四つの顔 -12-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(さんかげつがたった。)

三ヶ月が経った。

(あれからついにやましたさんのすがたをみることはなかった。しっそうしたのだ。)

あれからついに山下さんの姿を見ることはなかった。失踪したのだ。

(しごとさきにもつげずにいなくなったらしいということをさわださんからきかされた。)

仕事先にも告げずにいなくなったらしいということを沢田さんから聞かされた。

(しばらくはしんぶんやてれびでじもとのしょうがいじけんのにゅーすがあるたびに)

しばらくは新聞やテレビで地元の傷害事件のニュースがあるたびに

(やましたさんがかかわっていないかとおそれたものだったが、きゆうにおわっている。)

山下さんが関わっていないかと恐れたものだったが、杞憂に終わっている。

(あぱーとのへやはほしょうにんになっていたかぞくがかたづけたそうだ。)

アパートの部屋は保証人になっていた家族が片付けたそうだ。

(いまはそのへやにはそんなけいいもしらないあたらしいじゅうにんがはいっている。)

今はその部屋にはそんな経緯も知らない新しい住人が入っている。

(はるになり、ゆうけいむけいのさまざまなわかれがやってきた。)

春になり、有形無形の様々な別れがやってきた。

(かんごふをしていたさわださんがじっかのあるけんがいのべつのびょういんへうつることになり、)

看護婦をしていた沢田さんが実家のある県外の別の病院へ移ることになり、

(おかるとふぉーらむのめんばーでおわかれかいとしょうしたおふかいをひらいた。)

オカルトフォーラムのメンバーでお別れ会と称したオフ会を開いた。

(ひとあたりもよく、おかるてぃっくなわだいをおおくていきょうしてくれた)

人当たりも良く、オカルティックな話題を多く提供してくれた

(こうろうしゃならではのあつかいだった。)

功労者ならではの扱いだった。

(さわださんはさんざんまわりからおさけをつがれてかなりよいがまわったらしく、)

沢田さんは散々周りからお酒を注がれてかなり良いが回ったらしく、

(くちかずがへってきたかとおもうとそとのくうきがすいたいといいだしたので)

口数が減ってきたかと思うと外の空気が吸いたいと言い出したので

(おれがつきそっていざかやのそとにでた。)

俺が付き添って居酒屋の外に出た。

(しゅやくがいなくてももりあがっているえんせきをしりめにさわださんは)

主役がいなくても盛り上がっている宴席を尻目に沢田さんは

(ほどうにしょくじゅされたけやきにもたれかかるようにしてたっている。)

歩道に植樹されたケヤキにもたれかかるようにして立っている。

(「はきますか」ときいてちかづこうとしたおれにかのじょはあたまをふって、)

「吐きますか」と訊いて近づこうとした俺に彼女は頭を振って、

(かわりに「でんわがあった」といった。)

かわりに「電話があった」と言った。

(「だれからです」)

「誰からです」

など

(「やましたさん」)

「山下さん」

(いっしゅんだれのことかわからなかった。やましたさん。やましたさん?)

一瞬誰のことかわからなかった。ヤマシタさん。ヤマシタさん?

(「げんきか、なんていうから、どこにいるのってどなってやったら、)

「元気か、なんて言うから、どこにいるのって怒鳴ってやったら、

(へやにいるよ、って」)

部屋にいるよ、って」

(やましたさんって、あのやましたさんなのか。)

山下さんって、あの山下さんなのか。

(「いるわけないじゃない。あのへや、もうほかのひとがすんでるんだし。)

「いるわけないじゃない。あの部屋、もう他の人が住んでるんだし。

(そういってやったら、そんなはずはないってわらうの。)

そう言ってやったら、そんなはずはないって笑うの。

(ぼくはずっとここにいるって」)

ぼくはずっとここにいるって」

(なかばかくごしていたきょうきにさむけがするのとどうじに、みょうなふごうがあたまにひっかかる。)

半ば覚悟していた狂気に寒気がするのと同時に、妙な符合が頭に引っ掛かる。

(さいしょにさわださんとへやをたずねたとき、おれたちがそこにいたとおもわれるじかんたいに)

最初に沢田さんと部屋を訪ねた時、俺たちがそこにいたと思われる時間帯に

(かきこみがあったこと。そのおれたちをどこかでみていたかのようなそのないよう。)

書き込みがあったこと。その俺たちをどこかで見ていたかのようなその内容。

(そしてげんかんのくつ。まるでめにみえないかれがひっそりとそこにいたかのような。)

そして玄関の靴。まるで目に見えない彼がひっそりとそこにいたかのような。

(「なにしてたのってきいたら、ずっとさがしまわってたって」)

「なにしてたのって訊いたら、ずっと探し回ってたって」

(なにを?きまっている。dだ。)

なにを?決まっている。Dだ。

(「あいつらはにんげんのつもりなんだって。いつのまにかそのほんにんと)

「あいつらは人間のつもりなんだって。いつの間にかその本人と

(いれかわってるんだって。じぶんでもきづいていないからふつうのにんげんみたいに)

入れ替わってるんだって。自分でも気づいていないから普通の人間みたいに

(せいかつしてるけど、ぼくにだけはわかるんだって。dのかおにみえるから」)

生活してるけど、ぼくにだけは分かるんだって。Dの顔に見えるから」

(さがして、どうしたんだ?)

探して、どうしたんだ?

(さわださんはかおをけやきのみきのほうにむけたままぽつりぽつりとかたる。)

沢田さんは顔をケヤキの幹の方に向けたままポツリポツリと語る。

(「ふりじゃなくて、つもりだから。おしえてあげればいいだけなんだって。)

「フリじゃなくて、ツモリだから。教えてあげればいいだけなんだって。

(おまえはにんげんじゃないよって。そしたら・・・・・」)

お前は人間じゃないよって。そしたら・・・・・」

(いまわしいことばをのみこむようにおしだまる。)

忌まわしい言葉を飲み込むように押し黙る。

(「こわかった。かれがなにをいっているのかわからない。)

「怖かった。彼がなにを言っているのか分からない。

(でんわごしにこえがちかくなったりとおくなったりしてた。くるってるとおもった。)

電話越しに声が近くなったり遠くなったりしてた。狂ってると思った。

(でもくるってるのはわたしかもしれない。)

でも狂ってるのは私かも知れない。

(そんなでんわほんとうはかかってきてなかったのかもしれない」)

そんな電話本当は掛かってきてなかったのかも知れない」

(ちいさなこえがかすかにふるえている。)

小さな声が微かに震えている。

(じぶんのしゅういのにんげんがいつのまにかよくにたまったくべつのそんざいに)

自分の周囲の人間がいつの間にか良く似た全く別の存在に

(いれかわられているというもうそうにとりつかれるというのはきいたことがあるが、)

入れ替わられているという妄想にとりつかれるというのは聞いたことがあるが、

(やましたさんはすこしちがうようだ。)

山下さんは少し違うようだ。

(いれかわっているのは、かれじしんなのではないか?)

入れ替わっているのは、彼自身なのではないか?

(いや、いれかわりといっていいのかわからない。)

いや、入れ替わりと言っていいのか分からない。

(きゃっかんてきにみてかれのいるくうかんとわれわれのいるくうかんとがまじわっていないという、)

客観的に見て彼のいる空間と我々のいる空間とが交わっていないという、

(このふかしぎなげんしょうにこちらのあたまもこんがらがってくる。)

この不可思議な現象にこちらの頭もこんがらがってくる。

(やましたさんはたしかにくるいかけていた。)

山下さんは確かに狂いかけていた。

(けれどそのきょうきが、うちがわにだけでなくそとがわ、)

けれどその狂気が、内側にだけでなく外側、

(つまりげんじつにまでじわじわとしんじゅんしていったというのか。)

つまり現実にまでじわじわと浸潤していったというのか。

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