先生 後編 -4-

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師匠シリーズ
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問題文

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(「でも、おかしいよ。たろちゃんもまえにいっぺんみてるはずなのに、)

「でも、おかしいよ。タロちゃんも前にいっぺん見てるはずなのに、

(「かおがおこった」なんていってにげてきたんだよ」)

「顔が怒った」なんて言って逃げてきたんだよ」

(「そうね。だからそのときたろちゃんがみたかおは、まえにみたかおと)

「そうね。だからその時タロちゃんが見た顔は、前に見た顔と

(ちがってたのはたしかだわ。たろちゃんがまえにみたかおっていうのが、)

違ってたのは確かだわ。タロちゃんが前に見た顔って言うのが、

(あなたがきのうひとりでみたほんとうのかおにゅうどうのかおだったはずよ。)

あなたが昨日一人で見た本当の顔入道の顔だったはずよ。

(わらっていたかおがこんどはおこってたんだもん。それはびっくりするよね」)

笑っていた顔が今度は怒ってたんだもん。それはビックリするよね」

(え?ってことはどういうことになるんだ。)

え?ってことはどういうことになるんだ。

(くびをかしげるぼくに、せんせいはかんでふくめるようにかたりかける。)

首を傾げる僕に、先生は噛んで含めるように語り掛ける。

(「いったでしょ。あなたがさいしょにみたかおは、)

「言ったでしょ。あなたが最初に見た顔は、

(いわにえがかれたものじゃなかったって。かといってひとがうしろに)

岩に描かれたものじゃなかったって。かと言って人が後ろに

(かくれられるはりぼてでもない。しろいとりょうのついたとがったいわという)

隠れられるハリボテでもない。白い塗料のついた尖った岩という

(おなじめじるしがあるんだから、ばしょがちがっていたわけでもない。)

同じ目印があるんだから、場所が違っていたわけでもない。

(・・・・・たぶん、あつでのかみをかおにゅうどうのいわにかぶせて、そのうえから)

・・・・・たぶん、厚手の髪を顔入道の岩に被せて、その上から

(しろいとりょうでべつのかおをえがいたのよ。わらっているかおのうえに、おこってるかおを」)

白い塗料で別の顔を描いたのよ。笑っている顔の上に、怒ってる顔を」

(そのましたのとがったいわのとりょうは、そのときについたのね。)

その真下の尖った岩の塗料は、その時についたのね。

(せんせいはぼくのめをみながらたしかめるようにゆっくりという。)

先生は僕の目を見ながら確かめるようにゆっくりと言う。

(たしかにそれならほとんどかさばらないから、ぬけおちたきばのようにみえた)

確かにそれならほとんどかさばらないから、抜け落ちた牙のように見えた

(しろいいわとのいちもかわらない。でもそれではにんげんもかくれられなくなってしまう。)

白い岩との位置も変わらない。でもそれでは人間も隠れられなくなってしまう。

(「だれかがかくれるひつようなんてないのよ。かおはかってにかわったんだから。)

「誰かが隠れる必要なんてないのよ。顔は勝手に変わったんだから。

(「おこるまえ」から「おこったあと」に。さっきいったみたいに、「おこるまえ」のかおと)

「怒る前」から「怒った後」に。さっき言ったみたいに、「怒る前」の顔と

など

(「おこったあと」のかおはまったくおなじものなのよ。)

「怒った後」の顔は全く同じものなのよ。

(ただ、それをみていたにんげんのしんりがちがっていただけ」)

ただ、それを見ていた人間の心理が違っていただけ」

(どきどきしてきた。だんだんとせんせいのいいたいことがわかってきたからだ。)

ドキドキしてきた。だんだんと先生の言いたいことが分かってきたからだ。

(でも、そんな。そんなことって。)

でも、そんな。そんなことって。

(「あなたがはじめにそのかおをみたとき、みけんにしわをよせて、くちなんかへのじに)

「あなたが始めにその顔を見た時、眉間に皺を寄せて、口なんかへの字に

(まがって、はくりょくまんてんでにらみつけてくるそのひょうじょうにおどろいたんでしょ。)

曲がって、迫力満点で睨みつけてくるその表情に驚いたんでしょ。

(さっきわたしがそんなかおをしたとき、あなたはおこられるとかんねんした。)

さっき私がそんな顔をした時、あなたは怒られると観念した。

(なのにかおにゅうどうのときは、そのかおはおこっていないとおもってしまった。)

なのに顔入道の時は、その顔は怒っていないと思ってしまった。

(さあ、それはどうして?」)

さあ、それはどうして?」

(そのこたえはわかる。いまおもいだした。あのときのことばを。)

その答えは分かる。今思い出した。あの時の言葉を。

(さけびそうになったぼくをゆうきづけてくれたそのことば。)

叫びそうになった僕を勇気づけてくれたその言葉。

(「よかった。まだおこってない」)

「よかった。まだ怒ってない」

(しげちゃんだ。ぼくのとなりで、あのときたしかにそういった。)

シゲちゃんだ。僕の隣で、あの時確かにそう言った。

(しげちゃんがこのかおにゅうどうのじけんのはんにんだったんだ。)

シゲちゃんがこの顔入道の事件の犯人だったんだ。

(ぼくのなかですべてがつながっていく。せんせいはしずかなくちょうでそのてだすけをしてくれた。)

僕の中ですべてが繋がっていく。先生は静かな口調でその手助けをしてくれた。

(「さいしょからしげちゃんのいたずらけいかくだったのよ。)

「最初からシゲちゃんのイタズラ計画だったのよ。

(それもほんとうはおくびょうなのにくちばっかりつよがりなたろちゃんをひょうてきにした。)

それも本当は臆病なのに口ばっかり強がりなタロちゃんを標的にした。

(わたしがひみつきちのはなしをおもいだしてといったのは、かおにゅうどうをそのばんに)

私が秘密基地の話を思い出してと言ったのは、顔入道をその晩に

(みにいこうなんていいだしたのがしげちゃんだったってことを)

見に行こうなんて言い出したのがシゲちゃんだったってことを

(おもいだしてほしかったの。あなたはへんなかんちがいをしたみたいだけど」)

思い出して欲しかったの。あなたは変な勘違いをしたみたいだけど」

(ぼくはいすにすわりこんでじっとせんせいのせつめいをきいていた。)

僕は椅子に座り込んでじっと先生の説明を聞いていた。

(はるごろにかおにゅうどうのうわさをきいてみにいったわるがきなかまはどうくつのおくで)

春ごろに顔入道の噂を聞いて見に行った悪ガキ仲間は洞窟の奥で

(わらっているかおをみた。そしていたずらすきでしかもてさきのきような)

笑っている顔を見た。そしてイタズラ好きでしかも手先の器用な

(しげちゃんがそのかおをいからせることをおもいつく。)

シゲちゃんがその顔を怒らせることを思いつく。

(かみをはりつけてそのうえからぺんきかなにかでかおをえがき、そのじゅんびが)

紙を貼り付けてその上からペンキかなにかで顔を描き、その準備が

(おわったあとに、しんいりのぼくをつれていくというめいもくでみんなをさそう。)

終わった後に、新入りの僕を連れていくという名目でみんなを誘う。

(ひょうてきはなまいきなたろちゃんなのだから、ほかのおくびょうものたちがにげてもかまわない。)

標的は生意気なタロちゃんなのだから、他の臆病者たちが逃げても構わない。

(むしろおおぜいでいってしまうほうがみんなへんにきがつよくなってしまって、)

むしろ大勢で行ってしまう方がみんな変に気が強くなってしまって、

(まじまじとみられてさいくがばれてしまうかのうせいがあったのだからこうつごうだ。)

マジマジと見られて細工がバレてしまう可能性があったのだから好都合だ。

(しゅびよくさんにんでどうくつにたどりついたとき、たろちゃんがはいりたくないとごねだす。)

首尾よく三人で洞窟に辿り着いた時、タロちゃんが入りたくないとゴネ出す。

(むりやりひっぱっていくてもあったが、そこでしげちゃんはめいあんをおもいつく。)

無理やり引っ張っていく手もあったが、そこでシゲちゃんは名案を思いつく。

(わらっているかおをみていないぼくをつれてさきにはいり、)

笑っている顔を見ていない僕を連れて先に入り、

(たろちゃんにはあとからこいというのだ。)

タロちゃんには後からこいというのだ。

(しょうちしたたろちゃんをのこしてどうくつにはいったしげちゃんは、)

承知したタロちゃんを残して洞窟に入ったシゲちゃんは、

(いかっているようなかおをみておどろくぼくに「よかった。まだおこっていない」)

怒っているような顔を見て驚く僕に「よかった。まだ怒っていない」

(といってあんしんさせる。そういわれればそうみえるかおだったから。)

と言って安心させる。そう言われればそう見える顔だったから。

(とうぜんぼくはまえにしげちゃんたちがみにいったときのかおのままだとおもった。)

当然僕は前にシゲちゃんたちが見に行った時の顔のままだと思った。

(しかしやくそくどおりあとからはいったたろちゃんにとっては、)

しかし約束通り後から入ったタロちゃんにとっては、

(まさしくそれはわらっていたはずのかおがおこったあとのかおだったのだ。)

まさしくそれは笑っていたはずの顔が起こった後の顔だったのだ。

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