雫（あさき）

(ゆびさしたさきのほつえにあかりほほをなでる)

指さした先の上枝に明かり　頬を撫でる

(ささめくきららおもいでこころとおせんぼゆれたけいのほ)

ささめく　きらら おもいで　心通せんぼ　揺れた　景の秀

(ときいろにそまるちいさなほほぽけっとのなかでむすぶいとしさ)

鴇色に染まる　小さな頬 ぽけっとの中で結ぶ　愛しさ

(といきぼたんゆきとのぼるそうし)

吐息　牡丹雪と昇る相思

(むねにつもっていくこころきらら)

胸に積もっていく　心きらら

(ときにながるるみゆきのひめるひよくのめ)

時代に流るる深雪の秘める比翼の芽

(よりそうなみうすごおりのした)

寄り添う波　薄氷の下

(みずかがみうつすつきたゆたえてささめおよぐほしのふねせにのせながら)

水鏡映す月　たゆたえて細泳ぐ 星の船　背に乗せながら

(きずなをおもうひあればそれでよくて)

絆を思う日あればそれでよくて

(たえにゆきすめたこともことのはにつのったしずえのかげで)

妙に雪澄めたことも　言の葉に募った　下枝の影で

(そうね とこうるいにうくしじまぽろりぽろりとなきむしやさん)

「そうね」と紅涙に浮く静寂 ぽろり　ぽろりと　泣き虫屋さん

(さんしすいめいだとまぶかぼうし)

「山紫水明」だと目深帽子

(ねえここがいいねしずれこえあげた)

ねえ　ここがいいね　垂れ　声あげた

(ふりつづくゆきをゆびにたくしてながした)

降り続く雪を指に託して流した

(こぶねうかぶさよのなみまに)

小船浮かぶ　小夜の波間に

(だきしめたまいごはるかよりちかくにうなずき はじめてないたつよがりやさんが)

抱き締めた迷子　遥かより近くに頷き はじめて泣いた　強がり屋さんが

(しあわせをかぞえたらゆびがたりなくなった よせあわせたほほのすきまをうめるまよいぼし)

幸せを数えたら　指が足りなくなった 寄せ合わせた頬の隙間を埋める迷い星

(うみべりであそぶきらぼし)

湖べりで遊ぶ綺羅星

(ちいさくなるひかりのてんめつにふれ またたくたびにうつるふたりのかげたえによりすめる)

小さくなる光の点滅に触れ 瞬くたびに映る二人の影　妙により澄める

(ほしがまわる とんでゆくかげぼうしひかりしぶきにきゆ)

星が回る 飛んでゆく影法師　光飛沫に消ゆ

(はもんにつきおどりふねのぼる ぬかぼしのかわをしずかにゆれてみおはとがりなきおぼろ)

波紋に月踊り　舟昇る 糠星の川を　静かに揺れて　水脈は尖りなき朧

(うすらいにちりばめてひかるほしがささめいて ふたりのかげをけしてゆく)

薄氷に鏤めて光る星がささめいて 二人の影を消してゆく

(ときにながるるみゆきのひめるひよくのめ)

時代に流るる深雪の秘める比翼の芽

(つんだのははくらくのなごり)

摘んだのは　剥落の名残

(しあわせのいみとみずきよき さるはなかぜいだきおもう)

幸せの意味と水清き 去る花風抱き　思う

(あなたにあえてよかったと)

「あなたに会えてよかった」と