふいうちにあったもおなじでした。)
私に云わせれば、先刻はまるで不意撃に会ったも同じでした。
(わたくしにはけいにおうずるじゅんびもなにもなかったのです。)
私にはKに応ずる準備も何もなかったのです。
(わたくしはごぜんにうしなったものを、こんどはとりもどそうというしたごころをもっていました。)
私は午前に失なったものを、今度は取り戻そうという下心を持っていました。
(それでときどきめをあげて、ふすまをながめました。)
それで時々眼を上げて、襖を眺めました。
(しかしそのふすまはいつまでたってもひらきません。そうしてけいはえいきゅうにしずかなのです。)
然しその襖は何時まで経っても開きません。そうしてKは永久に静なのです。
(そのうちわたくしのあたまはだんだんこのしずかさにかきみだされるようになってきました。)
その内私の頭は段々この静かさに掻き乱されるようになって来ました。
(けいはいまふすまのむこうでなにをかんがえているだろうとおもうと、)
Kは今襖の向で何を考えているだろうと思うと、
(それがきになってたまらないのです。)
それが気になって堪らないのです。
(ふだんもこんなふうにおたがいがしきりいちまいをあいだにおいてだまりあっているばあいは)
不断もこんな風に御互が仕切一枚を間に置いて黙り合っている場合は
(しじゅうあったのですが、)
始終あったのですが、
(わたくしはけいがしずかであればあるほど、)
私はKが静であればある程、
(かれのそんざいをわすれるのがふつうのじょうたいだったのですから、)
彼の存在を忘れるのが普通の状態だったのですから、
(そのときのわたくしはよほどちょうしがくるっていたものとみなければなりません。)
その時の私は余程調子が狂っていたものと見なければなりません。
(それでいてわたくしはこっちからすすんでふすまをあけることができなかったのです。)
それでいて私は此方から進んで襖を開ける事が出来なかったのです。
(いったんいいそびれたわたくしは、)
一旦云いそびれた私は、
(またむこうからはたらきかけられるじきをまつよりほかにしかたがなかったのです。)
また向うから働らき掛けられる時機を待つより外に仕方がなかったのです。