怖い話《ケイドロ》

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問題文

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(さいきんのしょうがっこうはぶがいしゃのたちいりをかなりきびしくせいげんしているようで、)

最近の小学校は部外者の立ち入りをかなり厳しく制限しているようで、

(こうもんまえにけいびいんがたっているところもあり、)

校門前に警備員が立っている所もあり、

(とうぜんこうていにはこどもたちかきょうしのすがたしかない。)

当然校庭には子供たちか教師の姿しかない。

(でもぼくがこどものころは、こうていまでならぶがいしゃでもあたりまえのようにはいることができた。)

でも僕が子供の頃は、校庭までなら部外者でも当たり前の様に入る事が出来た。

(なので、ほうかごやきゅうじつにはちゅうがくせいがさっかーをしていたり、)

なので、放課後や休日には中学生がサッカーをしていたり、

(たまにせいじんしているであろうおとなまでぼーるをつかってあそんでいることもあった。)

たまに成人しているであろう大人までボールを使って遊んでいる事もあった。

(しょうがっこう4ねんせいのぼくたちは、さっかーやばすけっとにもはまっていたけれど、)

小学校4年生の僕達は、サッカーやバスケットにもハマっていたけれど、

(だんじょであそべるけいどろがちょっとしたぶーむになっていた。)

男女で遊べるケイドロがちょっとしたブームになっていた。

(ぼーるあそびはだんじょでじつりょくさがでてしまいがちだけど、)

ボール遊びは男女で実力差が出てしまいがちだけど、

(かけっこのるいならしんたいのうりょくのさなんてほとんどかんけいなかったし、)

かけっこの類なら身体能力の差なんてほとんど関係なかったし、

(かちまけというより、げーむせいをたのしんでいたんだとおもう。)

勝ち負けというより、ゲーム性を楽しんでいたんだと思う。

(ゆうめいなあそびなのでほとんどのひとがるーるをしっているだろうけれど、)

有名な遊びなのでほとんどの人がルールを知っているだろうけれど、

(けいどろはけいさつちーむとどろぼうちーむにわかれてやるおにごっこだ。)

ケイドロは警察チームと泥棒チームに分かれてやる鬼ごっこだ。

(ちいきさはあるかもしれないけれど、きほんてきなるーるは、)

地域差はあるかもしれないけれど、基本的なルールは、

(けいさつちーむにたっちされたどろぼうはけいさつのじんちにかくりされ、)

警察チームにタッチされた泥棒は警察の陣地に隔離され、

(どろぼうはとらえられたなかまにたっちするとかれらをかいほうすることができるという、)

泥棒は捉えられた仲間にタッチすると彼らを開放する事が出来るという、

(しんぷるながらもなかなかおもしろみのあるげーむだ。)

シンプルながらもなかなか面白味のあるゲームだ。

(あるひ、いつものようにみんなでけいどろをしていると、)

ある日、いつものようにみんなでケイドロをしていると、

(みしらぬおとながこうていにはいってきた。)

見知らぬ大人が校庭に入ってきた。

(30だいこうはんくらいのみためで、たいかくがよく、ぼうずあたまにあごひげをはやした、)

30代後半くらいの見た目で、体格が良く、坊主頭に顎髭を生やした、

など

(ちょっとこわそうなかんじのだんせいだった。)

ちょっと怖そうな感じの男性だった。

(ただ、しらないおとながこうていにいるこうけいはめずらしくもないので、すぐにだれも)

ただ、知らない大人が校庭にいる光景は珍しくもないので、すぐに誰も

(きにしなくなり、にげまわるどろぼうをけいさつがおいかけまわす。)

気にしなくなり、逃げ回る泥棒を警察が追いかけ回す。

(そのおとこはてつぼうのまえにすわり、ぼくらがはしりまわっているのをしばらくみていた。)

その男は鉄棒の前に座り、僕らが走り回っているのを暫く見ていた。

(20ぷんほどして、ふいにおとこはたちあがった。)

20分程して、ふいに男は立ち上がった。

(はしりつかれてしょうきゅうししているぼくらのところにきて「おれもまぜてくれよ」といった。)

走り疲れて小休止している僕らの所に来て「俺も混ぜてくれよ」と言った。

(ぼくらのちゅうしんてきなじんぶつだったじゅんやというだんしせいとは「いいよ」とむかえいれるが、)

僕らの中心的な人物だった淳也という男子生徒は「いいよ」と迎え入れるが、

(ぼくはひややかなめでかれらをみていた。)

僕は冷ややかな目で彼らを見ていた。

(ふつうにかんがえたらみしらぬおとなをさんかさせるなんてありえないことだけど、)

普通に考えたら見知らぬ大人を参加させるなんてありえない事だけど、

(obであるちゅうがくせいやこうこうせいがたまにふらっとあそびにきていっしょにさっかーをすることも)

OBの中学生や高校生がたまにふらっと遊びに来て一緒にサッカーをする事も

(おおかったので、しらないひとにたいするけいかいしんはかなりうすかったんだとおもう。)

多かったので、知らない人に対する警戒心はかなり薄かったんだと思う。

(ほかのみんなもそのおとこをうけいれ、げーむはさいかいされる。)

他のみんなもその男を受け入れ、ゲームは再開される。

(おとなのあしにかてるわけなんかないとおもいきやどろぼうちーむにはいったおとこは)

大人の足に勝てるわけなんか無いと思いきや泥棒チームに入った男は

(おとなにしてはあしがおそく、すぐにたっちされてしまう。)

大人にしては足が遅く、すぐにタッチされてしまう。

(じんちをまもるやくめをまかされていたぼくのところにきて、)

陣地を守る役目を任されていた僕の所に来て、

(「いやー、つかまっちゃったよ。こどもはあしがはやいねー」とあごひげをなでながら、)

「いやー、捕まっちゃったよ。子供は足が速いねー」と顎鬚を撫でながら、

(ぼくのすぐうしろのじめんにかかれたえんのなかにはいる。)

僕のすぐ後ろの地面に書かれた円の中に入る。

(ひとみしりのぼくは、しょうじきかなりいごこちがわるくて、だれかにやくわりを)

人見知りの僕は、正直かなり居心地が悪くて、誰かに役割を

(かわってほしかったけれど、いますぐかわるのはなんかろこつすぎてかんじがわるいし、)

変わってほしかったけれど、今すぐ変わるのはなんか露骨すぎて感じが悪いし、

(もうすこしがまんしてからこえをかけようと、ときがすぎるのをむしんでまつ。)

もう少し我慢してから声を掛けようと、時が過ぎるのを無心で待つ。

(「なぁ、いえどこにあんの?」)

「なぁ、家どこにあんの?」

(とつぜんかたにおおきなてがのせられ、たばこくさいいきがみみにかかる。)

突然肩に大きな手が乗せられ、煙草臭い息が耳にかかる。

(「きんじょろ?かぞくはいえにいるのか?」)

「近所ろ?家族は家にいるのか?」

(しつもんのいとがわからず、おそるおそるふりかえると、)

質問の意図が分からず、恐る恐る振り返ると、

(おとこはにやにやとげびたえみをうかべていた。)

男はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべていた。

(ぼくはぞっとして「みんないます」といった。)

僕はゾッとして「みんないます」と言った。

(すると、たいみんぐよく、ぽつぽつとあめがふりだす。)

すると、タイミングよく、ポツポツと雨が降り出す。

(そういえばきょうはゆうがたからあめだとてんきよほうでいっていたのをおもいだし、)

そういえば今日は夕方から雨だと天気予報で言っていたのを思い出し、

(かさをもってきていないことにもきづく。)

傘を持ってきていない事にも気付く。

(「ほんふりになるまえにかえろーぜ」)

「本降りになる前に帰ろーぜ」

(じゅんやのいけんにみんなさんせいし、さっかーごーるのねっとにかけていた)

淳也の意見にみんな賛成し、サッカーゴールのネットにかけていた

(ぽしぇっとなどのにもつをそれぞれてにとり、かえるじゅんびをする。)

ポシェットなどの荷物をそれぞれ手に取り、帰る準備をする。

(そして、かばんににもつをつめこんでいるぼくのみみもとでおとこはいう。)

そして、カバンに荷物を詰め込んでいる僕の耳元で男は言う。

(「おれがいっしょにかえってやるからさ。ふたりでかえろう」)

「俺が一緒に帰ってやるからさ。二人で帰ろう」

(ぼくのきょうふしんはげんかいちにたっし、ひめいをあげてしまいそうになるけれど、)

僕の恐怖心は限界値に達し、悲鳴をあげてしまいそうになるけれど、

(おとこのめがわらっていないのにきづくと、ひめいではなくなみだがこぼれてしまう。)

男の目が笑っていないのに気付くと、悲鳴ではなく涙が零れてしまう。

(「ほかのやつにはおれがおくってくれるからさきにかえっていいよっていえ」)

「他の奴には俺が送ってくれるから先に帰っていいよって言え」

(ぼくのかたにおかれたおとこのては、じょじょにちからをましていき、)

僕の肩に置かれた男の手は、徐々に力を増していき、

(かたのほねがおれるんじゃないかってくらいつよくにぎられる。)

肩の骨が折れるんじゃないかってくらい強く握られる。

(もちろんそんなじょうきょうでことわれるはずなんてなくて、)

勿論そんな状況で断れるはずなんてなくて、

(ぼくはなみだごえで「おじさんとかえるからさきにいって」とみんなにつたえる。)

僕は涙声で「おじさんと帰るから先に行って」とみんなに伝える。

(ぼくはこうていにのこされ、おとこは「よし、いこうか」とぼくのてをにぎりしめる。)

僕は校庭に残され、男は「よし、行こうか」と僕の手を握りしめる。

(ひきずるようにこうもんからつれだされ、じたくとはぜんぜんちがうほうこうに)

引き摺るように校門から連れ出され、自宅とは全然違う方向に

(むかっているのにきづいたとき、おとこのしたがぼくのくちびるをなめまわしはじめていた。)

向かっているのに気付いた時、男の下が僕の唇を舐め回し始めていた。

(こんらんし、こえがでせない。)

混乱し、声が出せない。

(さきほどつよくつかまれたかたはまだいたくて、たぶんさからったらころされるとおもった。)

先程強く掴まれた肩はまだ痛くて、多分逆らったら殺されると思った。

(かみのけをつかまれ、うすぐらいこうえんにつれこまれたぼくは、)

髪の毛を掴まれ、薄暗い公園に連れ込まれた僕は、

(これからなにがおこるのかわからないこわさにしっきんしてしまう。)

これから何が起こるのか分からない怖さに失禁してしまう。

(でも、ぼくはそれいじょうなにもされなかった。)

でも、僕はそれ以上何もされなかった。

(ふくすうにんのきょうしがおいかけてきてたすけだしてくれたからだ。)

複数人の教師が追いかけてきて助けだしてくれたからだ。

(ぼくのようすがおかしいことにきづいたじゅんやは、かえったふりをして、)

僕の様子がおかしい事に気付いた淳也は、帰ったふりをして、

(まだしょくいんしつにのこっていたせんせいにじょうきょうをつたえてくれたらしい。)

まだ職員室に残っていた先生に状況を伝えてくれたらしい。

(せんせいたちはけいさつにもつうほうし、だんせいきょうしはぜんいんでぼくをついせきし、)

先生達は警察にも通報し、男性教師は全員で僕を追跡し、

(かんいっぱつぼくはたすけだされたというわけだった。)

間一髪僕は助け出されたという訳だった。

(さすがにぶがわるいとおもったのか、けいどろのときとはくらべものにならないはやさで)

流石に分が悪いと思ったのか、ケイドロの時とは比べ物にならない速さで

(おとこはにげさり、ぼくはぶじきゅうしゅつされたけど、)

男は逃げ去り、僕は無事救出されたけど、

(そのひからおとなのだんせいをみるとひやあせがとまらなくなってしまう。)

その日から大人の男性を見ると冷や汗が止まらなくなってしまう。

(いちねんがたって、すこしずつそのとらうまもきえはじめたころに、)

一年が経って、少しずつそのトラウマも消え始めた頃に、

(あのときのおとこがたいほされたというにゅーすをみる。)

あの時の男が逮捕されたというニュースを見る。

(おとこはかこに9にんのだんじにせいてきぼうこうをしたあとにさつがいして、)

男は過去に9人の男児に性的暴行をした後に殺害して、

(ばらばらにかいたいしたしたいはじたくのにわにうめていたとのことだった。)

バラバラに解体した死体は自宅の庭に埋めていたとの事だった。

(わすれかけていたきずをひろげられたおもいだったけど、)

忘れかけていた傷を広げられた思いだったけど、

(なににしてもつかまってくれてよかった。)

何にしても捕まってくれて良かった。

(あのひいらい、ぼくはいちどもけいどろをしていない。)

あの日以来、僕は一度もケイドロをしていない。

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