戦争を知らない大人たち

(まるではるみたいで)

まるで春みたいで

(むくりとうごきだした)

むくりと動き出した

(ねぼけまなこぼくはなまがわきだった)

寝ぼけ眼僕は生乾きだった

(すいばんのじゃぐちふらいぱんののこり)

水盤の蛇口フライパンの残り

(「らいしゅうはまんかい」ときゃすたーはわらった)

「来週には満開」とキャスターは笑った

(ちぇっくつけたきゅうじんじょうきょうしたゆうじん)

チェックつけた求人上京した友人

(ふうをあけることもなくたまっていったゆうびん)

封を開けることもなく溜まっていった郵便

(ちょうちょうがひらりふわりまちははるのように)

蝶々がひらりふわり街は春のように

(ふれあいどおりさいたにせもののおうか)

ふれあい通り咲いた偽物の桜花

(まるでなつみたいですっとおもいだした)

まるで夏みたいでスッと思い出した

(えきまえにむかうとゆれるみにすかーと)

駅前に向かうと揺れるミニスカート

(まじやりたいだけでやることもなくて)

まじヤりたいだけでやることもなくて

(「がくせいとしてのじかくを」ってせんせいはいってた)

「学生としての自覚を」って先生は言ってた

(はじめてすったたばこばいとたいむかーど)

初めて吸った煙草バイトタイムカード

(ぶかつおわりゆうがたきみのゆかたすがた)

部活終わり夕方君の浴衣姿

(いやにあついよるにふたりならび)

嫌に暑い夜に二人並び

(はなびよりもきみをみたかった)

花火よりも君を見たかった

(ｇｏｏｄ　ｎｉｇｈｔ．．．)

Good night...

(まるであきみたいでせけんはつめたかった)

まるで秋みたいで世間は冷たかった

(なったほがたれるようにあいそうふりまいても)

成った穂が垂れるように愛想ふりまいても

(しんじまったせみのほうがほこらしくみえて)

死んじまった蝉の方が誇らしく見えて

(「あほう」なんてでんせんのからすがないた)

「阿呆う」なんて電線のカラスが鳴いた

(ちちとやったきゃっちぼーるこうえんのすこっぷ)

父とやったキャッチボール公園のスコップ

(ちょっとでもほめてもらいたかったんだ)

ちょっとでも褒めてもらいたかったんだ

(まっくろになったぼくにはははやさしかった)

真っ黒になった僕に母は優しかった

(きっとあいされていたんだ)

きっと愛されていたんだ

(ｇｏｏｄ　ｎｉｇｈｔ．．．)

Good night...

(まるでふゆみたいでことばがしろくなった)

まるで冬みたいで言葉が白くなった

(ゆきがふるみたいにまちはしずかだった)

雪が降るみたいに街は静かだった

(ただいまおかえりなんてきこえないへやに)

ただいまおかえりなんて聞こえない部屋に

(「めりーくりすます」っててれびがいった)

「メリークリスマス」ってテレビが言った

(ねんまつのみかいいかなかったにじかい)

年末飲み会行かなかった二次会

(はなしあわなかったていうかあうわけないか)

話合わなかったていうか合うわけないか

(みわけのつかないやんぐざっしぐらびあ)

見分けのつかないヤング雑誌グラビア

(みわけのつかないゆとりだったぼくら)

見分けのつかないゆとりだった僕ら

(ゆうれいもｕｆｏもしゅうきょうもしんじない)

幽霊もUFOも宗教も信じない

(ゆうじょうやあいじょうやひびのじじょう)

友情や愛情や日々の事情

(ゆうじゅうふだんせまられるけつだん)

優柔不断迫られる決断

(ゆうかんなゆうしゃもこいびとにかてない)

勇敢な勇者も恋人に勝てない

(てろがおこったひのみすぎてげろ)

テロが起こった日飲み過ぎてゲロ

(しんぶんにつつまりねむったこねこ)

新聞に包まり眠った子猫

(ねむればなにもわからない)

眠ればなにもわからない

(なにもかんじない)

なにも感じない

(ｇｏｏｄ　ｎｉｇｈｔ．．．)

Good night...