家路

(ぼくたちだけのひみつのちかみち)

僕達だけの秘密の近道

(ふたり、じてんしゃではしりぬけた)

二人、自転車で走り抜けた

(ふとおもいだすあざやかなえいぞうはいまのぼくにはまぶしすぎた)

ふと思い出す　鮮やかな映像は今の僕には眩しすぎた

(うまれてきたことさえわすれてしぬことばかりかんがえて)

生まれてきた事さえ忘れて死ぬ事ばかり考えて

(そのてくびじゃかわいいふくもゆかたもきれないでしょう)

その手首じゃ可愛い服も浴衣も着れないでしょう

(あなたはひげきのひろいんですか？)

あなたは悲劇のヒロインですか？

(あなたをすくってくれるのはだれですか？)

あなたを救ってくれるのは誰ですか？

(そうやってそこからいっぽもうごかないつもりですか？)

そうやってそこから一歩も動かないつもりですか？

(きょねんよりもずっとあつくなりそうです)

昨年よりもずっと暑くなりそうです

(せみのこえもかえるのこえもここじゃきこえません)

蝉の声も蛙の声もここじゃ聞こえません

(いまでもきみのしゃしんをもっているのは)

今でも君の写真を持っているのは

(なくしたくないものがそこにあるからなのでしょう)

無くしたくない物がそこにあるからなのでしょう

(こんくりーとのかわいたざつおんからそれはみどりにかわってく)

コンクリートの乾いた雑音から　それは緑に変わってく

(あのひのおんどにちかづくまどをながめてる)

あの日の温度に近づく窓を眺めてる

(こごえかけのぼく)

凍えかけの僕

(じぶんのいたみばかりおしつけてひとのいたみをきくみみをあなたはもってますか？)

自分の痛みばかり押しつけて人の痛みを聞く耳を あなたは持ってますか？

(たにんにもとめるだけじゃなくてあたえることができますか？)

他人に求めるだけじゃなくて与える事ができますか？

(わたしのかげをせおいこめますか？)

私の影を背負い込めますか？

(くちではなんとでもいえるでしょう)

口では何とでもいえるでしょう

(いやしてもらうきもないけれど)

癒してもらう気もないけれど

(きょねんよりもずっとあつくなりそうです)

昨年よりもずっと暑くなりそうです

(てのなかをくすぐるほたるはここではみえないけど)

手の中を擽る蛍はここでは見えないけど

(ふゆがきてはるになり)

冬がきて春になり

(ことしもなつはくる)

今年も夏はくる

(きみならいまのぼくをみてなんというのでしょう？)

君なら今の僕を見て何と言うのでしょう？

(ぼくのかえりをまつひとなんてだれもいそうにないけれど)

僕の帰りを待つ人なんて誰もいそうにないけれど

(なぜかすきなんですぼくにかえりたいんです)

何故か好きなんです　僕に還りたいんです

(やがてふゆがきてはるになりらいねんもなつはくる)

やがて冬がきて春になり　来年も夏はくる

(そしてぼくは「ぼく」になれとあぜみちにはながさく)

そして僕は「僕」になれと　あぜ道に花が咲く