先生 中編 -5-

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師匠シリーズ
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問題文

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(ぜんしんをつよくうったたろちゃんをしげちゃんがかついで、ぼくらはひっしにやまをおりた。)

全身を強く打ったタロちゃんをシゲちゃんが担いで、僕らは必死に山を降りた。

(こうしゅうでんわのおいてあるところまでたどりつくと、そこからきゅうきゅうしゃをよんだ。)

公衆電話の置いてある所までたどり着くと、そこから救急車を呼んだ。

(しんやだったけれどしげちゃんのいえとたろちゃんのいえにそれぞれれんらくがいき、)

深夜だったけれどシゲちゃんの家とタロちゃんの家にそれぞれ連絡が行き、

(ぼくらはこっぴどくしかられて、びょういんにかけつけたたろちゃんのかぞくにあやまったり、)

僕らはこっぴどく叱られて、病院に駆けつけたタロちゃんの家族に謝ったり、

(じじょうをきかれたりしていえにかえってふとんにはいったのはあけがたちかくだった。)

事情を聞かれたりして家に帰って布団に入ったのは明け方近くだった。

(こうふんしていたけれど、よほどつかれていたのかぼくはどろのようにねむった。)

興奮していたけれど、よほど疲れていたのか僕は泥のように眠った。

(ひるごろにめがさめてからふとんのうえにからだをおこした。ひるにおきるなんて)

昼ごろに目が覚めてから布団の上に身体を起こした。昼に起きるなんて

(めったにないことで、やっぱりあさとはちがうかんじがしてねおきのすがすがしさはない。)

めったにないことで、やっぱり朝とは違う感じがして寝起きの清々しさはない。

(ぼくはきのうのよるにあったことをおもいだそうとする。あのかおにゅうどうのどうくつで、)

僕は昨日の夜にあったことを思い出そうとする。あの顔入道の洞窟で、

(ぼくとしげちゃんがいかりをこたえているようなかおをみた。)

僕とシゲちゃんが怒りを堪えているような顔を見た。

(そしていれかわりにはいっていったたろちゃんがひめいをあげてとびでてきて、)

そして入れ替わりに入っていったタロちゃんが悲鳴を上げて飛び出てきて、

(いきおいあまってがけからおちた。)

勢いあまって崖から落ちた。

(さきわいけがはおもったほどたいしたことがなく、)

幸い怪我は思ったほど大したことがなく、

(みぎかたのほねにちょっとひびがはいってるけどあとはだぼくだそうで、)

右肩の骨にちょっとヒビが入ってるけどあとは打撲だそうで、

(しばらくにゅういんしたらもどってこられるとのことだった。)

しばらく入院したら戻ってこられるとのことだった。

(だけどぼくにはきになることがあった。)

だけど僕には気になることがあった。

(いたがってうめくたろちゃんをしげちゃんがかついでやまをおりていたとき、)

痛がって呻くタロちゃんをシゲちゃんが担いで山を降りていた時、

(たろちゃんがくりかえしへんなことをつぶやいていたのだ。)

タロちゃんが繰り返し変なことを呟いていたのだ。

(おこった。)

怒った。

(かおにゅうどうがおこった。)

顔入道が怒った。

など

(そんなことをうわごとのようにくりかえしていたのだ。それをきいたときのぼくは、)

そんなことをうわ言のように繰り返していたのだ。それを聞いた時の僕は、

(とにかくあのどうくつからはやくとおざかりたくてたまらなかった。)

とにかくあの洞窟から早く遠ざかりたくてたまらなかった。

(いまにもきょだいなかおがふんぬのひょうじょうでやみのなかをおいかけてきそうなきがして。)

今にも巨大な顔が憤怒の表情で闇の中を追いかけてきそうな気がして。

(よるがあけてれいせいになったいまふりかえるとふしぎなことだとおもう。)

夜が明けて冷静になった今振り返ると不思議なことだと思う。

(あのどうくつはいっぽんみちで、ほかのばしょにはつうじてないはずなのだ。)

あの洞窟は一本道で、ほかの場所には通じてないはずなのだ。

(ぼくとしげちゃんがかおをみてからたろちゃんがいれかわりにどうくつに)

僕とシゲちゃんが顔を見てからタロちゃんが入れ替わりに洞窟に

(はいっていくまでほとんどじかんがたってないし、ぼくとしげちゃんが)

入っていくまでほとんど時間が経ってないし、僕とシゲちゃんが

(そとでまっているあいだとうぜんほかのだれもはいってはいない。)

外で待っているあいだ当然ほかの誰も入ってはいない。

(だからたろちゃんはひとりでどうくつにはいり、いきどまりのばしょで)

だからタロちゃんは一人で洞窟に入り、行き止まりの場所で

(かおにゅうどうをみてからもどってきただけのはずなのだ。)

顔入道を見てから戻ってきただけのはずなのだ。

(ぼくらがみたときにはいかっていなかったかおにゅうどうがたろちゃんのときには)

僕らが見た時には怒っていなかった顔入道がタロちゃんの時には

(おこっていたなんて、そんなことあるはずがない。)

怒っていたなんて、そんなことあるはずがない。

(かんがえもよくわからない。たろちゃんはいったいなにをみたのだろう。)

考えもよくわからない。タロちゃんは一体何を見たのだろう。

(きいてみたいけれど、いまはとなりまちのびょういんだ。そんなへんなことをききにいけない。)

聞いてみたいけれど、今は隣町の病院だ。そんな変なことを聞きに行けない。

(「おきたか」)

「起きたか」

(かんがえこんでいると、おじさんがやってきてめしをくえという。)

考え込んでいると、おじさんがやってきて飯を食えという。

(しげちゃんもおきてきて、いっしょにたべているとおじさんに)

シゲちゃんも起きてきて、一緒に食べているとおじさんに

(もういちどきのうのことをきかれた。)

もう一度昨日のことを聞かれた。

(「どうしてよるにあんなやまにのぼったのか」と。)

「どうして夜にあんな山に登ったのか」と。

(はんぶんはおせっきょうだ。ぼくらはくちうらをあわせるようにかおにゅうどうのことはいわなかった。)

半分はお説教だ。僕らは口裏を合わせるように顔入道のことは言わなかった。

(そうだろう。ひみつをまもるのはなかまのあかしなのだから。)

そうだろう。秘密を守るのは仲間の証なのだから。

(ただたんけんしたかった。もうしない。ごめんなさい。)

ただ探検したかった。もうしない。ごめんなさい。

(そんなことをなんどとなくくりかえしてのりきるしかなかった。)

そんなことを何度となく繰り返して乗り切るしかなかった。

(ひるごはんをたべおわると、じいちゃんのへやによばれた。)

昼ご飯を食べ終わると、じいちゃんの部屋に呼ばれた。

(ぼくとしげちゃんはせいざをさせられて、じいちゃんのけわしいめに)

僕とシゲちゃんは正座をさせられて、じいちゃんの険しい目に

(じっとみつめられる。)

じっと見つめられる。

(おせっきょうならべつべつにせずにいちどにしてくれよとおもいながらうつむいていた。)

お説教なら別々にせずに一度にしてくれよと思いながら俯いていた。

(「かおにゅうどうさんだな」とじいちゃんはいった。)

「顔入道さんだな」とじいちゃんは言った。

(ぼくはおどろいてかおをあげる。じいちゃんはかおにゅうどうのことをしっていたらしい。)

僕は驚いて顔を上げる。じいちゃんは顔入道のことを知っていたらしい。

(どうやらじいちゃんのこどものころにもかおにゅうどうがおこったことがあるらしい。)

どうやらじいちゃんの子どものころにも顔入道が怒ったことがあるらしい。

(そのときにはなにかたいへんなことがむらにおこったそうだが、)

その時にはなにか大変なことが村に起こったそうだが、

(くわしくはおしえてくれなかった。)

詳しくは教えてくれなかった。

(かおにゅうどうさんにはもうちかづいてはならないと、きつくげんめいされて)

顔入道さんにはもう近づいてはならないと、きつく厳命されて

(ぼくらはしゃくほうされた。)

僕らは釈放された。

(さすがにしげちゃんもしょげかえっていて、げんきがなかった。)

さすがにシゲちゃんもしょげかえっていて、元気がなかった。

(たけやぶにんぎょうじけんのときよりもおおごとになってしまったからだ。)

竹ヤブ人形事件の時よりも大ごとになってしまったからだ。

(つぎのいたずらをおもいついてめのおくがぴかりとするのは)

次のイタズラを思いついて目の奥がぴかりとするのは

(まださきのことだろうとぼくはおもった。)

まだ先のことだろうと僕は思った。

(そのひはけっきょくなつやすみがっこうにはいけなかった。)

その日は結局夏休み学校には行けなかった。

(ごぜんちゅうはねてすごしてしまったのだからしかたがない。)

午前中は寝て過ごしてしまったのだから仕方がない。

(ぼくはきのうあったことをせんせいにきいてほしかった。)

僕は昨日あったことを先生に聞いてほしかった。

(こんなふしぎなことがよのなかにあるんだということを。)

こんな不思議なことが世の中にあるんだということを。

(けれどどうじにこうもおもう。)

けれど同時にこうも思う。

(せんせいなら、このできごとにぼくにはおもいもつかなかったようなこたえを)

先生なら、この出来事に僕には思いもつかなかったような答えを

(みつけだしてくれるんじゃないかと。)

見つけ出してくれるんじゃないかと。

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