ガリバー旅行記 20 大人国の旅
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(ぶろぶでぃんなぐのおしろにいるあいだ、わたしはまいしゅう1,2かいおうさまのへやへ)
ブロブディンナグのお城にいる間、私は毎週1,2回王様の部屋へ
(ごきげんうかがいにいっていました。)
ご機嫌うかがいに行っていました。
(それはたいていあさのことで、おうさまはよく、とこやさんにひげをそらせていました。)
それはたいてい朝のことで、王様はよく、床屋さんに髭をそらせていました。
(とこやさんのてにひかるかみそりは、いぎりすのおひゃくしょうがつかうおおがまの)
床屋さんの手に光るかみそりは、イギリスのお百姓が使う大がまの
(にばいくらいはありましたから、はじめてそれをみたときびっくりしました。)
二倍くらいはありましたから、初めてそれを見た時びっくりしました。
(おうさまのひげそりのようすをながめているうち、わたしはふとおもしろいかんがえがうかびました。)
王様の髭そりの様子を眺めているうち、私はふと面白い考えが浮かびました。
(そしてさっそく「とこやさん、おうさまのひげをそりおとしたあとの)
そしてさっそく「床屋さん、王様の髭をそり落とした後の
(しゃぼんのあわをすこしわけてください」とわたしはたのみました。)
シャボンの泡を少し分けてください」と私は頼みました。
(「どうぞ、だがいったいなににつかうのかね」)
「どうぞ、だが一体なにに使うのかね」
(「それはあとのおたのしみ」)
「それは後のお楽しみ」
(わたしはしゃぼんのあわをじぶんのへやへはこび、もうひとつ、ぐらむだるくりっちに)
私はシャボンの泡を自分の部屋へ運び、もうひとつ、グラムダルクリッチに
(たのんで、ちいさなきぎれとぬいばりをもらいました。)
頼んで、小さな木ぎれと縫い針をもらいました。
(そしてしゃぼんのあわのなかから、おうさまのひげを40ぽんえらびだし)
そしてシャボンの泡の中から、王様の髭を40本選び出し
(つぎにきぎれをくしのせのかたちにけずり、ぬいばりをきりのかわりにして)
次に木切れを櫛の背の形に削り、縫い針をきりの代わりにして
(40ぽんのあなをあけました。)
40本の穴をあけました。
(このあなに、40ぽんのおうさまのひげを、1ぽん1ぽんたんねんにうえつけました。)
この穴に、40本の王様の髭を、1本1本丹念に植え付けました。
(これで、できあがりです。)
これで、出来上がりです。
(なにができたか、もうみなさんはおわかりでしょう?)
なにができたか、もうみなさんはおわかりでしょう?
(わたしは、それまでもっていたくしのはが、こぼれてつかえなくなったので)
私は、それまで持っていた櫛の歯が、こぼれて使えなくなったので
(あたらしいくしをつくったのです。)
新しい櫛を作ったのです。
など
(「まあ、かわいらしいくし、こんなこまかいしごとができるひとは)
「まあ、かわいらしい櫛、こんな細かい仕事ができる人は
(くにじゅうをさがしても、あなたのほかにいないわ」)
国中を探しても、あなたのほかにいないわ」
(ぐらむだるくりっちはかんしんしておきさきさまにみせ、)
グラムダルクリッチは感心してお妃さまに見せ、
(おきさきさまもめをまるくしていいました。)
お妃さまも目を丸くして言いました。
(「なんてみごと!だいいち、かんがえがすばらしいわ」)
「なんて見事!第一、考えが素晴らしいわ」
(ほめられたわたしはとくいになって、こんどはおきさきさまのぬけげをあつめて)
ほめられた私は得意になって、今度はお妃さまの抜け毛を集めて
(それでちいさなはんどばっぐをあんで、おきさきさまにさしあげました。)
それで小さなハンドバッグを編んで、お妃さまに差し上げました。
(しかしわたしが、なによりもおきさきさまをよろこばせたのは)
しかし私が、何よりもお妃さまを喜ばせたのは
(すぴねっと(ぴあのににたがっき)のえんそうです。)
スピネット(ピアノに似た楽器)の演奏です。
(このくにのすぴねっとは、ながさ18めーとる、きーひとつのはばが30せんちもあり)
この国のスピネットは、長さ18メートル、キーひとつの幅が30センチもあり
(わたしがりょうてをひろげても、4つのきーをたたくのがやっとです。)
私が両手を広げても、4つのキーをたたくのがやっとです。
(しかも、げんこつでなぐりつけても、わたしのちからではじゅうぶんにおとがひびきません。)
しかも、げんこつで殴りつけても、私の力では十分に音が響きません。
(そこでわたしは、にほんのこんぼうをよういし、こんぼうのさきをかわでつつみ)
そこで私は、二本のこん棒を用意し、こん棒の先を皮で包み
(べつに18めーとるのべんちのようなだいをつくってもらって)
別に18メートルのベンチのような台を作ってもらって
(すぴねっとのまえにおいてもらいました。)
スピネットの前に置いてもらいました。
(わたしはべんちのうえを、みぎへひだりへとはしりながら、にほんのこんぼうできーをたたき)
私はベンチの上を、右へ左へと走りながら、二本のこん棒でキーをたたき
(いぎりすのきょくを1きょくえんそうしたのです。これには、おきさきさまばかりか)
イギリスの曲を1曲演奏したのです。これには、お妃さまばかりか
(おうさまもたいそうかんしんしたようです。)
王様もたいそう感心したようです。
(おうさまはしきりにくびをかしげていいました。)
王様はしきりに首をかしげて言いました。
(「はてさて、がくしゃたちはぐりるどりっぐはにんげんではなく、ばけものだといったが)
「はてさて、学者たちはグリルドリッグは人間ではなく、化け物だと言ったが
(ばけものにこのようなくふうができるものかどうか。といって、にんげんだとしても)
化け物にこのような工夫ができるものかどうか。といって、人間だとしても
(こんなちいさなものにこれだけのさいのうがそなわっているというのもふしぎなはなしじゃ」)
こんな小さな者にこれだけの才能が備わっているというのも不思議な話じゃ」
(「いいえ、そんなことはありません」)
「いいえ、そんなことはありません」
(わたしはじぶんがふつうのちえをもったにんげんだということを、いまこそなっとくしてもらいたい)
私は自分が普通の知恵を持った人間だということを、今こそ納得してもらいたい
(とおもっていいました。)
と思って言いました。
(「おうさまは、にんげんのちえやかしこさがからだのおおきさできまるものと)
「王様は、人間の知恵や賢さが体の大きさで決まるものと
(おかんがえでしょうか。もし、そのようにおかんがえだとしたらまちがいです。)
お考えでしょうか。もし、そのようにお考えだとしたら間違いです。
(たとえば、どうぶつにしましても、みつばちやありはもっとおおきなほかのどうぶつよりも)
例えば、動物にしましても、蜜蜂やありはもっと大きなほかの動物よりも
(よくはたらき、きようでりこうだといわれています。そのように、おうさまからごらんになれば)
よく働き、器用で利口だと言われています。そのように、王様からご覧になれば
(ちいさすぎるわたしたちのようなにんげんでも、このくにのひとたちにまけない)
小さすぎる私たちのような人間でも、この国の人たちに負けない
(ちえやさいのうをそなえているのです。どうかおうさま、そのことをおわかりになって)
知恵や才能を備えているのです。どうか王様、そのことをおわかりになって
(ください」「なるほど、ではおまえのくにだといういぎりすのことをはなしてみよ」)
ください」「なるほど、ではお前の国だというイギリスのことを話してみよ」
(「わかりました」)
「わかりました」
(わたしは、いぎりすのれきしやちり、せいじのしくみやげいじゅつ、ぐんたいのようすまで)
私は、イギリスの歴史や地理、政治の仕組みや芸術、軍隊の様子まで
(いっしょうけんめいせつめいしました。)
一生懸命説明しました。
(ところが、わたしがねっしんにせつめいすればするほど、おうさまはだんだんふきげんになり)
ところが、私が熱心に説明すればするほど、王様はだんだん不機嫌になり
((なまいきなことをいいおって)といわんばかりのかおになり、)
(生意気なことを言いおって)と言わんばかりの顔になり、
(さいごにこういいました。「おまえがなにをはなそうと、わしはやっぱり)
最後にこう言いました。「お前が何を話そうと、わしはやっぱり
(おまえのくにのものたちは、ちいさなむしけらとしかおもえんわい」)
おまえの国の者たちは、小さな虫けらとしか思えんわい」
(わたしのくにいぎりすは、このぶろぶでぃんなぐこくにくらべて、すべてのてんで)
私の国イギリスは、このブロブディンナグ国に比べて、すべての点で
(ずっとしんぽしています。わたしのせつめいをきくうち、おうさまはそれがしゃくにさわって)
ずっと進歩しています。私の説明を聞くうち、王様はそれがしゃくにさわって
(さいごにまけおしみをいったのかもしれません。)
最後に負け惜しみを言ったのかもしれません。
(それに、おうさまはわたしのようなちいさなにんげんのせかいとは、きりはなされたところに)
それに、王様は私のような小さな人間の世界とは、切り離されたところに
(すんでいて、ほかのくににめをむけたことがないのですから)
すんでいて、ほかの国に目をむけたことがないのですから
(ひとりよがりのかんがえしかできないとしても、しかたがないかもしれません。)
独りよがりの考えしかできないとしても、仕方がないかもしれません。
(わたしはもうこれいじょう、おうさまにせつめいしてもむだだというきがしました。)
私はもうこれ以上、王様に説明しても無駄だという気がしました。
(しつれいながら、じぶんかってなことしかいわないおうさまのことばを)
失礼ながら、自分勝手なことしか言わない王様の言葉を
(いちいちまともにかんがえるひつようもないとおもいました。)
いちいちまともに考える必要もないと思いました。
(それよりわたしは、もっとべつのことをかんがえました。)
それより私は、もっと別のことを考えました。