怖い話《天井人》

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問題文

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(やっとのことでしゅうしょくし、あぱーとでひとりぐらしをしていた23さいごろのはなしです。)

やっとのことで就職し、アパートで一人暮らしをしていた23歳頃の話です。

(しょくばがしぶやだったのでとうきゅうでんえんとしせんのようがにやすいあぱーとをみつけたんです。)

職場が渋谷だったので東急田園都市線の用賀に安いアパートを見つけたんです。

(あぱーとといってもひとりぐらしのおおやのおばさんのふつうのみんか。)

アパートといっても一人暮らしの大家のおばさんの普通の民家。

(そのにかいのさんへやをまがししただけの、きょうどうといれ、げんかんべつという)

その二階の三部屋を間貸ししただけの、共同トイレ、玄関別という

(わかいじょせいのひとりぐらしにはぜったいだめなぶっけんで、)

和解女性の一人暮らしには絶対ダメな物件で、

(せきゅりてぃなんてもんじゃありませんでした。)

セキュリティなんてもんじゃありませんでした。

(やすげっきゅうだったし、ねにかえるだけのへやだからこだわりはありませんでした。)

安月給だったし、寝に帰るだけの部屋だからこだわりはありませんでした。

(むしろおおやがかいかにいるので、なにかあったときはこころづよいとおもっていました。)

むしろ大家が階下にいるので、何かあった時は心強いと思っていました。

(わたしのへやはまんなかで、みぎどなりにはだんせいがひとりにゅうきょしていると)

私の部屋は真ん中で、右隣には男性が一人入居していると

(おおやのおばさんがいっていました。)

大家のおばさんが言っていました。

(へんにかかわりをもってもめいわくになるのでは?とさっするのが)

変に関わりをもっても迷惑になるのでは?と察するのが

(とかいせいかつのりゅうぎだとしんじていましたから、あいさつはあえてしませんでした。)

都会生活の流儀だと信じていましたから、挨拶はあえてしませんでした。

(へやのかべはひどくうすくて、せいかつおんはきにしませんでした。)

部屋の壁はひどく薄くて、生活音は気にしませんでした。

(てれびのおと、くしゃみのおと、いびきやおならのおとまでも。)

テレビの音、くしゃみの音、いびきやおならの音までも。

(でもわたしはきにしませんでした。)

でも私は気にしませんでした。

(おたがいさまだとおもっていたので、わたしもなんどかおおきなおならもしましたよ。)

お互い様だと思っていたので、私も何度か大きなおならもしましたよ。

(とうじのわたしはおんなとしてのじかくはまったくありませんでした。)

当時の私は女としての自覚は全くありませんでした。

(いきることにせいいっぱいでしたから。)

生きる事に精一杯でしたから。

(あるよるのことでした。)

ある夜のことでした。

(しごとがはやくおわり、ゆうしょくをてきとうにちょうたつしへやにもどりました。)

仕事が早く終わり、夕食を適当に調達し部屋に戻りました。

など

(てれびをみながらたべていたら、へやのてんじょうからとつぜん)

テレビを見ながら食べていたら、部屋の天井から突然

(みしっ、ずるずる、べきべき。とことおとがするのです。)

みしっ、ずるずる、べきべき。と異音がするのです。

(「えっ?」とてんじょうをみあげました。)

「えっ?」と天井を見上げました。

(もくせいのきたないしみだらけのてんじょうに、やく5せんちほどのあながありました。)

木製の汚いシミだらけの天井に、約5センチほどの穴がありました。

(よくみるとそのなかに、こちらをぎょうしするにんげんのめだまがあったのです。)

よく見るとその中に、こちらを凝視する人間の目玉があったのです。

(「わーっ!」とさけびながら、わたしはかいかのおおやさんにじじょうをつたえましたが、)

「わーっ!」と叫びながら、私は階下の大家さんに事情を伝えましたが、

(おおやのおばさんは「あんた、おとこでもひっぱりこんだんじゃないの?」と)

大家のおばさんは「あんた、男でも引っ張り込んだんじゃないの?」と

(なんというとんちんかんなたいおうでしょう。)

なんという頓珍漢な対応でしょう。

(あきれはて、わたしはけいさつをよびました。)

あきれ果て、私は警察を呼びました。

(すぐにたまがわけいさつしょからけいじがふたり、へやにきました。)

すぐに玉川警察署から刑事が二人、部屋に来ました。

(からだぜんしんで「おれはけいじだ!」としゅちょうしているかのようなひとりが、)

体全身で「俺は刑事だ!」と主張しているかのような一人が、

(またたきもせずに、わたしのめをみつめじんもんしました。)

瞬きもせずに、私の目を見つめ尋問しました。

(わたしもまけるもんか!というきがいでばんばんしょうじきにこたえました。)

私も負けるもんか!という気概でばんばん正直に答えました。

(とちゅうでおおやのおばさんが、)

途中で大家のおばさんが、

(「このひとはおとこをつれこんでいるんですよ」とくちをはさみ、けいじさんは)

「この人は男を連れ込んでいるんですよ」と口を挟み、刑事さんは

(「おおやさんはひっこんでろ!このひとはうそをついていないから」)

「大家さんは引っ込んでろ!この人は嘘をついていないから」

(とすごいはくりょくでいうと、おおやのおばさんはすごすごとひきさがっていきました。)

と凄い迫力で言うと、大家のおばさんはすごすごと引き下がっていきました。

(しばらくしてけいさつからきいたこのけんのてんまつですが、)

暫くして警察から聞いたこの件の顛末ですが、

(となりにすんでいたのはaというなのむしょくで35さいのおとこ。)

隣に住んでいたのはAという名の無職で35歳の男。

(しかも、ここのおおやじょせいとはあいじんかんけいにあった、つまり「ひも」だった。)

しかも、ここの大家女性とは愛人関係にあった、つまり「ひも」だった。

(おおやはこのおとこのよくぼうをみたすために、わかいおんなをにゅうきょさせおとこをまんぞくさせていた。)

大家はこの男の欲望を満たす為に、若い女を入居させ男を満足させていた。

(これがはじめてではないとのことでした。)

これが初めてではないとのことでした。

(わたしはおとこのえさにされるところだったのです、ゆがみまくってますよ。)

私は男の餌にされるところだったのです、歪みまくってますよ。

(さらに、いっしゅうかんまえにはたまがわにかかるはしからみをなげしんだとのこと。)

さらに、一週間前には多摩川にかかる橋から身を投げ死んだとのこと。

(もうこんなおそろしいところにはいられるはずもありません。)

もうこんな恐ろしいところにはいられるはずもありません。

(おおやのばばあはれんじつけいさつでちょうしゅをうけてるすです。)

大家のばばあは連日警察で聴取を受けて留守です。

(じょせいのじょうしがしんぱいして、ひっこしさきのてはいをしてくれました。)

女性の上司が心配して、引っ越し先の手配をしてくれました。

(ほぼほぼにもつをまとめ、あとはひっこしぎょうしゃのとらっくをまつばかりです。)

ほぼほぼ荷物をまとめ、あとは引っ越し業者のトラックを待つばかりです。

(あっというまにはこびこまれました。)

あっという間に運び込まれました。

(にがにがしくどあをしめ、かぎをかけ、ふとどあのしたのすきまをみると、)

苦々しくドアを閉め、鍵をかけ、ふとドアの下の隙間を見ると、

(ちいさなふたつおりのちらしのようなかみがはさまっていました。)

小さな二つ折りのチラシのような紙が挟まっていました。

(てにとりひらきました、きたないじでした。)

手に取り開きました、汚い字でした。

(「あんたのことずっとみてたよすきだったまたあいにいくからまっててね」)

「あんたのことずっとみてたよすきだったまたあいにいくからまっててね」

(しゅんさつでにぎりつぶしました。)

瞬殺で握りつぶしました。

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