夏目漱石「こころ」3-76

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-76
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
23:満干(みちひ)
23:高低(たかびく)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少し前の回にて句点を入れ忘れておりました。
訂正とご報告をして下さった方には感謝申し上げます。
度々申し訳ございません。

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問題文

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(さんじゅうきゅう)

三十九

(「けいのなまへんじはよくじつになっても、そのよくじつになっても、)

「Kの生返事は翌日になっても、その翌日になっても、

(かれのたいどによくあらわれていました。)

彼の態度によく現われていました。

(かれはじぶんからすすんでれいのもんだいにふれようとするけしきを)

彼は自分から進んで例の問題に触れようとする気色を

(けっしてみせませんでした。)

決して見せませんでした。

(もっともきかいもなかったのです。)

尤も機会もなかったのです。

(おくさんとおじょうさんがそろっていちにちうちをあけでもしなければ、)

奥さんと御嬢さんが揃って一日宅を空けでもしなければ、

(ふたりはゆっくりおちついて、そういうことをはなしあうわけにもいかないのですから。)

二人はゆっくり落付いて、そういう事を話し合う訳にも行かないのですから。

(わたくしはそれをよくこころえていました。)

私はそれを能く心得ていました。

(こころえていながら、へんにいらいらしだすのです。)

心得ていながら、変にいらいらし出すのです。

(そのけっかはじめはむこうからくるのをまつつもりで、あんによういをしていたわたくしが、)

その結果始めは向うから来るのを待つ積りで、暗に用意をしていた私が、

(おりがあったらこっちでくちをきろうとけっしんするようになったのです。)

折があったら此方で口を切ろうと決心するようになったのです。

(どうじにわたくしはだまってうちのもののようすをかんさつしてみました。)

同時に私は黙って家のものの様子を観察して見ました。

(しかしおくさんのたいどにもおじょうさんのそぶりにも、)

然し奥さんの態度にも御嬢さんの素振にも、

(べつにへいぜいとかわったてんはありませんでした。)

別に平生と変った点はありませんでした。

(けいのじはくはたんにわたくしだけにかぎられたじはくで、かんじんのとうにんにも、)

Kの自白は単に私だけに限られた自白で、肝心の当人にも、

(またそのかんとくしゃたるおくさんにも、まだつうじていないのはたしかでした。)

又その監督者たる奥さんにも、まだ通じていないのは慥でした。

(そうかんがえたときわたくしはすこしあんしんしました。)

そう考えた時私は少し安心しました。

(それでむりにきかいをこしらえて、わざとらしくはなしをもちだすよりは、)

それで無理に機会を拵えて、わざとらしく話を持ち出すよりは、

(しぜんのあたえてくれるものをとりにがさないようにするほうがよかろうとおもって、)

自然の与えてくれるものを取り逃がさないようにする方が好かろうと思って、

など

(れいのもんだいにはしばらくてをつけずにそっとしておくことにしました。)

例の問題にはしばらく手を着けずにそっとして置く事にしました。

(こういってしまえばたいへんかんたんにきこえますが、そうしたこころのけいかには、)

こう云ってしまえば大変簡単に聞こえますが、そうした心の経過には、

(しおのみちひとおなじように、いろいろのたかびくがあったのです。)

潮の満干と同じように、色々の高低があったのです。

(わたくしはけいのうごかないようすをみて、それにさまざまのいみをつけくわえました。)

私はKの動かない様子を見て、それにさまざまの意味を付け加えました。

(おくさんとおじょうさんのげんごどうさをかんさつして、)

奥さんと御嬢さんの言語動作を観察して、

(ふたりのこころがはたしてそこにあらわれているとおりなのだろうかとうたがってもみました。)

二人の心が果して其所に現われている通なのだろうかと疑っても見ました。

(そうしてにんげんのむねのなかにそうちされたふくざつなきかいが、とけいのはりのように、)

そうして人間の胸の中に装置された複雑な器械が、時計の針のように、

(めいりょうにいつわりなく、ばんじょうのすうじをさしえるものだろうかとかんがえました。)

明瞭に偽りなく、盤上の数字を指し得るものだろうかと考えました。

(ようするにわたくしはおなじことをこうもとり、ああもとりしたあげく、)

要するに私は同じ事をこうも取り、ああも取りした揚句、

(ようやくここにおちついたものとおもってください。)

漸く此処に落ち付いたものと思って下さい。

(さらにむずかしくいえば、おちつくなどということばは、)

更にむずかしく云えば、落ち付くなどという言葉は、

(このさいけっしてつかわれたぎりでなかったのかもしれません。)

この際決して使われた義理でなかったのかも知れません。

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