すまきの話 -7-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7328 7.4 98.2% 361.2 2695 48 66 2025/04/01
2 HAKU 7314 7.5 96.7% 359.7 2722 91 66 2025/04/01

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問題文

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(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(ぴたりとうごきをとめて、かのじょはもういちどこちらにむきなおる。)

ぴたりと動きを止めて、彼女はもう一度こちらに向き直る。

(「どういうこと」)

「どういうこと」

(いつもひょうじょうにとぼしいかのじょが、まゆをよせる。)

いつも表情に乏しい彼女が、眉を寄せる。

(あの、こうえんでみたこうけいをせつめいしようとしていきをすいこんだ。)

あの、公園で見た光景を説明しようとして息を吸い込んだ。

(けれどおれはそれきりことばにつまる。それをことばにしてしまうと、)

けれど俺はそれきり言葉につまる。それを言葉にしてしまうと、

(まるでとりかえしのつかないおそろしいまぼろしを、げんじつにしてしまうようなきがして。)

まるで取り返しの付かない恐ろしい幻を、現実にしてしまうような気がして。

(おれはとっさにほんをさがした。ざっし、いやしんぶんでもいい。)

俺はとっさに本を探した。雑誌、いや新聞でもいい。

(なにか、ぼうだいなじょうほうのつまったかみがほしい。むかししぜんにみにつけた、)

なにか、膨大な情報の詰まった紙が欲しい。昔自然に身につけた、

(ゆめのなかでそれがゆめであるときづくためのぎじゅつだ。)

夢の中でそれが夢であると気づくための技術だ。

(ほっぺたとつねるとか、なにかとくていのきーわーどをさけぶとか、)

ほっぺたとつねるとか、なにか特定のキーワードを叫ぶとか、

(みんなそれぞれゆめをにんしきするための、あるいはゆめからめざめるための)

みんなそれぞれ夢を認識するための、あるいは夢から目覚めるための

(こつのようなものをもっている。)

コツのようなものを持っている。

(おれのばあいはそれがほんをよむことだった。そこにかいてあるべきじょうほうりょうを、)

俺の場合はそれが本を読むことだった。そこに書いてあるべき情報量を、

(とっさにゆめをさいせいしているのうがていきょうできないから、)

とっさに夢を再生している脳が提供できないから、

(まるでぼろがでたこりのたぐいのようにゆめのよかいがこわれるのだ。)

まるでボロが出た狐狸の類のように夢の世界が壊れるのだ。

(しかし、あるくさんのへやはこぎれいにかたづけられていて、)

しかし、歩くさんの部屋は小綺麗に片付けられていて、

(げんかんとそこにつづくだいどころしゅうへんにはほんやざっしるいはまったくころがっていない。)

玄関とそこに続く台所周辺には本や雑誌類はまったく転がっていない。

(どあにふぞくしているゆうびんうけから)

ドアに付属している郵便受けから

(こぼれだたしんぶんがそのままげんかんにほうちされているおれのいえとはだいちがいだ。)

こぼれ出た新聞がそのまま玄関に放置されている俺の家とは大違いだ。

など

(せつめいのかわりに、おれはししょうからたくされたことばをくりかえした。)

説明の代わりに、俺は師匠から託された言葉を繰り返した。

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(あるくさんは、どうやらたいへんなことがおこったらしいとはんだんしたのか、)

歩くさんは、どうやら大変なことが起こったらしいと判断したのか、

(くちょうをつよめて「だから、なにがあったの」という。)

口調を強めて「だから、なにがあったの」と言う。

(けれどいまのじぶんのなかにはそのことばしかそんざいしていない。)

けれど今の自分の中にはその言葉しか存在していない。

(だからもういちどくりかえす。)

だからもう一度繰り返す。

(ないているらしい。こえがふるえている。だれが?じぶんが?どうして?)

泣いているらしい。声が震えている。誰が?自分が?どうして?

(「おちついて。ゆめって、あなたのゆめということ?だったらちがう。だって・・・」)

「落ち着いて。夢って、あなたの夢ということ?だったら違う。だって・・・」

(あるくさんはそこでことばをきってくちのなかでつづきをゆっくりとぎんみした。)

歩くさんはそこで言葉を切って口の中で続きをゆっくりと吟味した。

(「まず、わたしにはじががある。じぶんのいしでいましゃべっている。)

「まず、私には自我がある。自分の意思で今喋っている。

(これがあなたのゆめならば、ずっとつづいているわたしのいしきが、)

これがあなたの夢ならば、ずっと続いている私の意識が、

(あなたのあたまがうみだしたつくりものだということにならない?)

あなたの頭が生み出したつくりものだということにならない?

(そんなこわいことはかんがえたくないけど。じぶんのほっぺつねってみた?」)

そんな怖いことは考えたくないけど。自分のほっぺ抓ってみた?」

(おれはかぶりをふる。)

俺はかぶりを振る。

(「というか、つねるよりいたいめにあったみたいね」)

「というか、抓るより痛い目にあったみたいね」

(ちがゆかにしたたっているのをみつめる。)

血が床に滴っているのを見つめる。

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「だから、ちがう。ゆめじゃない」)

「だから、違う。夢じゃない」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「なんのことなの。なにがあったの」)

「なんのことなの。なにがあったの」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「ちがうっていってるでしょ。ゆめかどうかくらいわかるでしょう。)

「違うっていってるでしょ。夢かどうかくらいわかるでしょう。

(ゆめのなかでこれがゆめだときづいたことはあっても、)

夢の中でこれが夢だと気づいたことはあっても、

(ゆめのなかでこれはげんじつだときづいたことはあった?ないでしょう。)

夢の中でこれは現実だと気づいたことはあった?ないでしょう。

(いま、ここにいることがげんじつだとしっているわたしにとって、)

今、ここにいることが現実だと知っている私にとって、

(これがゆめじゃないことくらいわかりきってる」)

これが夢じゃないことくらいわかりきってる」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「いったいなにがあったの。そういえってだれかにいわれたの?」)

「いったいなにがあったの。そう言えって誰かに言われたの?」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「こたえなさい」)

「答えなさい」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「ちょっとまって。・・・・・ほら、でんたく。てきとうにすうじをうつよ。)

「ちょっと待って。・・・・・ホラ、電卓。適当に数字を打つよ。

(24587かける98564いこーる2456395168。)

24587×98564=2456395168。

(ゆめなら、こんなけいさんいっしゅんでできる?)

夢なら、こんな計算一瞬で出来る?

(でたらめなすうじじゃないってことをけんさんしてたしかめましょうか?」)

でたらめな数字じゃないってことを研鑽して確かめましょうか?」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「ゆめじゃない」)

「夢じゃない」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「・・・・・どういえばわかるのかな。)

「・・・・・どういえばわかるのかな。

(なにかいそいでしなくちゃいけないことがあるんじゃないの」)

何か急いでしなくちゃいけないことがあるんじゃないの」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「おこるよ」)

「怒るよ」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(「いいかげんにして」)

「いいかげんにして」

(「これはゆめですね」)

「これは夢ですね」

(あるくさんはなにかいおうとして、それをとめ、ふかいためいきをついた。)

歩くさんは何か言おうとして、それを止め、深いため息をついた。

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