悪食娘コンチータ

(「さあ、のこさずたべなさい」)

「さあ、残さず食べなさい」

(ふしゅうただようはいとくのやかたきょうもはじまるさいごのばんさん)

腐臭漂う背徳の館　今日も始まる最後の晩餐

(みのけもよだつりょうりのかずかずひとりくいあさるおんなのえがお)

身の毛もよだつ料理の数々　ひとり食い漁る女の笑顔

(かのじょのなまえはばにかこんちーたかつてこのよのびしょくをきわめた)

彼女の名前はバニカ・コンチータ　かつてこの世の美食を極めた

(そのはてにかのじょがもとめたのはきゅうきょくにしてしこうのあくじき)

その果てに彼女が求めたのは　究極にして至高の悪食

(うやまいたたえよわれらがいだいなこんちーた)

敬い称えよ　われらが偉大なコンチータ

(このせかいのしょくもつはすべてがあなたのためにある)

この世界の食物は　全てがあなたの為にある

(くらいつくせこのよのすべていぶくろにはまだまだあきがある)

食らい尽くせこの世の全て　胃袋にはまだまだ空きがある

(あおじろくかがやくもうどくめいんでぃっしゅのすぱいすにさいてき)

青白く輝く猛毒　メインディッシュのスパイスに最適

(ほねのずいまでしゃぶりつくせたりなければさらにもかぶりつけ)

骨の髄までしゃぶり尽くせ　足りなければ皿にもかぶりつけ

(したさきをかけめぐるしふくばんさんはまだまだおわらない)

舌先を駆け巡る至福　晩餐はまだまだ終わらない

(ことしにはいってじゅうごにんめのおかかえこっくがこういってきた)

今年に入って15人目の　お抱えコックがこう言ってきた

(「そろそろおひまをもらえませんか？」まったくつかえぬやつらばかりね)

「そろそろお暇を貰えませんか？」　まったく使えぬ奴らばかりね

(うやまいたたえよわれらがいだいなこんちーた)

敬い称えよ　われらが偉大なコンチータ

(うらぎりものにはむくいをうけていただきましょう)

裏切者には　報いを受けていただきましょう

(くらいつくせこのよのすべてきょうのめにゅーはとくべつせいなの)

食らい尽くせこの世の全て　今日のメニューは特別製なの

(あおじろくかがやくもうはつおーどぶるのさらだにちょうどいい)

青白く輝く毛髪　オードブルのサラダに丁度いい

(ほねのずいまでしゃぶりつくせたりなければ「おかわり」すればいい)

骨の髄までしゃぶり尽くせ　足りなければ「おかわり」すればいい

(ちょっとそこのめしつかいさんあなたはどんなあじがするかしら？)

ちょっとそこの召使さん　あなたはどんな味がするかしら？

(いつしかやかたはもぬけのからになんにもないしだれももういない)

いつしか館はもぬけのからに　何にもないし誰ももういない

(それでもかのじょはもとめつづけたきゅうきょくにしてしこうのあくじき)

それでも彼女は求め続けた　究極にして至高の悪食

(「のこしたら、おこられちゃうもの」)

「残したら、怒られちゃうもの」

(くらいつくせこのよのすべてかのじょはみずからのみぎてをみて)

食らい尽くせこの世の全て　彼女は自らの右手を見て

(そしてしずかにほほえんだ)

そして静かにほほ笑んだ

(「まだ、たべるものあるじゃない」)

「マダ、タベルモノ　アルジャナイ」

(こんちーたのさいごのあくじきしょくざいはそう、かのじょじしん)

コンチータの最後の悪食　食材はそう、彼女自身

(しょくをきわめたそのからだのあじをしるものはすでにいない)

食を極めたその身体の　味を知る者は既にいない