ハイドアンドシーク

(むこうぎしのことやらくだんないことばかりおそれて)

向こう岸のことやら、くだんないことばかり恐れて

(ありもしないただしさのどれいさ)

ありもしない正しさの奴隷さ

(ちゃちなそうこうせいなつのよるのひにみをこがして)

チャチな走光性　夏の夜の火に身を焦がして

(おともたてずにちっていくあのはむしのようにおわりたいんだ)

音も立てずに散って逝く、あの羽虫のように終わりたいんだ

(おえばおうほどににげてしまう)

追えば追うほどに逃げてしまう

(あのたいようへとちかづいてはねのとけるおとをきく)

あの太陽へと近づいて、羽根の溶ける音を聴く

(まるまるとこえたじいしきでおくびょうなぼくらがみをかくしたってむだ)

丸々と肥えた自意識で臆病な僕らが身を隠したって無駄

(かれはてんじょうからみている)

彼は天井から見ている

(すぐにみつかってげーむはしまいさ)

すぐに見つかってゲームは終いさ

(にげきれなくなってぼくら)

逃げ切れなくなって僕ら

(だまされていくだまされていく)

騙されていく　騙されていく

(みせかけのたいようにみな)

見せかけの太陽に皆

(くわれちまってこわれちまって)

喰われちまって　壊れちまって

(ただしさはもうどこにもないんだ)

正しさはもうどこにもないんだ

(どうしててんのたまわったことばのみちびくままにあゆめないのか)

どうして天の賜った言葉の導くままに歩めないのか？

(なすすべなくとうはおちるんでばかはいつもひげきをまねく)

為す術なく塔は落ちる、んで馬鹿はいつも悲劇を招く

(ぶんだんされまどうばかり)

分断され惑うばかり

(こどくなぼくらのおびえたまなこしろくにごってたんだ)

孤独な僕らの怯えた眼、白く濁ってたんだ

(もえるぴあのやぶられたかいが)

燃えるピアノ、破られた絵画

(ししをなくしたおどりこがあえいでいる)

四肢を失くした踊り子があえいでいる

(ささいなあくいがむらがってはすのようにみにくくただれたくにで)

些細な悪意が群がって、蓮のように醜く爛れた国で

(いきをひそめて)

息を潜めて

(にげきれなくなってぼくら)

逃げ切れなくなって僕ら

(だまされていくだまされていく)

騙されていく　騙されていく

(みせかけのたいようにみな)

見せかけの太陽に皆

(くわれちまってこわれちまって)

喰われちまって　壊れちまって

(ただしさはもうどこにもなくて)

正しさはもうどこにもなくて

(うまくかくれたはずなのに)

上手く隠れたはずなのに

(あしおとがすぐそこにきている)

足音がすぐそこに来ている

(ぼくらのずじょうにずっと)

僕らの頭上にずっと

(なまぬるいしせんがむいている)

生温い視線が向いている

(ひとりとしてにげれやしないんだ)

一人として逃げれやしないんだ

(かおをあげておにとめがあって)

顔を上げて鬼と目が合って

(いつくしみのばつがくだるまで)

慈しみの罰が下るまで

(むこうぎしのことやらくだんないことばかりおそれて)

向こう岸のことやら、くだんないことばかり恐れて

(こりつしていくぼくらはなににすがっていきてゆくのだろう)

孤立していく僕らは何に縋って生きてゆくのだろう？