心霊写真 -18-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(ぶんこぼんだ。ぺーじのところどころにふせんがついている。)
文庫本だ。ページのところどころに付箋がついている。
(「きえたたいぎゃくじけん」)
「消えた大逆事件」
(そんなたいとるがひょうしにみえる。)
そんなタイトルが表紙に見える。
(「このほんはそのべんごしせんせいにおしえてもらったんですがね。)
「この本はその弁護士先生に教えてもらったんですがね。
(なかなかきょうみぶかいものでした。)
なかなか興味深いものでした。
(たいぎゃくじけん、というものをきいたことがありますか」)
大逆事件、というものを聞いたことがありますか」
(たいぎゃくじけんか。にほんしでならったことがあるようなきがするが、)
大逆事件か。日本史で習ったことがあるような気がするが、
(はっきりとはおぼえていなかった。)
はっきりとは覚えていなかった。
(「てんのうやこうたいしなど、こうぞくにきがいをくわえようとすることです。)
「天皇や皇太子など、皇族に危害を加えようとすることです。
(せんぜんのけいほうではたいぎゃくざいとしてきょっけいにあたいするつみとされています。)
戦前の刑法では大逆罪として極刑に値する罪とされています。
(あらひとがみであったてんのうへいかにそんなおそれおおいことをするなんて、)
現人神であった天皇陛下にそんな恐れ多いことをするなんて、
(とうじとしてはいまよりもはるかにおもいたいざいですよ。)
当時としては今よりも遥かに重い大罪ですよ。
(そのたいぎゃくじけんとしては、おもによっつのじけんがしられているようです。)
その大逆事件としては、主に四つの事件が知られているようです。
(1910ねんの、しゃかいしゅぎしゃらによるめいじてんのうあんさつけいかく。)
1910年の、社会主義者らによる明治天皇暗殺計画。
(1923ねんの、しゃかいしゅぎしゃ・なんばだいすけのおこしたこうたいしそげきじけん。)
1923年の、社会主義者・難波大助の起こした皇太子狙撃事件。
(1925ねんの、ちょうせんじんあなーきすと・ぱくよるとそのあいじん、)
1925年の、朝鮮人アナーキスト・朴烈(パクヨル)とその愛人、
(あやこがけいかくしたとされるたいしょうてんのうしゅうげきけいかく。)
文子が計画したとされる大正天皇襲撃計画。
(そして1932ねんの、こうにちぶそうそしきのとうし、いぽんちゃんによる)
そして1932年の、抗日武装組織の闘士、李奉昌(イポンチャン)による
(しょうわてんのうしゅうげきじけん」)
昭和天皇襲撃事件」
(まつうらはおやゆびからよんほんのゆびをじゅんにおり、さいごにのこったこゆびをたてたままつづける。)
松浦は親指から四本の指を順に折り、最後に残った小指を立てたまま続ける。
など
(「いずれもしっぱいにおわっていますが、)
「いずれも失敗に終わっていますが、
(しゃかいにあたえたしょうげきはひじょうにおおきいものでした。)
社会に与えた衝撃は非常に大きいものでした。
(ないかくのせきにんもんだいとなり、そうじしょくにいたったものもありますし、)
内閣の責任問題となり、総辞職に至ったものもありますし、
(またいちばんゆうめいな1910ねんのいわゆるこうとくじけんでは、)
また一番有名な1910年のいわゆる幸徳事件では、
(こうとくしゅうすいらしゃかいしゅぎしゃのてっていだんあつにもつながりました。)
幸徳秋水ら社会主義者の徹底弾圧にもつながりました。
(じっさいは、しさつにやってきたこうぞくにきがいをくわえようとして、)
実際は、視察にやってきた皇族に危害を加えようとして、
(とりおさえられるような、とっぱつてきけーすなど、もっとあったはずです。)
取り押さえられるような、突発的ケースなど、もっとあったはずです。
(しかしたいぎゃくじけんとしてさばかれるのは、そのこうどうにふさわしいまがまがしいはいけいと、)
しかし大逆事件として裁かれるのは、その行動に相応しい禍々しい背景と、
(こうどにせいじてきなはんだんがあってこそです。)
高度に政治的な判断があってこそです。
(「やまざき、てんのうをうて」のおくさきなにがしのように、)
「ヤマザキ、天皇を撃て」の奥崎何某のように、
(ただめだちたいがためにぱちんこでてんのうをそげきするなどの、)
ただ目立ちたいがためにパチンコで天皇を狙撃するなどの、
(しようもないじけんは、たとえたいぎゃくざいがまだそんざいしたころにおこったとしても、)
しようもない事件は、たとえ大逆罪がまだ存在したころに起こったとしても、
(そのてきようはなかったでしょう。)
その適用はなかったでしょう。
(ほんらいのたいぎゃくじけんとは、しゃかいしゅぎしゃ、むせいふしゅぎしゃのたいとう、)
本来の大逆事件とは、社会主義者、無政府主義者の台頭、
(そしてちょうせんどくりつうんどうのげきかといったはんせいふてきなはいけいがあり、)
そして朝鮮独立運動の激化といった反政府的な背景があり、
(それにたいするだんこたるたいしょをするという、いしひょうじのばでもあったのです」)
それに対する断固たる対処をするという、意思表示の場でもあったのです」
(まつうらはぶんこぼんのぺーじをめくりながらたんたんとしゃべっている。)
松浦は文庫本のページを捲りながら淡々と喋っている。
(だが、そのめはほらあなのようにひっそりとしずまりかえっていて、)
だが、その眼は洞穴のようにひっそりと静まり返っていて、
(もじなどおっていないようにみえた。)
文字など追っていないように見えた。
(ただ、かかれているないようをなぞっているだけだ、というぽーずのためだけに)
ただ、書かれている内容をなぞっているだけだ、というポーズのためだけに
(ほんをひらいているような。そんないんしょうをうけた。)
本を開いているような。そんな印象を受けた。
(だとしたら、まつうらはほんのないようをきおくしているということだ。)
だとしたら、松浦は本の内容を記憶しているということだ。
(ただでさえぼうりょくのせかいにみをおいているにんげんというひにちじょうてきな)
ただでさえ暴力の世界に身を置いている人間という非日常的な
(そんざいだというのに、さらにそこからもはいだしているいしつさをかんじて、)
存在だというのに、さらにそこからもはい出している異質さを感じて、
(ぼくはえたいのしれないものをみるおもいがした。)
僕は得体の知れないものを見る思いがした。
(またいちまい、ぺーじがまくられる。)
また一枚、ページが捲られる。
(「ところが、です。)
「ところが、です。
(せいじはいけいのないしょうどうてきなやすっぽいぼうきょではなく、)
政治背景のない衝動的な安っぽい暴挙ではなく、
(じゅうようないみをもつけいかくてきなさくぼうだったというのに、)
重要な意味を持つ計画的な策謀だったというのに、
(たいぎゃくじけんとしてれきしにのこっていない、ひとつのふかかいなできごとがありました。)
大逆事件として歴史に残っていない、一つの不可解な出来事がありました。
(しょうわ14ねんのなつのことです。)
昭和14年の夏のことです。
(しょうわ12ねんにおこったろこうきょうじけんから、どろぬまのにっちゅうせんそうにつきすすみつつあった)
昭和12年に起こった虚構橋事件から、泥沼の日中戦争に突き進みつつあった
(とうじのににほんは、それん、あめりかともしょうとつはふかひのじょうきょうにありながらも、)
当時のに日本は、ソ連、アメリカとも衝突は不可避の状況にありながらも、
(いまだしんじゅわんこうげきにはいたらず、またおうしゅうでは、せかいをにふんするさいあくのだいせんそう、)
未だ真珠湾攻撃には至らず、また欧州では、世界を二分する最悪の大戦争、
(だいにじせかいたいせんのぜんやというきわどいじきにありました。)
第二次世界大戦の前夜という際どい時期にありました。
(そんなところ、きたかんとうでおこなわれるかんぺいしきのためにおめしれっしゃがでることになり、)
そんな所、北関東で行われる観兵式のためにお召し列車が出ることになり、
(けいさつのけいごのもと、てんのうへいかのごいっこうがこうきょをしゅったつし、)
警察の警護の元、天皇陛下のご一行が皇居を出立し、
(とうきょうえきへむかっているそのとちゅうでじけんはおこりました。)
東京駅へ向かっているその途中で事件は起こりました。