怖い話《ノザキさん》

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タグ怖い話

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問題文

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(かんごしのそぼからきいたはなし。)

看護師の祖母から聞いた話。

(そぼがまだかんごしになってまもないころ、いちばんつらかったのがやきんのしごとだという。)

祖母がまだ看護師になって間もない頃、一番辛かったのが夜勤の仕事だという。

(よなかにていじにみまわりをしたり、ようたいのきゅうへんしたかんじゃさんへのたいおうをしたり、)

夜中に定時に見回りをしたり、容態の急変した患者さんへの対応をしたり、

(けっこうやることはおおいらしい。)

結構やる事は多いらしい。

(からだがまだなれていないのでねむくなるし、)

身体がまだ慣れていないので眠くなるし、

(よるのびょういんはまだしんじんなーすのそぼにはすこしきみわるい。)

夜の病院はまだ新人ナースの祖母には少し気味悪い。

(いつものようにびょうしつをひとつひとつみてまわっていると、)

いつものように病室を一つ一つ見て廻っていると、

(さんかいのびょうしつにさしかかったとき、ひとりのかんじゃさんがじょうはんしんをおこして)

三階の病室に差し掛かった時、一人の患者さんが上半身を起こして

(ぼーっとまどをながめているのにきづいた。)

ボーっと窓を眺めているのに気付いた。

(80すぎのおじいさんのかんじゃさんだ。)

80過ぎのお爺さんの患者さんだ。

(そぼがこえをかけると、おじいさんは)

祖母が声を掛けると、お爺さんは

(「きょうはのざきさんがよまわりじゃないんか?」とにこにこわらいながらかえした。)

「今日はノザキさんが夜廻りじゃないんか?」とニコニコ笑いながら返した。

(そぼはまたか、とおもいつつおじいさんをべっどにねかせた。)

祖母はまたか、と思いつつお爺さんをベッドに寝かせた。

(ことしこのびょうとうにつとめはじめてから、のざきさんというなーすのなまえを)

今年この病棟に勤め始めてから、ノザキさんというナースの名前を

(たまにかんじゃさんのくちからきくのだ。)

たまに患者さんの口から聞くのだ。

(きょうつうしているのはとにかくひょうばんがいい。)

共通しているのはとにかく評判がいい。

(かんじゃさんに、あんたよりのざきさんのほうがいい、)

患者さんに、あんたよりノザキさんの方がいい、

(なんていわれてかちんときたこともあるほどだった。)

なんて言われてカチンときたこともあるほどだった。

(ただしゃくぜんとしないのが、すくなくともそぼのきおくでは)

ただ釈然としないのが、少なくとも祖母の記憶では

(「のざき」というみょうじのせんぱいはいないことだった。)

「ノザキ」という名字の先輩はいない事だった。

など

(とはいえまだしんじんだったそぼは、まだあったこともないせんぱいもいたため、)

とはいえまだ新人だった祖母は、まだ会った事もない先輩もいた為、

(きにもとめなかった。)

気にも留めなかった。

(なーすすてーしょんにもどったそぼは、)

ナースステーションに戻った祖母は、

(せけんばなしついでになにげなく「のざきさん」のことをせんぱいにきいてみた。)

世間話ついでに何気なく「ノザキさん」の事を先輩に聞いてみた。

(するとせんぱいなーすはしょるいをせいりしながらめんどうそうにかえした。)

すると先輩ナースは書類を整理しながら面倒そうに返した。

(「ああ、のざきさんね。ぜんここにつとめてたんだけど、きょねんなくなったの。)

「ああ、ノザキさんね。前ここに勤めてたんだけど、去年亡くなったの。

(じさつ。いろいろあったみたい。」)

自殺。色々あったみたい。」

(そぼはしんそこぞっとした。)

祖母は心底ゾッとした。

(なにかのまちがいであってほしいと、さっきおじいさんとのかいわのことをはなしてみたが)

何かの間違いであってほしいと、さっきお爺さんとの会話の事を話してみたが

(「よくあることだから」)

「よくある事だから」

(せんぱいなーすはひょうじょうもかえずにそっけなくこたえた。)

先輩ナースは表情も変えずに素っ気なく答えた。

(それからもおじいさんだけでなく、わかいだんせいのかんじゃさんや、)

それからもお爺さんだけでなく、若い男性の患者さんや、

(こどものかんじゃさんのくちからも「のざきさん」のなまえをときおりみみにすることがあった。)

子供の患者さんの口からも「ノザキさん」の名前を時折耳にする事があった。

(さいしょはかんじゃさんから「のざきさん」のなまえをきくだけできみがわるくてしかたなく、)

最初は患者さんから「ノザキさん」の名前を聞くだけで気味が悪くて仕方なく、

(しごとをやめることもかんがえたほどだったという。)

仕事を辞める事も考えたほどだったという。

(しかしなれとはおそろしいもの。)

しかし慣れとは恐ろしいもの。

(だんだんとしごとになじむにつれ、こわがりだったそぼでも、)

段々と仕事に馴染むにつれ、怖がりだった祖母でも、

(ちょっとくらいのしんれいじみたできごとくらいではなにもかんじなくなってきた。)

ちょっとくらいの心霊じみた出来事くらいでは何も感じなくなってきた。

(たまに「のざきさん」のはなしをかんじゃさんからきいても、ああまたか、)

たまに「ノザキさん」の話を患者さんから聞いても、ああまたか、

(といったぐあいにききながすよゆうもうまれてきたそうだ。)

といった具合に聞き流す余裕も生まれてきたそうだ。

(それに、なぜか「のざきさん」はかんじゃさんからすごくすかれている。)

それに、なぜか「ノザキさん」は患者さんからすごく好かれている。

(たとえおばけでもせんぱいなーすだし、いまでもかんじゃさんを)

例えオバケでも先輩ナースだし、今でも患者さんを

(みまもってくれてるのかもしれない、なんてまえむきにかんがえることにしたらしい。)

見守ってくれてるのかもしれない、なんて前向きに考える事にしたらしい。

(ここまではなしをきいて、ゆうれいもわるいもばっかりじゃないのかもな、)

ここまで話を聞いて、幽霊も悪いもばっかりじゃないのかもな、

(なんてかんがえていたわたしにそぼはおかしそうにわらってことばをつづけた。)

なんて考えていた私に祖母は可笑しそうに笑って言葉を続けた。

(「ただね、のざきさんにあったかんじゃさんって、)

「ただね、ノザキさんに会った患者さんって、

(みんな2,3にちのあいだになくなっちゃうのよねぇ」)

みんな2,3日の間に亡くなっちゃうのよねぇ」

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