物語は散った後に

(わたしをそだててくれたのは)

私を育ててくれたのは

(ちいさなおんなのこでした)

小さな女の子でした

(はじめはぺっとにたべられそうだったけど)

初めはペットに食べられそうだったけど

(わたしをじめんにまいたら)

私を地面に蒔いたら

(おおきなはながさくとしって)

大きな花が咲くと知って

(あなたはむねをおどらせていましたね)

あなたは胸を躍らせていましたね

(おさないあなたがえらんだじめんは)

幼いあなたが選んだ地面は

(あまりひあたりがよくなくて)

あまり日当たりが良くなくて

(おおきくなってあげられなくてつらかったです)

大きくなってあげられなくて辛かったです

(それでもわたしはかいがいしく)

それでも私はかいがいしく

(みずをくれてはなしかけてくれる)

水をくれて話しかけてくれる

(あなたのかおをちかくでみられてしあわせでした)

あなたの顔を近くで見られて幸せでした

(ひまわりにゆるされた)

ひまわりに許された

(ひとなつのいのちはあなたの)

一夏の命はあなたの

(ぬくもりをうけるにはあまりにみじかすぎて)

温もりを受けるにはあまりに短すぎて

(よわってくわたしをあんじ)

弱ってく私を案じ

(ねつをますあなたのおせわは)

熱を増すあなたのお世話は

(みずぜめみたいでしたが)

水責めみたいでしたが

(おかげでひとみのないわたしでも)

おかげで瞳のない私でも

(あなたとのわかれになみだをながせました)

あなたとの別れに涙を流せました

(かれそうなわたしをみて)

枯れそうな私を見て

(ないてくれたのがうれしくて)

泣いてくれたのが嬉しくて

(おぼえたんですおなじすがたになるまほう)

覚えたんです同じ姿になる魔法

(すぐにでもそばにいきたかったけど)

すぐにでも側に行きたかったけど

(すむせかいがちがう)

住む世界が違う

(だからこっそりみまもることにしたんです)

だからこっそり見守ることにしたんです

(あなたをおそういぬもむしもがきも)

あなたを襲う犬も虫もガキも

(ふしぎなかふんをすわせるだけで)

不思議な花粉を吸わせるだけで

(ひとめでしのもくぜんとわかるかおにしました)

一目で死の目前とわかる顔にしました

(たまたまかふんをつかいはたしたとき)

たまたま花粉を使い果たした時

(くっきょうなおとこにかこまれて)

屈強な男に囲まれて

(ばけてもちいさいわたしは)

化けても小さい私は

(すこしだけぴんちでしたが)

少しだけピンチでしたが

(ひまわりはつよくさくはな)

ひまわりは強く咲く花

(けりわざできょりをたもちながら)

蹴り技で距離を保ちながら

(ずいしょでみぎをいれてないぞうをぽんこつに)

随所で右を入れて内臓をポンコツに

(しばらくはりゅうどうしょくだね)

しばらくは流動食だね

(すらいむをたべさせてあげる)

スライムを食べさせてあげる

(ちょっとくらいけがしても)

ちょっとくらい怪我しても

(あなたのへやからもれてくる)

あなたの部屋から漏れてくる

(ぴあのをきけばすぐわすれてしまえました)

ピアノを聴けばすぐ忘れてしまえました

(いちどだけでもはなしがしてみたい)

一度だけでも話がしてみたい

(ちかくにいるのにとおくて)

近くにいるのに遠くて

(くじけそうなときもありました)

くじけそうな時もありました

(でもあるひわたしはきいたんです)

でもある日私は聞いたんです

(いろんなしゅぞくをうけいれるがっこうのうわさ)

いろんな種族を受け入れる学校の噂

(そこでならいっしょになれる)

そこでなら一緒になれる

(ごめんなさいいちどだけいけないことします)

ごめんなさい一度だけいけないことします

(かふんできおくをかきかえて)

花粉で記憶を書き換えて

(しぼうこうをかえます)

志望校を変えます

(らいねんはおなじばしょで)

来年は同じ場所で

(おなじせいふくをきようね)

同じ制服を着ようね

(はなせるのがたのしみでもうきめてあるんです)

話せるのが楽しみでもう決めてあるんです

(はじめてわたしからあなたにかけることばは)

初めて私からあなたにかける言葉は