四つの顔 -7-

・スマホ向けフリック入力タイピングはこちら
※アプリのインストールが必要です。
・PC向けタイピングはこちら
タブレット+BlueToothキーボードのプレイもこちらがオススメです!
Webアプリでプレイ
投稿者投稿者蛍☆いいね0お気に入り登録
プレイ回数17順位2677位  難易度(4.9) 3084打 長文 長文モードのみ
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
cicciさんのアカウント
https://typing.twi1.me/profile/userId/130158
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7899 8.0 98.1% 378.4 3045 56 60 2025/07/26

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(そちらにあしをふみだしかけると、いつかのやましたさんのはなしがのうりをよぎった。)

そちらに足を踏み出しかけると、いつかの山下さんの話が脳裏を過ぎった。

(「まだおゆはってないゆぶねに、たってるんだ」)

「まだお湯張ってない湯船に、立ってるんだ」

(dが・・・・・・)

Dが・・・・・・

(ぞわぞわとせすじがつめたくなる。だれだかわからないじんぶつがむひょうじょうで)

ぞわぞわと背筋が冷たくなる。誰だか分からない人物が無表情で

(どあのむこうにたっているのをかってにのうがいめーじしてしまう。)

ドアの向こうに立っているのを勝手に脳がイメージしてしまう。

(ちゅうちょしかけて、なんとかそれをふりはらうとはんぶんしまったどあをひらけはなつ。)

躊躇しかけて、なんとかそれを振り払うと半分しまったドアを開け放つ。

(さわださんがこきざみにからだをふるわせながらたっているせなかがめにはいる。)

沢田さんが小刻みに身体を震わせながら立っている背中が目に入る。

(そのかたこしに、せんめんじょのかがみがあった。)

その肩越しに、洗面所の鏡があった。

(そのまんなかがわられていて、ほうしゃじょうにきれつがのびている。)

その真ん中が割られていて、放射状に亀裂が伸びている。

(おびえるさわださんのかおがまるできりさかれたようにふせんめいにうつっていた。)

怯える沢田さんの顔がまるで切り裂かれたように不鮮明に写っていた。

(おれもかたまりかけたが、いやなよかんがしてすぐさまふろばのとにてをかける。)

俺も固まりかけたが、嫌な予感がしてすぐさま風呂場の戸に手を掛ける。

(おもいきってあけはなつと、ひんやりしたくうきがかおにあたった。)

思い切って開け放つと、ひんやりした空気が顔に当たった。

(なかにはだれもいなかった。ゆぶねのふたはとられ、おゆもはられていない。)

中には誰もいなかった。湯船の蓋は取られ、お湯も張られていない。

(はあ、というこえがしてそれがじぶんのだしたあんどのためいきだときづくまで)

はあ、という声がしてそれが自分の出した安堵のため息だと気づくまで

(すこしじかんがかかった。)

少し時間が掛かった。

(「どうして、これ、こんな」)

「どうして、これ、こんな」

(われたかがみのまえでぼうだちになっているさわださんに「だいじょうぶです」と)

割れた鏡の前で棒立ちになっている沢田さんに「大丈夫です」と

(むせきにんなこえをかける。)

無責任な声を掛ける。

(ほかにいじょうはないかとへやのすべてのばしょをかくにんしてまわったが)

他に異常はないかと部屋のすべての場所を確認して回ったが

(けっきょくなにもみつけられなかった。)

結局なにも見つけられなかった。

など

(たにんのへやでかってにやさがしをすることにたいする)

他人の部屋で勝手に家探しをすることに対する

(ひけめをあまりかんじなかったのは、)

引け目をあまり感じなかったのは、

(あまりにせいかつかんのないくうかんだったからだろうか。)

あまりに生活感のない空間だったからだろうか。

(しばらくしておちついたさわでんさんに「もうかえりましょう」というと、)

しばらくして落ち着いた沢田さんに「もう帰りましょう」と言うと、

(かるくわらってうなずいた。)

軽く笑って頷いた。

(やましたさんのけいたいはあいかわらずつうじないし、へやにかえってくるようすもなかったが、)

山下さんの携帯は相変わらず通じないし、部屋に帰ってくる様子もなかったが、

(なにかのじけんにまきこまれたとはんだんするにはざいりょうがとぼしすぎる。)

なにかの事件に巻き込まれたと判断するには材料が乏しすぎる。

(われたかがみはきになったけれどものとりやぼうかんにおそわれたにしては)

割れた鏡は気になったけれど物取りや暴漢に襲われたにしては

(へやのなかにまったくあらされたけいせきがない。)

部屋の中に全く荒らされた形跡がない。

(このていどでけいさつにれんらくしてやましたさんにとってもめいわくだろう)

この程度で警察に連絡して山下さんにとっても迷惑だろう

(というはんだんをせざるをえなかった。)

という判断をせざるを得なかった。

(ただあれだけしんけいしつにへやをせいりせいとんしているひとが、)

ただあれだけ神経質に部屋を整理整頓している人が、

(どうしてわれたかがみをそのままにしているのか、それだけはよくわからない。)

どうして割れた鏡をそのままにしているのか、それだけはよく分からない。

(「dがふえている」というかきこみをしてから、)

「Dが増えている」という書き込みをしてから、

(やましたさんはかぎもかけずにでていった。)

山下さんは鍵も掛けずに出て行った。

(まるでなにかからにげるように。かがみはそのときわれたのか。わったのはだれ?)

まるで何かから逃げるように。鏡はその時割れたのか。割ったのは誰?

(あれこれかんがえているとまたうすきみわるくなってくる。)

あれこれ考えているとまた薄気味悪くなってくる。

(さわださんにつつかれてわれにかえるとげんかんにむかった。)

沢田さんにつつかれて我に返ると玄関に向かった。

(へやをでるとき、あがりぐちにみおぼえのあるくつがおいてあるのにきがついた。)

部屋を出るとき、上り口に見覚えのある靴が置いてあるのに気がついた。

(やましたさんがいつもはいているくつだった。はだしでそとへ?まさかな。)

山下さんがいつも履いている靴だった。裸足で外へ?まさかな。

(ほかのくつくらいもっているだろう。)

他の靴くらい持っているだろう。

(へんなかんがえをふりはらいがいへでると、)

変な考えを振り払い外へ出ると、

(すぐにどあのかぎをかけられないことにおもいいたる。)

すぐにドアの鍵をかけられないことに思い至る。

(ひらいていたからといってそのままにしていくのはまずいきがして、)

開いていたからといってそのままにして行くのはまずい気がして、

(どうしようかなやんでいると)

どうしようか悩んでいると

(さわださんがどあのそばにおかれていたちいさなはちうえのしたにてをいれる。)

沢田さんがドアの側に置かれていた小さな鉢植えの下に手を入れる。

(ひっぱりだしたのはかぎだった。)

引っ張り出したのは鍵だった。

(「ないしょ」)

「内緒」

(ひとさしゆびをくちびるにあてながらかのじょはどあにかぎをかけ、またもとのばしょにもどした。)

人差し指を唇に当てながら彼女はドアに鍵を掛け、また元の場所に戻した。

(そういえば、ふたりはつきあっているといううわさがあったことをおもいだす。)

そういえば、二人は付き合っているという噂があったことを思い出す。

(いまさらだが、さわださんがやけにやましたさんをしんぱいしているりゆうがわかった。)

今さらだが、沢田さんがやけに山下さんを心配している理由が分かった。

(とちゅうまでさわださんをおくってからじぶんのいえにかえるあいだ、)

途中まで沢田さんを送ってから自分の家に帰る間、

(じてんしゃをこぎながらふとおもったことがある。)

自転車をこぎながらふと思ったことがある。

(やましたさんのたいけんのなかで、きたくちょくごにかぎをしたはずのどあがあいていて)

山下さんの体験の中で、帰宅直後に鍵をしたはずのドアが開いていて

(だれかのかおがのぞいていたというぶぶん。)

誰かの顔が覗いていたという部分。

(そのあとちかづくとどあがしまって、のぶをみるとかぎがかかったままだったという)

その後近づくとドアが閉まって、ノブを見ると鍵がかかったままだったという

(かいだんじみたはなしだったが、じっさいああしてどあのそばにかぎをかくしてあったのなら、)

怪談じみた話だったが、実際ああしてドアの側に鍵を隠してあったのなら、

(それをしるにんげんにはふかのうなことではない。)

それを知る人間には不可能なことではない。

(いったいやましたさんのいうdとは、かれののうがうみだすまぼろしなのか。)

一体山下さんの言うDとは、彼の脳が生み出す幻なのか。

(それともかれののうがかぶせるとくめいのかめんをつけたなまみのだれかなのか・・・・・)

それとも彼の脳が被せる匿名の仮面を着けた生身の誰かなのか・・・・・

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告