夏目漱石「こころ」3-88
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
12:頓着(とんじゃく)
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | BEASTななせ | 6712 | S+ | 7.0 | 94.9% | 208.7 | 1480 | 79 | 27 | 2024/10/29 |
2 | mame | 5358 | B++ | 5.5 | 96.2% | 255.3 | 1424 | 56 | 27 | 2024/12/15 |
3 | ぶす | 5065 | B+ | 5.5 | 91.4% | 252.9 | 1413 | 132 | 27 | 2024/10/30 |
4 | やまちゃん | 4523 | C++ | 4.6 | 96.9% | 303.5 | 1418 | 45 | 27 | 2024/12/06 |
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問題文
(よんじゅうご)
四十五
(「けいからきかされたうちあけばなしを、おくさんにつたえるきのなかったわたくしは、)
「Kから聞かされた打ち明け話を、奥さんに伝える気のなかった私は、
(「いいえ」といってしまったあとで、すぐじぶんのうそをこころよからずかんじました。)
『いいえ』といってしまった後で、すぐ自分の嘘を快からず感じました。
(しかたがないから、べつだんなにもたのまれたおぼえはないのだから、)
仕方がないから、別段何も頼まれた覚はないのだから、
(けいにかんするようけんではないのだといいなおしました。)
Kに関する用件ではないのだと云い直しました。
(おくさんは「そうですか」といって、あとをまっています。)
奥さんは『そうですか』と云って、後を待っています。
(わたくしはどうしてもきりださなければならなくなりました。)
私はどうしても切り出さなければならなくなりました。
(わたくしはとつぜん「おくさん、おじょうさんをわたくしにください」といいました。)
私は突然『奥さん、御嬢さんを私に下さい』と云いました。
(おくさんはわたくしのよきしてかかったほどおどろいたようすもみせませんでしたが、)
奥さんは私の予期してかかった程驚ろいた様子も見せませんでしたが、
(それでもしばらくへんじができなかったものとみえて、)
それでも少時返事が出来なかったものと見えて、
(だまってわたくしのかおをながめていました。)
黙って私の顔を眺めていました。
(いちどいいだしたわたくしは、いくらかおをみられても、それにとんじゃくしていられません。)
一度云い出した私は、いくら顔を見られても、それに頓着していられません。
(「ください、ぜひください」といいました。)
『下さい、是非下さい』と云いました。
(「わたくしのつまとしてぜひください」といいました。)
『私の妻として是非下さい』と云いました。
(おくさんはとしをとっているだけに、わたくしよりもずっとおちついていました。)
奥さんは年を取っているだけに、私よりもずっと落付いていました。
(「あげてもいいが、あんまりきゅうじゃありませんか」ときくのです。)
『上げてもいいが、あんまり急じゃありませんか』と聞くのです。
(わたくしが「きゅうにもらいたいのだ」とすぐこたえたらわらいだしました。)
私が『急に貰いたいのだ』とすぐ答えたら笑い出しました。
(そうして「よくかんがえたのですか」とねんをおすのです。)
そうして『よく考えたのですか』と念を押すのです。
(わたくしはいいだしたのはとつぜんでも、)
私は云い出したのは突然でも、
(かんがえたのはとつぜんでないというわけをつよいことばでせつめいしました。)
考えたのは突然でないという訳を強い言葉で説明しました。
(それからまだふたつみっつのもんどうがありましたが、わたくしはそれをわすれてしまいました。)
それから未だ二つ三つの問答がありましたが、私はそれを忘れてしまいました。
(おとこのようにはっきりしたところのあるおくさんは、)
男のように判然したところのある奥さんは、
(ふつうのおんなとちがってこんなばあいにはたいへんこころもちよくはなしのできるひとでした。)
普通の女と違ってこんな場合には大変心持よく話の出来る人でした。
(「よござんす。さしあげましょう」といいました。)
『宜ござんす。差し上げましょう』と云いました。
(「さしあげるなんていばったくちのきけるきょうぐうではありません。)
『差し上げるなんて威張った口の利ける境遇ではありません。
(どうぞもらってください。ごぞんじのとおりちちおやのないあわれなこです」と)
どうぞ貰って下さい。御存じの通り父親のない憐れな子です』と
(あとではむこうからたのみました。)
後では向うから頼みました。