めおと鎧8

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(まごべえはあけがたまでひとつことをかんがえつくした。)

孫兵衛は明けがたまでひとつことを考えつくした。

(そしてつまりはいずれともこころのきまらぬままで、)

そしてつまりはいずれとも心のきまらぬままで、

(むこうじまのだいをじきょした。そのあさはことにしもがふかく、)

向島の第を辞去した。その朝はことに霜がふかく、

(まだほのぐらいのづらはゆきでもふったようにみえた。)

まだほの暗い野づらは雪でも降ったようにみえた。

(とにかく、おおさかへもどってみよう。とりとめもなくそうおもいながら、)

とにかく、大阪へもどってみよう。とりとめもなくそう思いながら、

(うじがわのきしまできたとき、いましもわたしぶねがついて)

宇治川の岸まで来たとき、いましも渡し舟がついて

(よんごにんのきゃくがあがってくるのをみた、そのなかにぶしが)

四五人の客があがって来るのをみた、そのなかに武士が

(ひとりいた、まごべえはぎょっとしてすばやくかたわらの)

ひとりいた、孫兵衛はぎょっとしてすばやくかたわらの

(そうりんのなかへとびこんだ、こううんだった、)

叢林のなかへとびこんだ、幸運だった、

(みをかくしたせつなには「いやまさか」とおもったのだが、)

身を隠した刹那には「いやまさか」と思ったのだが、

(わたしぶねからあがってきたさむらいはきくおかやごろうだった。)

渡し舟からあがって来たさむらいは菊岡弥五郎だった。

(そうみとめると、そのまままごべえはそうりんのなかを)

そう認めると、そのまま孫兵衛は叢林のなかを

(あしにまかせてはしった。いのちがおしいのではない、)

足にまかせて走った。命が惜しいのではない、

(いやいのちはおしい、だがひきょうでおしいのではない、)

いや命は惜しい、だが卑怯で惜しいのではない、

(こんなことでしにたくないだけだ。やがておおさかとかんとうとの)

こんなことで死にたくないだけだ。やがて大阪と関東との

(あいだにかっせんがある、かならずある、おれはぶしとしてそのかっせんに)

あいだに合戦がある、必ずある、おれは武士としてその合戦に

(あわずにしぬことはできない、そのときまではいきるんだ、)

会わずに死ぬことはできない、その時までは生きるんだ、

(そしてごばぜんにむくろをささげささげるんだ。)

そして御馬前にむくろを捧ささげるんだ。

(はしりながら、かれはじぶんをときふせるようにそれをくりかえしていた。)

走りながら、かれは自分を説きふせるようにそれを繰り返していた。

(みっかめにまごべえは、びわこのせいがんをきたへむかって)

三日めに孫兵衛は、琵琶湖の西岸を北へむかって

など

(あるいていた。おうみのくにくつきには、)

あるいていた。近江のくに朽木には、

(くつきもとつなのきょじょうがある。そのいえに、いずみひょうごのすけという)

朽木元綱の居城がある。その家に、和泉兵庫介という

(しりびとがあった。ふしみをでてからいつかめのたそがれ、)

知りびとがあった。伏見を出てから五日めのたそがれ、

(ちょうどふりだしたゆきのなかを、まごべえは)

ちょうど降りだした雪のなかを、孫兵衛は

(くちきのまちへはいっていった。ひょうごのすけはしゅようできょうへ)

朽木の町へはいっていった。兵庫介は主用で京へ

(いったあとだったが、かぞくのものはこころよくむかえてくれた。)

いったあとだったが、家族の者はこころよく迎えてくれた。

(やごろうがおいついてきたのは、そのついよくよくじつのことであった。)

弥五郎が追いついて来たのは、そのつい翌々日のことであった。

(いずみとこうたとがちきのあいだがらだということは、)

和泉と香田とが知己のあいだがらだということは、

(えんじゃとしてよりもおなじいえじゅうとして、)

縁者としてよりもおなじ家中として、

(やごろうがしっているのはとうぜんである。)

弥五郎が知っているのは当然である。

(「おおさかから、ひとがおみえでございます」)

「大阪から、人がおみえでございます」

(いずみのかじんがそうつげにきたとき、まごべえはひるのしょくじを)

和泉の家人がそう告げに来たとき、孫兵衛は昼の食事を

(しまったところだった。「いまでます」そうこたえて、)

しまったところだった。「いま出ます」そう答えて、

(かじんがさるよりはやく、かれはたいけんをひっつかみつかんで)

家人が去るより早く、かれは大剣をひっ掴つかんで

(いえのうらへとびだした。あさからふりだしたゆきがまだやまず、)

家の裏へとびだした。朝から降りだした雪がまだやまず、

(こがいはもうくるぶしくるぶしをうめるほどつもっていた。)

戸外はもう踝くるぶしを埋めるほど積っていた。

(かれはさんちのほうへ、けんめいにはしった。)

かれは山地のほうへ、けんめいに走った。

(おおいというさけびごえがきこえた、さんどめには、)

おおいという叫びごえが聞えた、三度めには、

(よほどとおかった、それでふりかえってみると、)

よほど遠かった、それでふりかえってみると、

(ふきまくるゆきのかなたにやごろうのすがたがちらとみえた。)

吹きまくる雪のかなたに弥五郎の姿がちらとみえた。

(まごべえは、しゅりだけのほうへまっしぐらにはしりつづけた。)

孫兵衛は、首里岳のほうへまっしぐらに走りつづけた。

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