心霊写真 -17-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(「きんはいらない。わたしはやくざがきらいだ。)
「金は要らない。わたしはヤクザが嫌いだ。
(そのきんにあたまをおさえつけられたら、わたしはわたしをゆるせない」)
その金に頭を抑えつけられたら、わたしはわたしを許せない」
(ししょうはあっさりとそういった。)
師匠はあっさりとそう言った。
(まつうらのあおじろいかおからひょうじょうがきえる。)
松浦の青白い顔から表情が消える。
(「ことわると?」)
「断ると?」
(こころから、ひとのいのちを、なんともおもっていない。そういうこえだった。)
心から、人の命を、なんとも思っていない。そういう声だった。
(ぼくのしんぞうはいやなおとをたてている。)
僕の心臓は嫌な音を立てている。
(「おばけはすきだ。かいだんばなしを、きこうじゃないか」)
「オバケは好きだ。怪談話を、聞こうじゃないか」
(あっけらかんとしたくちょうだったが、)
あっけらかんとした口調だったが、
(そのはしにきょくげんまでのきんちょうのかけらがのぞいていた。)
その端に極限までの緊張の欠片が覗いていた。
(ぶきようなおんなだ。ぽつりと、まつうらのくちもとにひょうじょうがもどった。)
不器用な女だ。ぽつりと、松浦の口元に表情が戻った。
(ふところにいれかけてとまっていたてが、ようやくそのほんかいをとげ、)
懐に入れかけて止まっていた手が、ようやくその本懐を遂げ、
(いちまいのかみきれをとりだした。)
一枚の紙切れを取り出した。
(うけとったししょうはそれをおもしろくもなさそうにながめる。)
受け取った師匠はそれを面白くもなさそうに眺める。
(ぼくそのがわによって、てもとをのぞきこむ。)
僕その側に寄って、手元を覗き込む。
(しゃしんだった。いや、しゃしんをこぴーしたものか。)
写真だった。いや、写真をコピーしたものか。
(あじけないしろくろのかみに、じゅうにんあまりのにんげんがうつっている。)
味気ない白黒の紙に、十人あまりの人間が写っている。
(じょうしきのわしつにきものすがたのおとこがすわっていて、そのまわりをかこむように)
畳敷の和室に着物姿の男が座っていて、その回りを囲むように
(ぐんぷくをきたおとこたちがせいざをしてせすじをのばしている。)
軍服を着た男たちが正座をして背筋を伸ばしている。
(ぐんぷくたちはだれもみなわかい。そろってほほえみのひとつもうかべず、)
軍服たちは誰もみな若い。揃って微笑みの一つも浮かべず、
など
(ただなにかつよいいしをひめたようなひとみをしている。)
ただ何か強い意志を秘めたような瞳をしている。
(かぞえるとぐんぷくたちはちょうどじゅうにんいた。)
数えると軍服たちはちょうど十人いた。
(きものすがたのおとことあわせると、じゅういちにんがわしつのかみざがわのかべをせにして)
着物姿の男と合わせると、十一人が和室の上座側の壁を背にして
(こちらをむいているこうずだった。)
こちらを向いている構図だった。
(はいごのかべにはとりがとんでいるかけじくがみえる。)
背後の壁には鳥が飛んでいる掛け軸が見える。
(ふるいしゃしんだ。しろくろこぴーのまえも、もとからからーではなかったことがすいそくできる。)
古い写真だ。白黒コピーの前も、元からカラーではなかったことが推測できる。
(せんじちゅうにとられたものだろうか。)
戦時中に撮られたものだろうか。
(ししょうはけげんなかおで、そのしゃしんのなかほどをみつめている。)
師匠は怪訝な顔で、その写真の中程を見つめている。
(きものすがたのおとこがいるあたりだ。いや、せいかくにはそのおとこのかおのあたりをみている。)
着物姿の男がいるあたりだ。いや、正確にはその男の顔のあたりを見ている。
(かおをみている、とだんげんできないのは、そのきものすがたのおとこのかおは)
顔を見ている、と断言できないのは、その着物姿の男の顔は
(おおきくゆがんでくろくつぶれたようながしつになっているためだった。)
大きく歪んで黒く潰れたような画質になっているためだった。
(からだつきやふくそうで、おとこであること、そしてしゅういのぐんぷくたちほどわかくはない)
体つきや服装で、男であること、そして周囲の軍服たちほど若くはない
(こともあきらかだったが、どんなかおをしているのかまったくわからなかった。)
ことも明らかだったが、どんな顔をしているのか全く分からなかった。
(「そのかおはちがう。ただのふくしゃみすです。そんなことはわかっている。)
「その顔は違う。ただの複写ミスです。そんなことは分かっている。
(そんなことでれいのうしゃをたよろうとはおもわない」)
そんなことで霊能者を頼ろうとは思わない」
(そのかおのことではない。まつうらはもういちどそういった。)
その顔のことではない。松浦はもう一度そう言った。
(ひょうじょうはかわらないが、まるでてれかくしているようにおもえて、)
表情は変わらないが、まるで照れ隠しているように思えて、
(ぼくはすこしこのやくざにしんきんかんをもった。)
僕は少しこのヤクザに親近感を持った。
(もういちどよくみると、がぞうのゆがみはきものすがたのおとこのかおだけではなく、)
もう一度よく見ると、画像の歪みは着物姿の男の顔だけではなく、
(しゃしんのちゅうおうのらいんぜんいんにわたってはっせいしていた。)
写真の中央のライン全員に渡って発生していた。
(「じゅんじょだててせつめいするひつようがあります。)
「順序だてて説明する必要があります。
(たむらがこのふくしゃのげんぽんであるしゃしんをもたらしたのはきのうのあさ。)
田村がこの複写の原本である写真をもたらしたのは昨日の朝。
(あるべんごしじむしょのおふぃすにじさんしてきたのです。)
ある弁護士事務所のオフィスに持参してきたのです。
(そのべんごしはわれわれのこもんをひきうけてくれているじんぶつなのですが、)
その弁護士は我々の顧問を引き受けてくれている人物なのですが、
(たむらはそれをしっていて、われわれとのこうしょうのたんしょとして、)
田村はそれを知っていて、我々との交渉の端緒として、
(そのべんごしじむしょをえらんだということです。たしかにこんなもの・・・・・」)
その弁護士事務所を選んだということです。確かにこんなもの・・・・・」
(まつうらはこぴーをさげすんだようなめでみながら、ふんとわらった。)
松浦はコピーを蔑んだような眼で見ながら、ふんと笑った。
(「われわれにみせたところで、そのかちにきづくはずがない。)
「我々に見せたところで、その価値に気づくはずがない。
(とくにわかいしゅうなどはね。たむらはけんめいでしたよ。)
特に若い衆などはね。田村は賢明でしたよ。
(べんごしせんせいはそのてのはなしのまにあでね。)
弁護士先生はその手の話のマニアでね。
(あぽいんともなしにたずねてきたおとこのよたばなしから、)
アポイントもなしに訪ねて来た男の与太話から、
(ことのじゅうようせいをみぬいてすぐわたしにれんらくをくれました。)
ことの重要性を見抜いてすぐ私に連絡をくれました。
(「ふはつだんがでてきた」と。「それもかくばくだんのだ」ともいってましたって」)
「不発弾が出てきた」と。「それも核爆弾のだ」とも言ってましたって」
(まつうらはすーつのむねのうちぽけっとにてをいれ、いっさつのほんをとりだした。)
松浦はスーツの胸の内ポケットに手を入れ、一冊の本を取り出した。