綾

(ぼくのまえだけでこんやだけ)

僕の前だけで　今夜だけ

(どくしんにもどるきみをぼくはせめなかった)

独身に戻る君を僕は責めなかった

(じかんがゆるすまでこいびとで)

時間が許すまで　恋人で

(いられるきがしてしまってたんだ)

いられる気がしてしまってたんだ

(もしもふたりもっとはやくに)

「もしも二人もっと早くに

(であっていたらどうなっていたかな)

出会っていたらどうなっていたかな？」

(そんなふうにきみがいうからこたえたんだ)

そんな風に君が言うから答えたんだ

(いまよりしあわせになってたんじゃない)

「今より幸せになってたんじゃない？」

(まっさきにひらいたこのはながちることを)

真っ先にひらいた　この花が散ることを

(わかっていながらまだあまいゆめをみてた)

わかっていながら　まだ甘い夢を見てた

(それでもこんやだけでも)

それでも　今夜だけでも

(となりにいられたらぼくは)

隣にいられたら僕は

(それだけでしあわせできみとわらってた)

それだけで幸せで　君と笑ってた

(いつもはどんなかおしているか)

いつもはどんな顔しているか

(どんなまいにちをおくってるかしらなかった)

どんな毎日を送ってるか知らなかった

(くすりゆびのゆびわだけがぼくになにかおしえてくれた)

薬指の指輪だけが　僕になにか教えてくれた

(でんわさえゆるされなくて)

電話さえ許されなくて

(でもおさえられるとまたあいたくなった)

でも抑えられるとまた会いたくなった

(こんやもとにあったばしょにきみをもどさないで)

今夜、元にあった場所に君を戻さないで

(このままつれされたら)

このまま連れ去れたら

(まっぷたつにわれたみちのまんなかにたって)

真っ二つにわれた道の真ん中に立って

(かえってほしくないといえずにてをにぎった)

「帰ってほしくない。」と言えずに手を握った

(きみはこまったかおのままぼくのかたにかおをつけた)

君は困った顔のまま　僕の肩に顔を付けた

(ふたつのかげがまたひとつになった)

二つの影がまた一つになった

(とうきょうえきまえのしんやひがおちたあかれんが)

東京駅前の深夜　陽が落ちた赤煉瓦

(しょくぶつえんのすとーぶはつゆきがふったあさ)

植物園のストーブ　初雪が降った朝

(もしもふたりもっとはやくにであってたって)

もしも二人もっと早くに出会ってたって

(むくわれないってわかってた)

報われないってわかってた

(でもわすれたりできないならいまじかんをもどそう)

でも忘れたりできないなら　いま時間を戻そう

(なんにもいらなかったきみがいてくれたら)

なんにもいらなかった　君がいてくれたら

(いっかげつにいちどだけあまいゆめにふれた)

一ヶ月に一度だけ甘い夢に触れた

(このこいがきれいなひみつでおわるように)

この恋が綺麗な秘密で終わるように

(ちゃんとおわらせるから)

ちゃんと終わらせるから

(このものがたりにはっぴーえんどなんて)

この物語にハッピーエンドなんて

(ないとわかっててもこれでさいごとちかっても)

ないとわかってても　これで最後と誓っても

(なんどだってやぶりすててまたふたりでむかえたひびを)

何度だって破り捨てて　また二人で迎えた日々を

(もうこれでほんとうに)

もうこれで本当に

(さいごにしてしまうねいままでうれしかったよ)

最後にしてしまうね　今まで嬉しかったよ

(どこまでもやさしいきみがすきだったよ)

どこまでも優しい君が好きだったよ

(じゃあもうゆめからさめるね)

じゃあもう夢から醒めるね

(このおとがとまったらそこでてをはなすね)

この音が止まったら　そこで手を離すね

(さようなら)

さようなら