雪にひまわり

(ひとついきをすってまたきえてゆくおと)

一つ息を吸って　また消えてゆく音

(ますいにたよってとけいはまわって)

麻酔に頼って時計は回って

(きづけばほら)

気づけばほら

(なにがくるしくたって)

何が苦しくたって

(なにがかなしくたって)

何が悲しくたって

(いいたかったことはなんだった)

言いたかったことは何だった

(きみをしらぬまちをあるいた)

君を知らぬ街を歩いた

(はきだすまもなくながれさってゆく)

吐き出す間もなく流れ去ってゆく

(がいとうのしたむしのしがいをみた)

街灯の下　虫の死骸を見た

(ぼくはなにがしたい)

僕は何がしたい

(あなだらけのかい)

穴だらけの解

(ふるくなったおもいは)

古くなった思いは

(うすれどいたみをのこし)

薄れど痛みを残し

(でどころはあいまいだ)

出どころは曖昧だ

(ただおもいや)

ただ重いや

(さいていなきおくとふたをとじたぼくら)

最低な記憶と蓋を綴じた　僕ら

(かぜがふいてそらはとおくこのまま)

風が吹いて空は遠くこのまま

(きえちゃえばいいわって)

「消えちゃえばいいわ」って

(いっしょにくちずさんでみた)

一緒に口ずさんでみた

(なもわすれた)

名も忘れた

(はやりのうたなにをおもうか)

流行りの歌　何を思うか

(せをむけたつきへとべ)

背を向けた月へ飛べ

(そのまま)

そのまま

(そうこれはただのしんおん)

そう　これはただの心音

(だれもしらないしんしょうによって)

誰も知らない心象に酔って

(じかんばかりすぎたなつはとおく)

時間ばかり過ぎた　夏は遠く

(のこったのはすこしおいたからだ)

残ったのは少し老いた体

(あいたあなにやきなおした)

空いた穴に焼き直した

(あおばかりがきらめいて)

青ばかりが煌めいて

(たったそれだけ)

たったそれだけ

(いいたかったことはなんだった)

言いたかったことは何だった

(いやにのどばかりかわいた)

嫌に喉ばかり乾いた

(はきだすまもなくながれさった)

吐き出す間もなく流れ去った

(ひとつずつをひろいにいこうか)

一つずつを拾いに行こうか

(くちにだした)

口に出した

(さいていなきおくとまぶたとじた)

「最低な記憶」と目蓋閉じた

(とじた)

閉じた

(かぜがふいてそらはとおく)

風が吹いて空は遠く

(ああぼくはどこかとまったまま)

ああ、僕はどこか止まったまま

(しらないきみをしるのがこわいのだ)

知らない君を識るのが怖いのだ

(とうにかれたひまわりにこいをしている)

とうに枯れたひまわりに恋をしている

(こいをしている)

恋をしている