ある研究員の遺書
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問題文
(あるけんきゅういんのいしょ)
ある研究員の遺書
(てがみがはさまれている)
＜手紙がはさまれている＞
(ぼくのいとしいあるまへｊｕｎｅ３，１９９８)
僕の愛しいアルマへ Ｊｕｎｅ ３，１９９８
(このてがみがとどいたということは、ぼくにとってよろこばしいことであり、)
この手紙が届いたという事は、僕にとって喜ばしい事であり、
(そしてかなしむべきことでもある。)
そして悲しむべき事でもある。
(あのさんぐらすやろうのせいで、きみとでんわではなすことすらできなかったんだ。)
あのサングラス野朗のせいで、君と電話で話す事すら出来なかったんだ。
(あるま、どうかおちついて、このてがみをよんでほしい。)
アルマ、どうか落ち着いて、この手紙を読んでほしい。
(ぼくがあるせいやくがいしゃのけんきゅうじょにすかうとされ、)
僕がある製薬会社の研究所にスカウトされ、
(そこにうつったことはまえにはなしたとおもう。)
そこに移った事は前に話したと思う。
(じつはせんげつ、そのけんきゅうじょでじこがおこって、)
実は先月、その研究所で事故が起って、
(けんきゅうちゅうのうぃるすがもれだしてしまったんだ。)
研究中のウィルスが漏れ出してしまったんだ。
(うぃるすにかんせんしたぼくのどうりょうは、みんなしんでしまった。)
ウィルスに感染した僕の同僚は、みんな死んでしまった。
(・・・いやせいかくにはしんでいないかもしれない。)
・・・いや正確には死んでいないかもしれない。
(なぜならかれらは、いまもあるきまわることができるし、)
何故なら彼らは、今も歩き回る事が出来るし、
(げんになんにんかがいま、ぼくのへやのどあをたたいている。)
現に何人かが今、僕の部屋のドアを叩いている。
(でも、かれらのひとみに、もはやちせいのひかりはない。)
でも、彼らの瞳に、もはや知性の光はない。
(あののろわれたうぃるすは、にんげんののうからにんげんらしさのすべて、)
あの呪われたウィルスは、人間の脳から人間らしさの全て、
(あいもよろこびもおそれもじょーくもえいきゅうにけしさってしまうんだ。)
愛も喜びも恐れもジョークも永久に消し去ってしまうんだ。
(そしてあるま、きみとすごしたひびさえ。)
そしてアルマ、君と過ごした日々さえ。
(そうなんだ。ぼくはかんせんしている。)
そうなんだ。僕は感染している。
(あらゆるてをつくしてみたが、しょうじょうのしんこうをすうじつおくらせるのがやっとだった。)
あらゆる手を尽くしてみたが、症状の進行を数日遅らせるのがやっとだった。
(きみがぼくのなかでひにひにうしなわれていくのが、ぼくにはなによりたえられない。)
君が僕の中で日に日に失われていくのが、僕には何より耐えられない。
(だから、ぼくは、このままいけるしかばねになるよりもやすらかなしをえらんだ。)
だから、僕は、このまま生ける屍になるよりも安らかな死を選んだ。
(いちじかんごには、ぼくはにどとさめることのないねむりについていることだろう。)
一時間後には、僕は二度と覚める事のない眠りについていることだろう。
(きみがこのぼくのけつだんをわかってくれることをせつにねがう・・・。)
君がこの僕の決断を解ってくれることを切に願う・・・。
(さようなら)
さようなら
(きみをえいえんにあいする)
君を永遠に愛する
(まーちんくらっくほーん)
マーチン・クラックホーン