夏目漱石「こころ」3-79

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-79
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
9:陥いった(おちいった)
14:憚かる(はばかる)
17:胸の裏(むねのうち)
19:何んで(なんで)
24:隙かさず(すかさず)
27:退ぞこう(しりぞこう)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それなりの長さとなっております。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8344 8.4 99.0% 224.7 1894 19 34 2024/08/25
2 ヤス 7533 7.8 96.4% 245.7 1921 70 34 2024/10/21
3 デコポン 7113 7.2 97.9% 261.9 1903 40 34 2024/09/30
4 BEASTななせ 6793 S++ 7.1 94.9% 273.5 1962 104 34 2024/10/28
5 すもさん 6501 S+ 6.6 97.2% 298.4 1997 57 34 2024/10/06

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問題文

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(ふたりはべつにいくところもなかったので、たつおかちょうからいけのはたへでて、)

二人は別に行く所もなかったので、龍岡町から池の端へ出て、

(うえののこうえんのなかへはいりました。)

上野の公園の中へ入りました。

(そのときかれはれいのじけんについて、とつぜんむこうからくちをきりました。)

その時彼は例の事件について、突然向うから口を切りました。

(ぜんごのようすをそうごうしてかんがえると、)

前後の様子を綜合して考えると、

(けいはそのためにわたくしをわざわざさんぽにひっぱりだしたらしいのです。)

Kはそのために私をわざわざ散歩に引っ張出したらしいのです。

(けれどもかれのたいどはまだじっさいてきのほうめんへむかってちっともすすんでいませんでした。)

けれども彼の態度はまだ実際的の方面へ向ってちっとも進んでいませんでした。

(かれはわたくしにむかって、ただばくぜんと、どうおもうというのです。)

彼は私に向って、ただ漠然と、どう思うと云うのです。

(どうおもうというのは、)

どう思うというのは、

(そうしたれんあいのふちにおちいったかれを、)

そうした恋愛の淵に陥いった彼を、

(どんなめでわたくしがながめるかというしつもんなのです。)

どんな眼で私が眺めるかという質問なのです。

(いちごんでいうと、かれはげんざいのじぶんについて、わたくしのひはんをもとめたいようなのです。)

一言でいうと、彼は現在の自分について、私の批判を求めたい様なのです。

(そこにわたくしはかれのへいぜいとことなるてんをたしかにみとめることができたとおもいました。)

其所に私は彼の平生と異なる点を確かに認める事が出来たと思いました。

(たびたびくりかえすようですが、)

度々繰り返すようですが、

(かれのてんせいはひとのおもわくをはばかるほどよわくできあがってはいなかったのです。)

彼の天性は他の思わくを憚かる程弱く出来上ってはいなかったのです。

(こうとしんじたらひとりでどんどんすすんでいくだけのどきょうもあり)

こうと信じたら一人でどんどん進んで行くだけの度胸もあり

(ゆうきもあるおとこなのです。)

勇気もある男なのです。

(ようけじけんでそのとくしょくをつよくむねのうちにほりつけられたわたくしが、)

養家事件でその特色を強く胸の裏に彫り付けられた私が、

(これはようすがちがうとあきらかにいしきしたのはとうぜんのけっかなのです。)

これは様子が違うと明らかに意識したのは当然の結果なのです。

(わたくしがけいにむかって、このさいなんでわたくしのひひょうがひつようなのかとたずねたとき、)

私がKに向って、この際何んで私の批評が必要なのかと尋ねた時、

(かれはいつもにもにないしょうぜんとしたくちょうで、)

彼は何時もにも似ない悄然とした口調で、

など

(じぶんのよわいにんげんであるのがじっさいはずかしいといいました。)

自分の弱い人間であるのが実際耻ずかしいと云いました。

(そうしてまよっているからじぶんでじぶんがわからなくなってしまったので、)

そうして迷っているから自分で自分が分らなくなってしまったので、

(わたくしにこうへいなひひょうをもとめるよりほかにしかたがないといいました。)

私に公平な批評を求めるより外に仕方がないと云いました。

(わたくしはすかさずまようといういみをききただしました。)

私は隙かさず迷うという意味を聞き糺しました。

(かれはすすんでいいかしりぞいていいか、それにまようのだとせつめいしました。)

彼は進んで可いか退いて可いか、それに迷うのだと説明しました。

(わたくしはすぐいっぽさきへでました。)

私はすぐ一歩先へ出ました。

(そうしてしりぞこうとおもえばしりぞけるのかとかれにききました。)

そうして退ぞこうと思えば退ぞけるのかと彼に聞きました。

(するとかれのことばがそこでふいにいきづまりました。)

すると彼の言葉が其所で不意に行き詰りました。

(かれはただくるしいといっただけでした。)

彼はただ苦しいと云っただけでした。

(じっさいかれのひょうじょうにはくるしそうなところがありありとみえていました。)

実際彼の表情には苦しそうなところがありありと見えていました。

(もしあいてがおじょうさんでなかったならば、わたくしはどんなにかれにつごうのいいへんじを、)

もし相手が御嬢さんでなかったならば、私はどんなに彼に都合の好い返事を、

(そのかわききったかおのうえにじうのごとくそそいでやったかわかりません。)

その渇き切った顔の上に慈雨の如く注いで遣ったか分りません。

(わたくしはそのくらいのうつくしいどうじょうをもってうまれてきたにんげんとじぶんながらしんじています。)

私はその位の美くしい同情を有って生れて来た人間と自分ながら信じています。

(しかしそのときのわたくしはちがっていました。)

然しその時の私は違っていました。

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