夏目漱石「こころ」3-83

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-83
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
13:漸やく(ようやく)
17:独言(ひとりごと)
19:暖たかな(あたたかな)
21:蒼味(あおみ)
26:体の(たいの)
26:温味(あたたかみ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8245 8.3 98.8% 234.8 1958 22 37 2024/08/29
2 ヤス 7684 8.0 95.8% 246.2 1977 85 37 2024/10/21
3 デコポン 6576 S+ 6.8 96.6% 289.2 1970 68 37 2024/10/01
4 BEASTななせ 6438 S 6.8 94.1% 296.8 2037 126 37 2024/10/28
5 すもさん 6124 A++ 6.3 96.3% 323.6 2059 77 37 2024/10/07

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問題文

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(「やめてくれって、ぼくがいいだしたことじゃない、)

『止めてくれって、僕が云い出した事じゃない、

(もともときみのほうからもちだしたはなしじゃないか。)

もともと君の方から持ち出した話じゃないか。

(しかしきみがやめたければ、やめてもいいが、)

然し君が止めたければ、止めても可いが、

(ただくちのさきでやめたってしかたがあるまい。)

ただ口の先で止めたって仕方があるまい。

(きみのこころでそれをやめるだけのかくごがなければ、)

君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ、

(いったいきみはきみのはんせいのしゅちょうをどうするつもりなのか」)

一体君は君の半生の主張をどうする積りなのか』

(わたくしがこういったとき、)

私がこう云った時、

(せいのたかいかれはしぜんとわたくしのまえにいしゅくしてちいさくなるようなかんじがしました。)

脊の高い彼は自然と私の前に委縮して小さくなるような感じがしました。

(かれはいつもはなすとおりすこぶるごうじょうなおとこでしたけれども、)

彼はいつも話す通り頗る強情な男でしたけれども、

(いっぽうではまたひといちばいのしょうじきものでしたから、)

一方では又人一倍の正直者でしたから、

(じぶんのむじゅんなどをひどくひなんされるばあいには、)

自分の矛盾などをひどく非難される場合には、

(けっしてへいきではいられないたちだったのです。)

決して平気ではいられない質だったのです。

(わたくしはかれのようすをみてようやくあんしんしました。)

私は彼の様子を見て漸やく安心しました。

(するとかれはそつぜん「かくご?」とききました。)

すると彼は卒然『覚悟?』と聞きました。

(そうしてわたくしがまだなんともこたえないさきに、)

そうして私がまだ何とも答えない先に、

(「かくごーーかくごならないこともない」とつけくわえました。)

『覚悟ーー覚悟ならない事もない』と付け加えました。

(かれのちょうしはひとりごとのようでした。またゆめのなかのことばのようでした。)

彼の調子は独言のようでした。又夢の中の言葉のようでした。

(ふたりはそれぎりはなしをきりあげて、こいしがわのやどのほうにあしをむけました。)

二人はそれぎり話を切り上げて、小石川の宿の方に足を向けました。

(わりあいにかぜのないあたたかなひでしたけれども、)

割合に風のない暖たかな日でしたけれども、

(なにしろふゆのことですから、こうえんのなかはさびしいものでした。)

何しろ冬の事ですから、公園のなかは淋しいものでした。

など

(ことにしもにうたれてあおみをうしなったすぎのこだちのちゃかっしょくが、)

ことに霜に打たれて蒼味を失った杉の木立の茶褐色が、

(うすぐろいそらのなかに、こずえをならべてそびえているのをふりかえってみたときは、)

薄黒い空の中に、梢を並べて聳えているのを振り返ってみた時は、

(さむさがせなかへかじりついたようなこころもちがしました。)

寒さが脊中へ噛り付いたような心持がしました。

(われわれはゆうぐれのほんごうだいをいそぎあしでどしどしとおりぬけて、)

我々は夕暮の本郷台を急ぎ足でどしどし通り抜けて、

(またむこうのおかへあがるべくこいしがわのたにへおりたのです。)

又向うの岡へ上るべく小石川の谷へ下りたのです。

(わたくしはそのころになって、ようやくがいとうのしたにたいのあたたかみをかんじだしたくらいです。)

私はその頃になって、漸やく外套の下に体の温味を感じ出した位です。

(いそいだためでもありましょうが、)

急いだためでもありましょうが、

(われわれはかえりみちにはほとんどくちをききませんでした。)

我々は帰り路には殆んど口を聞きませんでした。

(うちへかえってしょくたくにむかったとき、おくさんはどうしておそくなったのかとたずねました。)

宅へ帰って食卓に向った時、奥さんはどうして遅くなったのかと尋ねました。

(わたくしはけいにさそわれてうえのへいったとこたえました。)

私はKに誘われて上野へ行ったと答えました。

(おくさんはこのさむいのにといっておどろいたようすをみせました。)

奥さんはこの寒いのにと云って驚ろいた様子を見せました。

(おじょうさんはうえのになにがあったのかとききたがります。)

御嬢さんは上野に何があったのかと聞きたがります。

(わたくしはなにもないが、たださんぽしたのだというへんじだけしておきました。)

私は何もないが、ただ散歩したのだという返事だけして置きました。

(へいぜいからむくちなけいは、いつもよりなおだまっていました。)

平生から無口なKは、いつもより猶黙っていました。

(おくさんがはなしかけても、おじょうさんがわらっても、ろくなあいさつはしませんでした。)

奥さんが話しかけても、御嬢さんが笑っても、碌な挨拶はしませんでした。

(それからめしをのみこむようにかきこんで、)

それから飯を呑み込むように掻き込んで、

(わたくしがまだせきをたたないうちに、じぶんのへやにひきとりました。)

私がまだ席を立たないうちに、自分の室に引き取りました。

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