なぞなぞ -1-

背景
投稿者投稿者蛍☆いいね0お気に入り登録
プレイ回数12難易度(4.4) 3002打 長文 長文モードのみ
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
cicciさんのアカウント
https://typing.twi1.me/profile/userId/130158

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(だいがくよんかいせいのふゆだった。おれはなかまさんにんとすこしきのはやいそつぎょうりょこうをした。)

大学四回生の冬だった。俺は仲間三人と少し気の早い卒業旅行をした。

(こうたいしながらくるまをうんてんし、ほくりくまわりでかんとうへとはいった。)

交代しながら車を運転し、北陸まわりで関東へと入った。

(やどのてはいもないいきあたりばったりのたびで、)

宿の手配もない行き当たりばったりの旅で、

(びじねすほてるにとまれればよいほう。どこもまんしつで、)

ビジネスホテルに泊まれれば良い方。どこも満室で、

(しかたなくくるまのなかでさむさにふるえながらあさやけをみたこともあった。)

しかたなく車の中で寒さに震えながら朝焼けを見たこともあった。

(もくてきはない。ただがくせいじだいとくゆうのたいだでむいなじかんのなかに、)

目的はない。ただ学生時代特有の怠惰で無為な時間の中に、

(もうすこしぜんしんをしずめていたかった。)

もう少し全身を沈めていたかった。

(みんなおおかれすくなかれそんなかんしょうにひたっていたのだとおもう。)

みんな多かれ少なかれそんな感傷に浸っていたのだと思う。

(あるまちについたとき、おれはふとおもいついた。)

ある街に着いた時、俺はふと思いついた。

(しりあいがこのあたりにすんでいたはずだ。)

知り合いがこのあたりに住んでいたはずだ。

(けいたいでんわでれんらくをしてみると、なつかしがってくれた。)

携帯電話で連絡をしてみると、懐かしがってくれた。

(いちじかんくらいあとでおちあうことにする。)

一時間くらいあとで落ち合うことにする。

(なみきみちがきれいにのびているしんこうじゅうたくちのなかをとおり、ろかたにおろしてもらい、)

並木道がきれいに伸びている新興住宅地の中を通り、路肩に下ろしてもらい、

(「おわったられんらくくれ」といってさっていくなかまのくるまをみおくる。)

「終わったら連絡くれ」と言って去っていく仲間の車を見送る。

(としんからはなれるとあの、ひとであふれたいきのつまるようなまちなみよりも、)

都心から離れるとあの、人であふれた息の詰まるような街並みよりも、

(くうかんてきにずいぶんよゆうがでてくるようだった。)

空間的にずいぶん余裕がでてくるようだった。

(からふるなれんがでほそうされたみちをしぜんとうきあしだつすてっぷですすみ、)

カラフルな煉瓦で舗装された道を自然と浮き足立つステップで進み、

(おおきなまんしょんがむらがれるようにたちならぶほうへめをやる。)

大きなマンションが群がれるように立ち並ぶ方へ目をやる。

(まんしょんというより、だんちか。)

マンションというより、団地か。

(そこへむかうみちはかるくけいしゃし、おかになっている。)

そこへ向かう道は軽く傾斜し、丘になっている。

など

(そのだんちのいりぐちにこうえんがあった。ひろいしきちには、わずかばかりのゆうぐと)

その団地の入り口に公園があった。広い敷地には、わずかばかりの遊具と

(たくさんのみどり、そしてじゅうみんがいこうためのべんちがいくつかあった。)

たくさんの緑、そして住民が憩うためのベンチがいくつかあった。

(そこにそのひとはすわっている。)

そこにその人は座っている。

(こはるびよりのあたたかいひざしにめをほそめながら、こちらにてをふる。)

小春日和の温かい日差しに目を細めながら、こちらに手を振る。

(おれはてれかくしにおおげさなどうさでてをふりかえし、)

俺は照れ隠しに大げさな動作で手を振り返し、

(ことさらゆっくりとあるいていった。)

ことさらゆっくりと歩いていった。

(「え~と、げんきでしたか。・・・・・たださん」)

「え〜と、元気でしたか。・・・・・多田さん」

(なんだかおもはゆい。ここすうじつ、くだけたなかまどうしのかけあいしかしてなかったので、)

なんだか面映い。ここ数日、砕けた仲間同士の掛け合いしかしてなかったので、

(くちがなめらかにうごかない。)

口が滑らかに動かない。

(げんきだとそのひとはいった。)

元気だとその人は言った。

(いぜんよりすこしふっくらしたようだ。かみのけものばしている。)

以前より少しふっくらしたようだ。髪の毛も伸ばしている。

(なにより、あのしんしでするどかったまなざしがやわらかくなっているきがする。)

なにより、あの真摯で鋭かった眼差しが柔らかくなっている気がする。

(べんちのとなりにすわってきんきょうをほうこくした。)

ベンチの隣に座って近況を報告した。

(ひるさがりのこうえんはじぶんたちのほか、ときおりしゅふらしきわかいじょせいが)

昼下がりの公園は自分たちのほか、時おり主婦らしき若い女性が

(とおりがかってはさっていくだけだった。)

通りがかっては去っていくだけだった。

(「そうか、おまえもそつぎょうか」)

「そうか、おまえも卒業か」

(かんがいぶかげなこえに、うしろめたいきもちでうなずいた。そつぎょうをまつなかまたちとちがい、)

感慨深げな声に、うしろめたい気持ちで頷いた。卒業を待つ仲間たちと違い、

(おれだけはたんいがたりずにりゅうねんすることがきまっていたからだった。)

俺だけは単位が足りずに留年することが決まっていたからだった。

(りょこうなんてしているばあいではないきがするが、)

旅行なんてしている場合ではない気がするが、

(すてばちになっていたというわけでもない。)

捨て鉢になっていたというわけでもない。

(ただそのころのおれは、すべてなるようにしかならない、)

ただそのころの俺は、すべてなるようにしかならない、

(というたっかんめいたへいせいのきょうちにあったようなきがする。)

という達観めいた平静の境地にあったような気がする。

(けれどかっこうわるいのであえてそのじじつをつげることはなかった。)

けれど格好悪いのであえてその事実を告げることはなかった。

(かぜのないだひだまりのなか、ふたりでいろいろなはなしをした。)

風の凪いだ陽だまりの中、二人でいろいろな話をした。

(たかだかに、さんねんまえのかこがはるかとおいむかしのできごとのようにいろあせて、)

たかだか二、三年前の過去が遥か遠い昔の出来事のように色あせて、

(それでもほのかなかがやきとともによみがえってくる。)

それでも仄かな輝きとともに蘇ってくる。

(「ちえもけっこんしたんだってな」)

「智恵も結婚したんだってな」

(「ええ。にじかいによばれましたけど、あのひともかわりませんねえ」)

「ええ。二次会に呼ばれましたけど、あの人も変わりませんねえ」

(あいてはどんなやつだというので、「やっぱり、ああいうたいぷのひとでした」)

相手はどんなやつだと言うので、「やっぱり、ああいうタイプの人でした」

(とこたえると、「なるほど」とわらった。)

と答えると、「なるほど」と笑った。

(ちりがみこうかんのくるまがどこかとおくをはしっているおとがする。)

チリ紙交換の車がどこか遠くを走っている音がする。

(かおをあげ、はっとしたひょうじょうをみせて、なにかおもいだそうというふぜいだったが、)

顔を上げ、ハッとした表情を見せて、なにか思い出そうという風情だったが、

(すぐに「まだいいか」とつぶやいた。)

すぐに「まだいいか」とつぶやいた。

(そのよこでおれはむねにちいさなはりがささったようなかすかないたみをおぼえる。)

その横で俺は胸に小さな針が刺さったような微かな痛みを覚える。

(かおをふせ、そのいたみのしょうたいはなんだろうとじもんする。)

顔を伏せ、その痛みの正体はなんだろうと自問する。

(「そういえば、このだんちにもななふしぎがあってな」)

「そういえば、この団地にも七不思議があってな」

(ふいにそのひとはきりだした。)

ふいにその人は切り出した。

(「え。がっこうによくあるあれですか」)

「え。学校によくあるあれですか」

(「ああ。まあしょうちゅうがくせいもおおいし、おなじのりでうまれたんだろう」)

「ああ。まあ小中学生も多いし、同じノリで生まれたんだろう」

(そういってじゅんばんにおしえてくれた。)

そう言って順番に教えてくれた。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

蛍☆のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード