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問題文
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(こうこうさんねんのなつ。)
高校三年の夏。
(わたしたちは、まいにちのようにおなじばしょにあつまっていた。)
私たちは、毎日のように同じ場所に集まっていた。
(がっこうからすこしはなれた、だれもこないちいさなかいがん。)
学校から少し離れた、誰も来ない小さな海岸。
(だんしさんにん、じょしふたり。)
男子三人、女子二人。
(とくべつなかがよかったわけじゃない。)
特別仲が良かったわけじゃない。
(じゅぎょうではそんなにはなさないやつもいたし、)
授業ではそんなに話さないやつもいたし、
(そつぎょうしたらきっとしぜんに)
卒業したらきっと自然に
(はなれていくんだろうとおもっていた。)
離れていくんだろうと思っていた。
(でも、なつやすみだけはちがった。)
でも、夏休みだけは違った。
(ゆうがたになるとだれからともなくれんらくがくる。)
夕方になると誰からともなく連絡が来る。
(「きょう、うみいく?」)
「今日、海行く?」
(それだけで、ぜんいんがあつまった。)
それだけで、全員が集まった。
(こんびにでじゅーすをかって、)
コンビニでジュースを買って、
(はなびをして、すなはまでくだらないはなしをした。)
花火をして、砂浜でくだらない話をした。
(しょうらいのはなしもした。)
将来の話もした。
(「とうきょういく」)
「東京行く」
(「ぜったいうそ」)
「絶対嘘」
(「まじだって」)
「まじだって」
(「じゃあゆうめいになったらさいんちょうだい」)
「じゃあ有名になったらサインちょうだい」
(そんなはなしをしながら、わたしたちはずっとわらっていた。)
そんな話をしながら、私たちはずっと笑っていた。
など
(いまおもえば、なにがそんなにおもしろかったのか)
今思えば、何がそんなに面白かったのか
(わからない。)
わからない。
(でも、あのころはなにをしてもたのしかった。)
でも、あの頃は何をしても楽しかった。
(そのなかに、ひとりだけすこしかわったやつがいた。)
その中に、一人だけ少し変わったやつがいた。
(なまえは、みなと。)
名前は、湊。
(いつもみんなのすこしうしろをあるいていた。)
いつもみんなの少し後ろを歩いていた。
(しゃしんをとるのがすきで、わたしたちがふざけている)
写真を撮るのが好きで、私たちがふざけている
(ところをかってにとっていた。)
ところを勝手に撮っていた。
(「とるならいってよ」)
「撮るなら言ってよ」
(というと、)
と言うと、
(「いったらへんなかおするじゃん」)
「言ったら変な顔するじゃん」
(とわらう。)
と笑う。
(だから、わたしたちのしゃしんには、)
だから、私たちの写真には、
(わらいすぎてかおがぐちゃぐちゃになっているしゅんかんとか、)
笑いすぎて顔がぐちゃぐちゃになっている瞬間とか、
(あいすをたべながらへんなかおをしているところとか、)
アイスを食べながら変な顔をしているところとか、
(だれもみていないとおもっておどっているところとか。)
誰も見ていないと思って踊っているところとか。
(そんなしゃしんばかりのこっている。)
そんな写真ばかり残っている。
(はちがつさいごのひ。)
八月最後の日。
(わたしたちはいつものうみにあつまった。)
私たちはいつもの海に集まった。
(「なつやすみおわるなー」)
「夏休み終わるなー」
(だれかがいった。)
誰かが言った。
(「らいねんもくればいいじゃん。」)
「来年も来ればいいじゃん。」
(そういうとみなとはうみをみながら、)
そう言うと湊は海を見ながら、
(「らいねんは、みんなちがうばしょにいるよ」)
「来年は、みんな違う場所にいるよ」
(といった。)
と言った。
(「なにそれ、さびしいこというなよ」)
「何それ、寂しいこと言うなよ」
(「でも、そういうもんじゃん」)
「でも、そういうもんじゃん」
(わたしたちはわらってながした。)
私たちは笑って流した。
(そのひのかえりぎわ。)
その日の帰り際。
(みなとがとつぜん、)
湊が突然、
(「さいごにしゃしんとろう」)
「最後に写真撮ろう」
(といった。)
と言った。
(ごにんならんで、せるふたいまーをせっとした。)
五人並んで、セルフタイマーをセットした。
(しゃったーがきれる。)
シャッターが切れる。
(いちまい。)
一枚。
(にまい。)
二枚。
(さんまい。)
三枚。
(「もういちまい!」)
「もう一枚!」
(みなとがはしってくる。)
湊が走ってくる。
(そのしゅんかん、だれかがわらわせて。)
その瞬間、誰かが笑わせて。
(ぜんいんがわらった。)
全員が笑った。
(それがさいごだった。)
それが最後だった。
(そつぎょうしてから、わたしたちはすこしずつはなれていった。)
卒業してから、私たちは少しずつ離れていった。
(さいしょはれんらくをとっていた。)
最初は連絡を取っていた。
(でもしごとがはじまって。)
でも仕事が始まって。
(こいびとができて。)
恋人ができて。
(ひっこして。)
引っ越して。
(いそがしくなって。)
忙しくなって。
(きがつけば、だれもあのうみにいかなくなった。)
気が付けば、誰もあの海に行かなくなった。
(そして、みなとははたちになるまえになくなった。)
そして、湊は二十歳になる前に亡くなった。
(びょうきだった。)
病気だった。
(あまりにもはやかった。)
あまりにも早かった。
(そうしきのひ、ひさしぶりにごにんのうちよにんがあつまった。)
葬式の日、久しぶりに五人のうち四人が集まった。
(だれも、うまくはなせなかった。)
誰も、うまく話せなかった。
(かえりぎわ、みなとのおかあさんが、)
帰り際、湊のお母さんが、
(「これ、みんなでもってて」)
「これ、みんなで持ってて」
(といって、いちまいのしゃしんをわたしてくれた。)
と言って、一枚の写真を渡してくれた。
(さいごのなつにとったしゃしんだった。)
最後の夏に撮った写真だった。
(ごにんでわらっている。)
五人で笑っている。
(わたしはそのしゃしんをみながら、ふとおもった。)
私はその写真を見ながら、ふと思った。
(「.....みなと、いないじゃん」)
「.....湊、いないじゃん」
(しゃしんには、わたしたちよにんしかうつっていなかった。)
写真には、私たち四人しか写っていなかった。
(「え?」)
「え?」
(となりにいたともだちがしゃしんをみる。)
隣にいた友達が写真を見る。
(たしかに、よにんしかいない。)
確かに、四人しかいない。
(でもわたしたちは、おぼえていた。)
でも私たちは、覚えていた。
(あのひ、ごにんでしゃしんをとった。)
あの日、五人で写真を撮った。
(みなとがたいまーをおして、)
湊がタイマーを押して、
(はしってきて、)
走ってきて、
(みんなでわらった。)
みんなで笑った。
(ぜったいにごにんだった。)
絶対に五人だった。
(なのに、しゃしんにはよにんしかいなかった。)
なのに、写真には四人しかいなかった。
(そのあと、なんどさがしてもごにんでうつったしゃしんはみつからなかった。)
その後、何度探しても五人で写った写真は見つからなかった。
(けいたいにも、snsにも、だれかのあるばむにも)
携帯にも、SNSにも、誰かのアルバムにも
(みなとがとったしゃしんのなかにも。)
湊が撮った写真の中にも。
(まるで、さいしょからよにんしかいなかったみたいに。)
まるで、最初から四人しかいなかったみたいに。
(それからじゅうねんいじょうたった。)
それから十年以上経った。
(わたしはけっこんして、こどもができて、しごともかわった。)
私は結婚して、子供ができて、仕事も変わった。
(あのころのなかまとは、ほとんどあわなくなった。)
あの頃の仲間とは、ほとんど会わなくなった。
(でも、なつになるとたまにおもいだす。)
でも、夏になるとたまに思い出す。