先生 中編 -6-

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師匠シリーズ
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関連タイピング

問題文

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(まえにいちどごごにもあのがっこうにようすをみにいったことがあるけれど、)

前に一度午後にもあの学校に様子を見に行ったことがあるけれど、

(せんせいはいなかった。おかあさんにつきそってびょういんでにもいっているかもしれない。)

先生はいなかった。お母さんにつきそって病院でにも行っているかも知れない。

(じかんがゆったりとながれるなつのいえのなかで、はやくあしたにならないかと)

時間がゆったりと流れる夏の家の中で、早く明日にならないかと

(ぼくはやきもきしていた。)

僕はやきもきしていた。

(しげちゃんはそのあともときがないなりにどこかにあそびにってしまったが、)

シゲちゃんはその後元気がないなりにどこかに遊びにってしまったが、

(ぼくはそんなきになれずいえでしゅくだいをぽつぽつとすすめていた。)

僕はそんな気になれず家で宿題をぽつぽつと進めていた。

(けれどだんだんとこころのなかに、あるよっきゅうがわいてきて、それがおおきくなりはじめた。)

けれどだんだんと心の中に、ある欲求がわいてきて、それが大きくなり始めた。

(ひるまなら、あんまりこわくないよな。)

昼間なら、あんまり怖くないよな。

(そんなことをおもってしまったのだ。つまりかおにゅうどうを、たろちゃんが)

そんなことを思ってしまったのだ。つまり顔入道を、タロちゃんが

(みたものをたしかめにいこうというのだ。さすがにこれはなやんだ。)

見たものを確かめに行こうというのだ。さすがにこれは悩んだ。

(じいちゃんに「あれは、おそろしいものだ」なんていわれたばかりなのだ。)

じいちゃんに「あれは、おそろしいものだ」なんて言われたばかりなのだ。

(でも、みたかった。しりたかった。)

でも、見たかった。知りたかった。

(たろちゃんは、いったいなにをみたのか。)

タロちゃんは、一体なにを見たのか。

(いちどにげだしたばしょにもういっかいちょうせんすることで、てにはいるものもある。)

一度逃げ出した場所にもう一回挑戦することで、手に入るものもある。

(たとえばちんじゅのもりのおくにすすむことでせんせいにあえたようにだ。)

例えば鎮守の森の奥に進むことで先生に会えたようにだ。

(ばしん、とのーとをとじた。ようし、やってやる。)

バシン、とノートを閉じた。ようし、やってやる。

(ぼくはたちあがった。)

僕は立ち上がった。

(よるとひるまではやまみちのいんしょうがちがっていて、なんどもまよいそうになりながらも)

夜と昼間では山道の印象が違っていて、何度も迷いそうになりながらも

(ぼくはなんとかかおにゅうどうのどうくつにたどりついた。)

僕はなんとか顔入道の洞窟にたどりついた。

(ぜえぜえといきがきれる。きのうのよるよりしんどいのはたいようのひかりが)

ぜえぜえと息が切れる。昨日の夜よりしんどいのは太陽の光が

など

(きのえだごしにきょうぼうにふりそそいでいるからだろう。)

木の枝越しに凶暴に降り注いでいるからだろう。

(じゅもくがひらけ、やまはだがみえるばしょでぼくはひたいをぬぐう。)

樹木が開け、山肌が見える場所で僕は額をぬぐう。

(ちいさながけになっているばしょがみえる。)

小さな崖になっている場所が見える。

(きのうたろちゃんがとびだしておっこちたところだ。)

昨日たろちゃんが飛び出して落っこちた所だ。

(たろちゃんがごろごろところがって、からだごとぶつかって)

タロちゃんがゴロゴロと転がって、身体ごとぶつかって

(とまったいわもそのさきにある。)

止まった岩もその先にある。

(そのどっしりしたいわのかたちをみているといまさらながらぞっとする。)

そのどっしりした岩の形を見ていると今さらながらゾッとする。

(たろちゃんはそんなにまでおびえていったいなにからにげたかったのだろう。)

タロちゃんはそんなにまで怯えていったい何から逃げたかったのだろう。

(ひるまでもくらいくちをあけて、どうくつがぼくのめのまえにあった。)

昼間でも暗い口を開けて、洞窟が僕の目の前にあった。

(かくごをきめていてもどきどきしてくる。かおにゅうどうはおこっているかもしれない。)

覚悟を決めていてもドキドキしてくる。顔入道は怒っているかも知れない。

(それがどんなかおなのかあれこれそうぞうする。いまのうちにさいあくのじたいを)

それがどんな顔なのかあれこれ想像する。今のうちに最悪の事態を

(そうていしておけば、びびってがけからおっこちたりはしないだろう。)

想定しておけば、ビビって崖から落っこちたりはしないだろう。

(あらゆるいかりのひょうじょうをじゅうぶんにいめーじしてから、ぼくはしんこきゅうをごかいした。)

あらゆる怒りの表情を十分にイメージしてから、僕は深呼吸を五回した。

(ごかいしたあとで、もうさんかいして、それからもうあとよんかいくらいしてから)

五回した後で、もう三回して、それからもう後四回くらいしてから

(どうくつにあしをふみいれた。)

洞窟に足を踏み入れた。

(たいようのひかりがとどかないのでなかはひんやりしている。そとのねっきが)

太陽の光が届かないので中はひんやりしている。外の熱気が

(おいかけてくるけれど、それもなんどかかどをまがるとさっていってしまった。)

追いかけてくるけれど、それも何度か角を曲がると去っていってしまった。

(りゅっくさっくからかいちゅうでんとうをとりだす。しげちゃんがきのうもちだしたやつが)

リュックサックから懐中電灯を取り出す。シゲちゃんが昨日持ち出したやつが

(みあたらなかったので、おしいれでみつけたもうひとまわりちいさいやつだ。)

見当たらなかったので、押入で見つけたもう一回り小さいやつだ。

(こころぼそいようなひかりのすじがめのまえをてらすけれど、どうくつのなかはぐねぐねと)

心細いような光の筋が目の前を照らすけれど、洞窟の中はぐねぐねと

(おれまがっているのでみとおしがわるく、いつまがりかどのむこうに)

折れ曲がっているので見通しが悪く、いつ曲がり角の向こうに

(なにかこわいものがとびだしてくるかわからない。)

なにか恐いものが飛び出してくるか分からない。

(くびすじのあたりをぞわぞわさせながらぼくはどうくつのおくへとすすんでいく。)

首筋のあたりをぞわぞわさせながら僕は洞窟の奥へと進んでいく。

((いわでできたかおがおこりだすなんてあるわけない))

(岩でできた顔が怒り出すなんてあるわけない)

(そんなかんがえがうかぶたびに、(いや、このよではなにがおこるかわからない))

そんな考えが浮かぶたびに、(いや、この世ではなにが起こるか分からない)

(ときをひきしめる。そう。なにがおこるかわからないのだ。)

と気を引き締める。そう。なにが起こるか分からないのだ。

(かくれたようなえだみちがないかしんちょうにさぐりながら)

隠れたような枝道がないか慎重に探りながら

(ぼくはふかくふかくどうくつへもぐっていった。)

僕は深く深く洞窟へ潜って行った。

(そしてどこかみおぼえがあるまがりかどをまわったとき、)

そしてどこか見覚えがある曲がり角を回った時、

(めのまえにしろいものがとびこんできた。)

目の前に白いものが飛び込んできた。

(びくぅっ、とせなかがのびる。)

ビクゥッ、と背中が伸びる。

(かおだ。かおにゅうどう。)

顔だ。顔入道。

(きのうとおなじようにどうくつにみっしりとはまりこんでとおせんぼを)

昨日と同じように洞窟にみっしりとはまり込んでとおせんぼを

(しているそのしろいかおをみたしゅんかん、ぼくはきょうふというよりもはきけをもよおした。)

しているその白い顔を見た瞬間、僕は恐怖というよりも吐き気を催した。

(なんだこれは?あれほどいめーじとれーにんぐをくりかえしたにもかかわらず、)

なんだこれは?あれほどイメージトレーニングを繰り返したにも関わらず、

(まったくそうぞうしていなかったぶきみなすがたがそこにあった。)

まったく想像していなかった不気味な姿がそこにあった。

(あしもとからてんじょうまでのびるきょだいなかおは、わらっていたのだ。)

足下から天井まで伸びる巨大な顔は、笑っていたのだ。

(めをほそめ、くちもとのしわはたてにまっすぐではなくよこにふっくらとひろがっている。)

目を細め、口元の皺は縦に真っ直ぐではなく横にふっくらと広がっている。

(ほっぺたはまるまるとしてくちのははやさしげにあがっている。)

ほっぺたは丸々として口の端は優しげに上がっている。

(これはいったいなんなのだろう。)

これはいったいなんなのだろう。

(あしががくがくとふるえる。めのまえでしろいかおがぐにゃぐにゃとあめのように)

足がガクガクと震える。目の前で白い顔がぐにゃぐにゃと飴のように

(かたちをかえていくようなさっかくがある。・・・・・でもそれはほんとうにさっかくだろうか。)

形を変えていくような錯覚がある。・・・・・でもそれは本当に錯覚だろうか。

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