めおと鎧6

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山本周五郎作

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(あとからかけつけたいちぶのひとびとは、そのままひっしと)

あとから駈けつけたいちぶの人々は、そのままひっしと

(おっていったが、のこりのにんずうはもんぜんにつどって)

追っていったが、残りの人数は門前に集って

(がやがやとののしりたてていた。「どうしたのだ」)

がやがやと罵りたてていた。「どうしたのだ」

(「まごへいがきくおかをきったんだ」「だってしんぞくどうしで、)

「孫兵衛が菊岡を斬ったんだ」「だって親族同志で、

(いったいりゆうはなんだ」「ひりゅうをまごへいがころしたんだ」)

いったい理由はなんだ」「飛竜を孫兵衛が殺したんだ」

(じじょうをしっているとみえ、ひとりがあらましのことをはなしていた。「しかし)

事情を知っているとみえ、ひとりがあらましのことを話していた。「しかし

(にげるとはみれんだな、ひごろのまごへいにもにあわぬばかなことをするものだ」)

逃げるとはみれんだな、日頃の孫兵衛にも似合わぬばかなことをするものだ」

(「けれど、きくおかのいのちととりかえはおしいよ」)

「けれど、菊岡の命ととりかえは惜しいよ」

(「さきにぬいたのはきくおかだった、まごへいは)

「さきに抜いたのは菊岡だった、孫兵衛は

(きるつもりはなかったとおもう、おれはみていたんだ、)

斬るつもりはなかったと思う、おれは見ていたんだ、

(しょうにんもある」こういうもんどうは、かなりこわだかに)

証人もある」こういう問答は、かなりこわだかに

(かわされていたので、もしじぶしょうのめつけが)

交わされていたので、もし治部少輔のめつけが

(うかがっていたとしても、これがまごへいの)

うかがっていたとしても、これが孫兵衛の

(ひっしのきちだったとはきづかなかったにちがいない。)

必至の機智だったとは気付かなかったにちがいない。

(まごへいは、いきをかぎりにはしった。)

孫兵衛は、息をかぎりに走った。

(たまつくりたまつくりのあたりでおってをまったくひきはなし、)

玉造たまつくりのあたりで追手をまったくひきはなし、

(くろかどぐちからひらのがわのほうへだっしゅつした。)

黒門口から平野川のほうへ脱出した。

(そのころ、じぶしょうはかとう、ふくしまらのごぶしょうと)

そのころ、治部少輔は加藤、福島らの五武将と

(ふわのことがあってきょじょうであるおうみのくにさわやまへ)

不和のことがあって居城である近江のくに佐和山へ

(かえっていた。だからふしみじょうにいるいえやすのもとへゆくのに、)

帰っていた。だから伏見城にいる家康のもとへゆくのに、

など

(おもてのみちをとってはいしだのめつけをのがれることは)

おもての道をとっては石田のめつけをのがれることは

(できない、そこでまごへいは、ならじをしじょうなわてまでゆき、)

できない、そこで孫兵衛は、奈良路を四条畷までゆき、

(こうちのくにからよどへとはいった。)

河内のくにから淀へとはいった。

(それまでにふつかかかった。よどでようすをきくと)

それまでに二日かかった。淀でようすをきくと

(いえやすはふしみじょうにはいず、かわをへだてたむこうじまのだいに)

家康は伏見城にはいず、川をへだてた向島の第に

(うつっているとのことだった。)

移っているとのことだった。

(かえってまごへいのためには、しあわせである。)

かえって孫兵衛のためには、仕合せである。

(かれはおぐらいけのほとりにひそんでいて)

かれは巨椋池のほとりにひそんでいて

(ひがくれてからいえやすのだいをおとずれた。)

日が暮れてから家康の第をおとずれた。

(ほんだなかつかさのかしんに、ひらばやしだいぜんというしりびとがいたので、)

本多中務の家臣に、平林大膳という知りびとがいたので、

(そのとりなしでこうつごうにいえやすとあえた。)

そのとりなしで好都合に家康と会えた。

(たいめんはさしむかいで、ひとりのこじゅうもなくおこなわれた。)

対面はさしむかいで、ひとりの扈従もなくおこなわれた。

(いえやすはだまってふうしょをひらき、しょくだいのほうへかたむけてよんだ。)

家康は黙って封書をひらき、燭台のほうへ傾けて読んだ。

(・・・・・・まごへいは、そのおもてをじっとみつめていた。)

……孫兵衛は、そのおもてをじっとみつめていた。

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