洒落怖《背無し》

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問題文

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(かいしゃからのきろのちちゅう、あるだいがくのまえをとおる。)

会社からの帰路の地中、ある大学の前を通る。

(そこはみはらしのよいただのちょくせんだが、なぜかじこがおおいことでゆうめいだった。)

そこは見晴らしの良いただの直線だが、何故か事故が多い事で有名だった。

(そのみちをあまりつかわないひとにはわからないだろうが、)

その道をあまり使わない人には分からないだろうが、

(まいにちしゃでしゅっきんするおれやどうりょうにはじこのりゆうがあからさまだった。)

毎日車で出勤する俺や同僚には事故の理由が明白だった。

(あるおっさんがげんいんなのだ。)

あるおっさんが原因なのだ。

(そのおっさんはだいがくてまえのおうだんほみちのわきにたっている、それもまいにち。)

そのおっさんは大学手前の横断歩道の脇に立っている、それも毎日。

(あめのひもひるもよるも、ただむひょうじょうでつったっている。)

雨の日も昼も夜も、ただ無表情で突っ立っている。

(そしてなぜかからだごとまっすぐこちらにかおをむけているのだ。)

そしてなぜか体ごと真っ直ぐこちらに顔を向けているのだ。

(おっさんにきづいてからしばらくは)

おっさんに気付いてから暫くは

(「きみがわるいひとがいるなあ」ていどのにんしきしかなかった。)

「気味が悪い人がいるなあ」程度の認識しかなかった。

(しかしさらなるおっさんのいじょうせいにきづくのに、そうじかんはかからなかった。)

しかし更なるおっさんの異常性に気付くのに、そう時間はかからなかった。

(おっさんはからだごとこちらをむいている。)

おっさんは体ごとこちらを向いている。

(いつ、どんなときでも)

いつ、どんな時でも・

(たとえばおうだんほどうのてまえ30mからおっさんをにんしきしたとする。)

例えば横断歩道の手前30mからおっさんを認識したとする。

(「ああ、きょうもいるな。そしてこっちみてる・・・」)

「ああ、今日もいるな。そしてこっち見てる・・・」

(そのままおうだんほどうをつうかして、すばやくばっくみらーでおっさんをかくにんすると。)

そのまま横断歩道を通過して、素早くバックミラーでおっさんを確認すると。

(やはりこちらにからだごとかおをむけているのだ。)

やはりこちらに体ごと顔を向けているのだ。

(このいじょうさがりかいできるだろうか?)

この異常さが理解できるだろうか?

(おっさんはどんなときでもかならず、ましょうめんからこちらをみているのだ。)

おっさんはどんな時でも必ず、真正面からこちらを見ているのだ。

(むきをかえるけはいすらみせず、しゅんじにこちらをついせきしてくる。)

向きを変える気配すら見せず、瞬時にこちらを追跡してくる。

など

(それにきづいたとき、おれはかくしんした。)

それに気づいた時、俺は確信した。

(あのおっさんはにんげんではないのだと。)

あのおっさんは人間ではないのだと。

(うすらさむさをかんじたおれがそのことをどうりょうにはなしてみると、)

うすら寒さを感じた俺がそのことを同僚に話してみると、

(そいつもおっさんのことをしっていた。)

そいつもおっさんのことを知っていた。

(なんでもじもとでは「せなし」というめいしょうでゆうめいらしい。)

何でも地元では「背無し」という名称で有名らしい。

(たしかにおっさんはしょうめんしかみせない、こうとうぶやせなかはみたことがなかった。)

確かにおっさんは正面しか見せない、後頭部や背中は見たことがなかった。

(へんなれいもいるんだな、とそのひはどうりょうとわらいあっておわった。)

変な霊もいるんだな、とその日は同僚と笑い合って終わった。

(おれがびびりながらも、あるおもいをもったのはそのときだった。)

俺がビビりながらも、ある思いを持ったのはその時だった。

(なんとかしておっさんのせなかをみたい、そうおもうようになったのだ。)

何とかしておっさんの背中を見たい、そう思うようになったのだ。

(まいにちつうきんしながらおっさんをかんさつする。)

毎日通勤しながらおっさんを観察する。

(ふつうにとおるだけではだめだ、おっさんにはまったくすきがない。)

普通に通るだけではだめだ、おっさんには全く隙が無い。

(つうかご、ばっくみらーをめにうつすしゅんかんにおっさんはからだのむきをかえてしまう。)

通過後、バックミラーを目に移す瞬間におっさんは体の向きを変えてしまう。

(おれはちゃんすをまつことにした。)

俺はチャンスを待つことにした。

(すうじつご、ざんぎょうでおそくなったおれはしんやのきろをいそいでいた。)

数日後、残業で遅くなった俺は深夜の帰路を急いでいた。

(そしてあるみちにさしかかる。)

そしてある道に差し掛かる。

(めをやるとやはりいた、おっさんがこちらをむいている。)

目をやるとやはりいた、おっさんがこちらを向いている。

(「せなし」のゆらいをおもいだしたおれはすばやくまわりをかくにんした。)

「背無し」の由来を思い出した俺は素早く周りを確認した。

(しんやのちょくせんどうろ。)

深夜の直線道路。

(さきわいぜんごにほかのくるまはなく、ほこうしゃもいない。)

幸い前後に他の車はなく、歩行者もいない。

(しんごうはあお、ちゃんすだった。)

信号は青、チャンスだった。

(おうだんほどうのてまえでぐっとしゃそくをおとしてはんどるをこていする。)

横断歩道の手前でぐっと車速を落としてハンドルを固定する。

(とにかくゆっくり、まっすぐに。)

とにかくゆっくり、真っ直ぐに。

(そしてこころをおちつけしせんをむけた。)

そして心を落ち着け視線を向けた。

(おっさんはいつものようにむひょうじょうでこちらをみている。)

おっさんはいつものように無表情でこちらを見ている。

(めはなにのかんじょうもしめしておらず、ほんとうにただたっているだけだ。)

目は何の感情も示しておらず、本当にただ立っているだけだ。

(しかしあらためてじっくりみるおっさんは、いつもよりぶきみだった。)

しかし改めてじっくり見るおっさんは、いつもより不気味だった。

(なにをかんがえているかわからないというか、えたいがしれないのだ。)

何を考えているか分からないというか、得体が知れないのだ。

(やがてくるまはゆっくりとおうだんほどうをよこぎっていく。)

やがて車はゆっくりと横断歩道を横切っていく。

(めせんはおっさんからはずさない、こわくてもいじでみつづけた。)

目線はおっさんから外さない、怖くても意地で見続けた。

(するとおれがめせんをきらないからからだのむきをかえるひまがないのか、)

すると俺が目線を切らないから体の向きを変える暇がないのか、

(いつもしょうめんからしかみれなかったおっさんのかおのかくどがゆっくりとかわる。)

いつも正面からしか見れなかったおっさんの顔の角度がゆっくりと変わる。

(くるまのうごきにあわせてゆっくり、ゆっくりと。)

車の動きに合わせてゆっくり、ゆっくりと。

(おっさんははじめのむきのままびどうだにしない。)

おっさんは初めの向きのまま微動だにしない。

(ついにおっさんのかんぜんなよこがおがみえたとき、「これはいける!」とかくしんした。)

ついにおっさんの完全な横顔が見えた時、「これはいける!」と確信した。

(おっさんからめせんをきらないためにおれもかおのかくどをかえなければいけないため、)

おっさんから目線を切らない為に俺も顔の角度を変えなければいけない為、

(いまやくるまのこうぶがらすからおっさんをみるようなたいせいだ。)

今や車の後部ガラスからおっさんを見るような体勢だ。

(とうぜんまえなんかみえちゃいないが、きにもしなかった。)

当然前なんか見えちゃいないが、気にもしなかった。

(もうすぐで「せなし」のゆらいにうちかつことができるのだ。)

もうすぐで「背無し」の由来に打ち勝つことができるのだ。

(そうしてゆっくりとながいじかんがながれ・・・ついにそのしゅんかんがおとずれた。)

そうしてゆっくりと長い時間が流れ・・・ついにその瞬間が訪れた。

(「せなし」のいままでみたことのないせなかがこうとうぶが、)

「背無し」の今まで見たことのない背中が後頭部が、

(いまはっきりとみえたのだ。)

今はっきりと見えたのだ。

(それはあっけないほどにぼんようなせなかだった。)

それはあっけない程に凡庸な背中だった。

(なにひとつふしぎなところはない。)

何一つ不思議なところはない。

(しかしおれのむねにはささやかなたっせいかんがあった。)

しかし俺の胸にはささやかな達成感があった。

(じっくりとせなかをかんさつしまんぞくかんをあじわったあと、)

じっくりと背中を観察し満足感を味わった後、

(おれはようやくめせんをきってまえをむいた。)

俺はようやく目線を切って前を向いた。

(いや、むこうとした。)

いや、向こうとした。

(めせんをきってまえをむこうとしたおれはしかし、あるものをみてかたまった。)

目線を切って前を向こうとした俺はしかし、あるものを見て固まった。

(じょしゅせきにおっさんがいた、ものすごいいかりのぎょうそうで。)

助手席におっさんがいた、物凄い怒りの形相で。

(しんぞうがとまったかとおもった。)

心臓が止まったかと思った。

(「うわああ!」)

「うわああ!」

(おれはひめいをあげ、ぶれーきをふんだ。)

俺は悲鳴を上げ、ブレーキを踏んだ。

(じょこうしていたはずのくるまはなぜかきょうれつなしょうげきとともにでんちゅうにとつげきし、)

徐行していたはずの車は何故か強烈な衝撃とともに電柱に突撃し、

(おれはしっしんした。)

俺は失神した。

(よくあさ、びょういんでめがさめたおれはすぐにけいさつにちょうしゅをうけた。)

翌朝、病院で目が覚めた俺はすぐに警察に聴取を受けた。

(さいわいにおれをのぞいてけがひとはなし。)

幸いに俺を除いてけが人はなし。

(おれのくるまがぜんそんしたいがいにたいしたきぶつそんかいもなかった。)

俺の車が全損した以外に大した器物損壊もなかった。

(けいさつはじこのげんいんをすぴーどのだしすぎによるぼうそううんてんとだんていしたが、)

警察は事故の原因をスピードの出しすぎによる暴走運転と断定したが、

(おれはこうぎするきりょくもなかった。)

俺は抗議する気力もなかった。

(あんなこと、はなすきすらおきなかった。)

あんなこと、話す気すら起きなかった。

(あれから5ねん、おれはつうきんのためにいまもあのみちをはしっている。)

あれから5年、俺は通勤の為に今もあの道を走っている。

(おっさんはかわらずいるし、あいかわらずじこもおおい。)

おっさんは変わらずいるし、相変わらず事故も多い。

(ただひとつだけかわったことは、おれがおっさんのほうをみなくなったことだろう。)

ただ一つだけ変わったことは、俺がおっさんの方を見なくなったことだろう。

(あのとき、ちょうしゅのけいさつかんがぼそっといった、)

あの時、聴取の警察官がボソっと言った、

(「こんかいはつれていかれなかったか」ということばがいまもみみからはなれない。)

「今回は連れていかれなかったか」という言葉が今も耳から離れない。

(いじょう)

以上

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