夏目漱石「こころ」3-80

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-80
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
10:彷徨(ほうこう)
11:一打(ひとうち)
13:改たまった(あらたまった)
16:羞耻(しゅうち)
28:好(すき)
34:妨害(さまたげ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「3-73」において制限時間付きになっておりましたことをお詫び致します。
ご報告して下さる皆様には感謝申し上げます。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8564 8.6 98.4% 259.2 2255 35 40 2024/08/26
2 BEASTななせ 7250 7.5 96.4% 312.1 2350 87 40 2024/10/28
3 デコポン 7037 7.2 97.3% 313.3 2266 61 40 2024/09/30
4 すもさん 6656 S+ 6.7 97.9% 349.9 2378 49 40 2024/10/06
5 饅頭餅美 5532 A 5.8 94.2% 386.6 2279 140 40 2024/10/19

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問題文

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(よんじゅういち)

四十一

(「わたくしはちょうどたりゅうじあいでもするひとのようにけいをちゅういしてみていたのです。)

「私は丁度他流試合でもする人のようにKを注意して見ていたのです。

(わたくしは、わたくしのめ、わたくしのこころ、わたくしのからだ、)

私は、私の眼、私の心、私の身体、

(すべてわたくしというなのつくものをごぶのすきまもないようによういして、)

すべて私という名の付くものを五分の隙間もないように用意して、

(けいにむかったのです。)

Kに向ったのです。

(つみのないけいはあなだらけというよりむしろあけはなしとひょうするのがてきとうなくらいに)

罪のないKは穴だらけというより寧ろ明け放しと評するのが適当な位に

(ぶようじんでした。)

無用心でした。

(わたくしはかれじしんのてから、かれのほかんしているようさいのちずをうけとって、)

私は彼自身の手から、彼の保管している要塞の地図を受取って、

(かれのめのまえでゆっくりそれをながめることができたもおなじでした。)

彼の眼の前でゆっくりそれを眺める事が出来たも同じでした。

(けいがりそうとげんじつのあいだにほうこうしてふらふらしているのをはっけんしたわたくしは、)

Kが理想と現実の間に彷徨してふらふらしているのを発見した私は、

(ただひとうちでかれをたおすことができるだろうというてんにばかりめをつけました。)

ただ一打で彼を倒す事が出来るだろうという点にばかり目を着けました。

(そうしてすぐかれのきょにつけこんだのです。)

そうしてすぐ彼の虚に付け込んだのです。

(わたくしはかれにむかってきゅうにげんしゅくなあらたまったたいどをしめしだしました。)

私は彼に向って急に厳粛な改たまった態度を示し出しました。

(むろんさくりゃくからですが、)

無論策略からですが、

(そのたいどにそうおうするくらいなきんちょうしたきぶんもあったのですから、)

その態度に相応する位な緊張した気分もあったのですから、

(じぶんにこっけいだのしゅうちだのをかんずるよゆうはありませんでした。)

自分に滑稽だの羞耻だのを感ずる余裕はありませんでした。

(わたくしはまず「せいしんてきにこうじょうしんのないものはばかだ」といいはなちました。)

私は先ず『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』と云い放ちました。

(これはふたりでぼうしゅうをりょこうしているさい、けいがわたくしにむかってつかったことばです。)

これは二人で房州を旅行している際、Kが私に向って使った言葉です。

(わたくしはかれのつかったとおりを、かれとおなじようなくちょうで、ふたたびかれになげかえしたのです。)

私は彼の使った通りを、彼と同じような口調で、再び彼に投げ返したのです。

(しかしけっしてふくしゅうではありません。)

然し決して復讐ではありません。

など

(わたくしはふくしゅういじょうにざんこくないみをもっていたということをじはくします。)

私は復讐以上に残酷な意味を有っていたという事を自白します。

(わたくしはそのいちごんでけいのまえによこたわるこいのゆくてをふさごうとしたのです。)

私はその一言でKの前に横たわる恋の行手を塞ごうとしたのです。

(けいはしんしゅうでらにうまれたおとこでした。)

Kは真宗寺に生れた男でした。

(しかしかれのけいこうはちゅうがくじだいからけっしてせいけのしゅうしにちかいものではなかったのです。)

然し彼の傾向は中学時代から決して生家の宗旨に近いものではなかったのです。

(きょうぎじょうのくべつをよくしらないわたくしが、)

教義上の区別をよく知らない私が、

(こんなこというしかくにとぼしいのはしゅうちしていますが、)

こんな事をいう資格に乏しいのは周知していますが、

(わたくしはただなんにょにかんけいしたてんについてのみ、そうみとめていたのです。)

私はただ男女に関係した点についてのみ、そう認めていたのです。

(けいはむかしからしょうじんということばがすきでした。)

Kは昔しから精進という言葉が好でした。

(わたくしはそのことばのなかに、)

私はその言葉の中に、

(きんよくといういみもこもっているのだろうとかいしゃくしていました。)

禁慾という意味も籠っているのだろうと解釈していました。

(しかしあとでじっさいにきいてみると、)

然し後で実際に聞いて見ると、

(それよりもまだげんじゅうないみがふくまれているので、わたくしはおどろきました。)

それよりもまだ厳重な意味が含まれているので、私は驚ろきました。

(みちのためにはすべてをぎせいにすべきものだというのがかれのだいいちしんじょうなのですから、)

道のためには凡てを犠牲にすべきものだと云うのが彼の第一信条なのですから、

(せつよくやきんよくはむろん、たといよくをはなれたこいそのものでもみちのさまたげになるのです。)

接慾や禁慾は無論、たとい慾を離れた恋そのものでも道の妨害になるのです。

(けいがじかつせいかつをしているじぶんに、)

Kが自活生活をしている時分に、

(わたくしはよくかれからかれのしゅちょうをきかされたのでした。)

私はよく彼から彼の主張を聞かされたのでした。

(そのころからおじょうさんをおもっていたわたくしは、)

その頃から御嬢さんを思っていた私は、

(いきおいどうしてもかれにはんたいしなければならなかったのです。)

勢いどうしても彼に反対しなければならなかったのです。

(わたくしがはんたいすると、かれはいつでもきのどくそうなかおをしました。)

私が反対すると、彼は何時でも気の毒そうな顔をしました。

(そこにはどうじょうよりもぶべつのほうがよけいにあらわれていました。)

其所には同情よりも侮蔑の方が余計に現われていました。

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